プロ8年目で覚醒の時

今季は4月上旬に一軍昇格後、巧打を発揮している勝又
苦労人が覚醒の時を迎えている。
DeNAのプロ8年目・
勝又温史だ。
4月11日に一軍登録選手にインフルエンザ感染者が発生したため、感染症特例の代替指名選手として一軍登録されると、今季初出場となった12日の
広島戦(横浜)で、1点差に迫った7回二死二塁の好機で左翼線にポトリと落ちる同点適時二塁打。プロ初打点を叩き出して逆転勝利の立役者になり、「心の底からうれしくて。まさかバッターとしてここに立つとは入団したときは思っていなかったので。今までの頑張りが少しでも報われてよかったなと思います」とお立ち台で感慨深げだった。
最高のスタートを切ると、その後も安打を積み重ねる。18日の広島戦(マツダ広島)から4試合連続マルチ安打。22日の
阪神戦(横浜)で同点の8回二死一、二塁の好機で勝ち越しの右前適時打を放った。決して良い当たりではなかったが、執念が乗り移った打球が一、二塁を抜ける。きっちり振り抜いているから、打球がヒットゾーンに落ちる。25日の
巨人戦(東京ドーム)で自身2度目の猛打賞をマーク。11試合出場で打率.410と期待以上の活躍を見せている。
2021年オフに戦力外→育成契約
日大鶴ヶ丘高からドラフト4位で入団。投手としてプロでの成功を夢見たが、課題の制球難が解消できず、2021年オフに戦力外通告を受けた。育成契約を結んで野手に転向し、23年のシーズン終了後に支配下に返り咲いた昨年5月に一軍初出場を果たし、プロ初安打をマーク。7試合出場で6月以降はファーム暮らしだったが、プロ野球人生に光が差し込んだ。週刊ベースボールの取材で以下のように語っている。
「一軍で試合に出場できないまま野球人生が終わってしまうかもしれないと何度も頭をよぎりました。ハマスタで野球をするのに7年かかりましたが、頑張ってきて本当に良かったと思います。一軍は守備の連係の声が聞こえないくらい、ファンの声援がすごかったです。もともとそう言われてきたのですが、あらためて実感しましたね。猛練習は当たり前です。昨年オフの自主トレや、2月のキャンプでバットを振り込みました。さらに言えば、2022年に野手転向してからずっと、その姿勢は変わりません。キャンプでは一日1000スイングを目標にしました。一軍でのプレーを経験し、練習量が自信に変わると強く感じました」
野球人生を変える戦い
今年はオープン戦で打率.364、3打点の好成績をマーク。開幕をファームで迎えたが、気持ちを切らすことはなく一軍昇格に向けて準備していた。勝又には尊敬する先輩がいる。
「今年もクワさん(
西武・
桑原将志)と自主トレをさせていただきました。野球もですが、クワさんは人として魅力的です。こういう人になりたいと思えるような方ですね。(昨季初めて)一軍に上がったときにも声を掛けていただき、心の支えになりました。そんな存在がいなくなるのは寂しいですね。でも、外野がひと枠空いてチャンスでもあります。クワさんからは『能力はある。あとはチャンスをつかむことが大事』と言われてきました。(昨季)一軍で出られたのは良かったですが、もっとインパクトを残さないといけない年でした。立場は厳しくなっていくと思います。少ないチャンスをモノにするためにも練習するしかないですね」
桑原も勝又と同様に高卒でドラフト4位入団。プロ5年目に一軍定着すると、攻守でチームの核になり、24年に日本シリーズでMVPを受賞した。昨オフに西武へFA移籍したことで、DeNAは外野のレギュラーが固まっていない状況に。このチャンスを生かさなければ、未来を切り拓けない。ドラフトで高卒入団した同学年の
小園海斗(広島)、
藤原恭大(
ロッテ)、
太田椋(
オリックス)、
万波中正、
田宮裕涼(共に
日本ハム)、
戸郷翔征(巨人)はチームの主力として活躍している。勝又も負けられない。野球人生を変える戦いが続く。
写真=BBM