ファームで結果を残して昇格

4月29日の楽天戦で585日ぶりの安打&本塁打を放った井上[写真=戸賀里真司]
高々と上がった放物線が左翼席に吸い込まれる。こんなアーチを放つ長距離砲はなかなかいない。昨オフに現役ドラフトで
阪神から
ロッテに移籍した
井上広大が幸先良いスタートを切った。
開幕を二軍で迎えたが、ファーム・リーグで24試合出場して打率.308、3本塁打、16打点の好成績をマークして4月25日に一軍昇格。「六番・一塁」でスタメン起用された29日の楽天戦(ZOZOマ
リン)で値千金の一発を放った。同点の4回一死で
前田健太のスライダーを振り抜くと、大きな弧を描いた打球は左翼席へ。阪神時代の2024年9月21日の
DeNA戦(横浜)以来585日ぶりの安打&本塁打だった。5回も一死満塁の好機で追加点となる右犠飛を放ち、3打点の活躍で勝利に貢献。試合後のお立ち台で「あだ名は『コーディー』なので、『コーディー』って呼んでください」と呼びかけると、スタンドに詰めかけたファンから「コーディー!」の大声援に笑顔を浮かべた。
履正社高で高校通算49本塁打をマーク。1学年上の
藤原恭大(ロッテ)、
根尾昂(
中日)を擁し、「高校野球界の横綱」として君臨した大阪桐蔭高の強力なライバルとして立ちはだかった。阪神にドラフト2位で入団して将来の四番として期待され、ファームでは最多安打、首位打者のタイトルを獲得したが、一軍になかなか定着できない。理由は確実性に欠けていたことだった。飛距離はチーム屈指だったが、ファームでも空振り三振が目立ち粗さを解消できない。昨年は4月の1試合出場にとどまり、リーグ優勝を飾ったチームの中でシーズンの大半をファームで過ごした。
現役ドラフトで開花した大砲

今季も5月1日現在、打率.323、3本塁打と打撃が好調な細川[写真=榎本郁也]
高卒7年目の24歳は若手と言える立場でなくなってくる。現役ドラフトでロッテに移籍が決まり、期する思いは強いだろう。似た境遇から球界を代表するスラッガーに飛躍した長距離砲が、
細川成也(中日)だ。DeNAで6年間プレーしたが一軍に定着できず、22年オフに現役ドラフトで中日へ。この移籍劇が野球人生を大きく変える。当時の一軍打撃コーチだった
和田一浩氏の助言を受けたことが大きく影響し、移籍1年目に140試合出場で打率.253、24本塁打、78打点と大ブレーク。翌24年は課題の確実性が上がり、全143試合出場で打率.292、23本塁打、67打点をマークした。
相手のマークが厳しくなった状況で高水準の成績を残したことは大きな価値がある。昨年は故障の影響で出遅れたが、108試合出場で20本塁打をクリア。本拠地がバンテリンドームに移転した1997年以降で、3年以上連続で20本塁打以上を達成した選手は
レオ・ゴメス、
福留孝介、
タイロン・ウッズに次いで4人目で、日本人の右打者では球団史上初の快挙だった。「最低20本というのは目標ではないですが、クリアできたのは良かった。現役ドラフトで崖っぷちからはい上がれた。ベイスターズのときから、あきらめずに練習していて良かった。もっともっといい選手になれるように頑張ります」と思いを新たにしていた。
チームが待望する長距離砲
得点力不足に苦しむ中日で細川が存在価値を高めたように、ロッテも和製大砲の誕生が渇望されている。最下位に沈んだ昨年はリーグ最少の73本塁打。
ネフタリ・ソトが13本塁打、
山本大斗が11本塁打と2ケタ本塁打を記録したのは2人のみで、打線全体の迫力不足が否めなかった。井上が本塁打を量産すれば、チームに大きなプラスアルファをもたらせる。
今年から就任した
サブロー監督は今年の起用構想について、「とにかく『結果を出した選手を使う』。ベテランだから優先的に使うということはありません。逆に、若手だから使うということもありません。そこは関係なく、そのときに一番いい選手から使う」と週刊ベースボールのインタビューで語っている。
横一線の競争で結果を出し続けた選手が、未来を切り拓ける。井上は毎試合、毎打席が勝負だ。