オープン戦で示した結果

慶大・小原は立大1回戦[4月11日]で東京六大学リーグDH制第1号を放ち、ホームランボールを手に笑顔を見せた[写真=矢野寿明]
創設100周年の節目を終え、この春101年目のシーズンを迎えた東京六大学リーグ。慶大・小原
大和外野手(4年・花巻東高)が今季から導入した指名打者制で第1号を放ち、新たな歴史に名を刻んだ。
打球は逆方向にどんどん伸びていった。4月11日に行われた開幕1回戦の立大戦、二番・DHで先発出場し、9回二死三塁の場面で迎えた第6打席に左中間スタンドへ鮮やかに運ぶ試合を決定づける2ラン。自身リーグ初のホームランが歴史に残る一発になった。
「歴史に名前を刻めたのはうれしい。打ったのは真ん中低めの真っすぐ。打った瞬間はフライかなと思いましたが、神宮の風で入ってくれました」
3回に先制打、8回にも適時打を放ち、この本塁打を含む6打数5安打4打点の大暴れ。11対0と快勝した開幕白星の立役者となった。当日のスタメン発表でDHを告げられると、「余計なことを考えないように」シートノックに入らず、ベンチ裏で黙々と素振りなどをして準備を行った。また、アナリストが作成した相手校データの最終チェックを重ねて、プレーボールに備えた。
試合前日の夜、堀井哲也監督が小原のDH起用を決めた理由も、この準備力のうまさにある。「打席でのバッティングのメンタルのつくり方が一番うまい選手。バッティングに入る準備にもセンスがある。そこを一番買いました」と、メンタルが起用の決め手だったことを明かした。オープン戦ではむしろ左翼の守備に就くことが多かったが、リーグ初のDH制でしっかり気持ちを準備して臨めたことが奏功した。
「守備の機会がないので同じ方向性で(試合に)入りにくい面もありますが、チームを勝たせたいという気持ちで打席に立つことでいいメンタルの状態をつくれるのかなと思う。ベンチにいても全力で声を出して試合に入っていくことも大切だと思います」
小原3兄弟の末っ子

小原はDH制第1号で生還すると、背番号10の主将・今津慶介[左]に出迎えられた[写真=矢野寿明]
長兄・大樹さん(2013〜16年在籍。左投手で通算2勝)、次兄・和樹さん(16〜19年在籍。19年秋に二塁手のベストナイン)も慶大野球部出身という小原3兄弟の末っ子。大樹さんと花巻東高野球部の同期でもある偉大なる先輩、ドジャース・
大谷翔平はずっと憧れの存在だ。「大谷翔平選手を高校時代から見てきて、自分も歴史に名を残したいという気持ちで野球に取り組んでいるので、大谷さんのおかげかな」と、はにかんだ。2人の兄にも特別な思いがある。「小さいころから追いかけてきたので、最後は越えたいなと思います」
2回戦(同12日)では3打数無安打で迎えた7回裏の第5打席で、右越え2点適時二塁打を放った。慶大は10対4で立大に連勝し、開幕カードの第1週で今季初の勝ち点1を挙げている。
堀井監督は「1試合で4〜5打席ある中で、最後に1本出したところを評価しているんです。DHは『打って当然』と見られ、プレッシャーに打ち勝たないといけない。打てなければ、皆からの厳しい視線もある。小原には、向かっていく気持ちがある」と目を細めた。
慶大は、第2週は空き週で、第3週では昨秋の王者・明大との大一番を控えている。明大は昨秋、リーグ史上6度目の10戦全勝優勝。昨春から足かけ3シーズンで13連勝中だ。慶大は昨秋まで3季連続5位で、23年秋以来の天皇杯奪還を誓う。小原は開幕2試合で10打数6安打、1本塁打、5打点。「チームに必要な一打を打とうという気持ちで毎打席立っている」と言い切る頼もしい指名打者・小原が、好調な慶大打線をさらに勢いづかせていく。
取材・文=中野聖己