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【東京六大学リポート】早大の主将・香西一希がリーグ戦初先発で準完全試合を遂げた理由

 

天国でよくやったと褒めてくれる試合


3年秋まではすべて救援登板で、先発としての初勝利(通算4勝目



4月18日(1回戦)
早大5-0東大(早大1勝)

 天国の恩師も微笑んでいるに違いない。早大が4月18日、東大との今季開幕戦で5対0の完封勝利。リーグ戦初先発の主将・香西一希(4年・九州国際大付)が1安打無四球13奪三振の準完全投球で初戦勝利へと導いた。

 早大にとって特別な試合だった。4月8日に肺炎のため亡くなった元監督の野村徹氏をしのび、チーム全員で喪章をつけて臨んだ一戦。試合前には、OBの青木宣親氏(ヤクルトGM)の引退セレモニー(2024年10月4日)に早大史上初の4連覇達成時の恩師・野村氏が駆けつけた際の涙の抱擁シーンの映像が流れる演出もあった。

「あまりにも出来過ぎな演出だなと。天国でよくやったと褒めてくれる試合ができたかなと思っています。(野村さんは)常々ピッチャーはコントロールだと言っていましたので」。野村氏を父のように慕ってきた小宮山悟監督も天国に捧げる師への1勝に安どした。

 選手には出発前、天国の野村さんに恥ずかしくない態度で試合に臨むようにと伝えた。

「自分も練習からしっかりした態度で試合に入っていこうという思いで挑んだ」という香西はピッチングでも満点解答を見せた。「以前、東伏見に野村監督がいらしたときにも、直接コントロールを大事にというお話をしていただきました。しっかり野村監督に届けられるピッチングができたかなと思います」。

 ストレート、スプリット、スライダー、カットボールとどの球種もコーナーをきっちり攻め、「大胆にピッチングできた。それにしてもコントロールが見事だった」と指揮官も称賛する抜群の制球力を披露。捕手・尾形樹人(3年・仙台育英)の配球を信じてサインにほぼ首を振らず、冬場の投げ込みで精度を上げた変化球も随所に決まり、13三振のうち見逃し三振6個と東大打線は最後まで的を絞れなかった。

天皇杯奪還へ最高のスタート


早大元監督・野村徹氏が4月8日に死去。喪章をつけて臨んだ一戦だった[写真=矢野寿明]



 1年秋のリーグ戦デビューから昨秋まで6シーズン26試合の登板はすべてリリーフ。1年時から希望してきた先発登板が、最終学年でついにかなった。小宮山監督は主将に指名した昨年11月にはすでに、春のリーグ戦初戦の先発を背番号「10」に任せることを決めていたというが、本人が先発を告げられたのは開幕1週間前。大学入学後はオープン戦を含めて5回が最長イニングだった右腕は、「今までで一番緊張した」という先発マウンドも最後まで表情を変えることなく、冷静だった。

 7回一死から東大の二番・秋元諒(3年・市川)に右前打を打たれるまでパーフェクトピッチング。東京六大学100年の歴史上3人しか達成していない完全試合の大記録については、「6回か7回に頭をよぎりました。よぎったらダメですね」と笑ったが、指揮官の5回まで想定を大きく上回る主将の快投で、天皇杯奪還へ最高のスタートを切った。

「キャプテンとして頼むぞという思いも感じましたし、いろんなものを背負ってのピッチングだったので、チームにいい勢いをつけられるピッチングができてよかったと思います」

 先発登板は、プロ志望の4年生に進路の幅を広げるチャンスを与えるという小宮山監督の親心もある。「野球を始めたときからプロ野球が目標なので、そこを追い求めてやっていきたい。まだまだ実力的に届かない部分もあるので、自分の長所も伸ばしながらアピールしていきたいと思います」。自身の夢にも近づく大きな第一歩になった。

取材・文=中野聖己
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