ゲーム差なしで首位を追走

来日1年目の今季、クローザーとして相手打線を完璧に封じセーブを重ねているキハダ
ヤクルトが貯金8で首位・
阪神をゲーム差なしで追走している。開幕して30試合を過ぎ、この強さは一過性と言えないだろう。
阪神前監督の
岡田彰布氏は週刊ベースボールのコラムで、今年から就任した
池山隆寛監督の手腕を高く評価している。
「思い出してもらいたい。戦前の評論家予想よ。ヤクルトの評価はそろいもそろっての最下位予想やった。オレもそのうちのひとりやったわ。戦力が薄い。そこに村上(
村上宗隆=ホワイトソックス)がメジャーに。そら、低い評価になるわ。ところが快進撃が待っていた。これは池山(池山隆寛)新監督の采配によるところが多いわ。名前や実績にほとんどとらわれず、生きのいい若手を大胆に登用するのよ。バッターもピッチャーも同様に、選手起用に垣根を設けなかったよね」
「まあどうせ最下位予想やし、怖いものはない。そんな発想が池山監督にあったかどうかは別にして、戦う上において、池山監督には知識と財産があったように思える。それが昨年までの二軍監督の経験よ。オレは一軍監督の前に二軍監督でキャリアを積む大事さをずっと論じてきた。一軍ではなじみのない名前の若手を、思い切って起用する。これって根拠があってこその戦術なんよね。二軍で実際に見て、育ててきた。選手の力量を把握しているからこその躊躇ない選手起用……。これが二軍監督として得た財産やと思うよね。これまでほとんどバントを使わないとかの極端な作戦が注目されてきたが、これからはそうはいかなくなるわな。いつまでも今の勢いが続くことはない。どこかで壁が立ちはだかると思うけど、それを乗り越えるだけの力を蓄えているかどうか。とにかく開幕1カ月のセ・リーグのベストチームはヤクルト。これは間違いない」
豊富な救援陣を逆算して起用
昨年は借金22で5年ぶりの最下位に低迷。池山新監督の下でチーム再建に時間がかかるという見方が多かった。岡田氏が振り返るように、戦前の下馬評は低かったが、シーズンが開幕すると見事な戦いぶりで予想を覆している。
古賀優大、
岩田幸宏、
増田珠、
丸山和郁、
武岡龍世、
赤羽由紘、
鈴木叶、
田中陽翔とイキのいい若手が次々に台頭し、ポジション争いが熾烈になっている。
長岡秀樹、
ホセ・オスナと主力選手が戦列を離れてもチーム力が落ちないことが強さを物語っている。投手陣は新外国人左腕のホセ・キハダを抑えに固定できたことで、豊富な救援陣を逆算して起用することが可能になっている。
投球フォームに変化をつけて
開幕から12試合連続無失点。12イニングを投げて17三振と驚異的な奪三振能力を誇るキハダの投球は現代野球で異質だ。150キロ台中盤の直球が投球割合の90%を占める。球種を絞れれば、打者有利に見えるがそうではないことが奥深い。クイックやゆったりとした間合いで投げ込むなど投球フォームに変化をつけていることで打者はタイミングが取りづらい。さらに、適度に荒れていることもコンタクトを難しくしている。
対戦した他球団の打者は「高めの直球は速いだけでなく、ホップするような軌道なので見慣れない。データ上は直球が来る可能性が高いと分かっていても、『スライダーやチェンジアップが来るのでは』とよぎってしまう」と明かす。
異国の地で大切な存在も大きな支えになっている。5月2日の
DeNA戦(神宮)で同点の9回に登板。一死二塁のピンチを招いたが無失点で切り抜けると、直後の攻撃で武岡がサヨナラ適時打を放ち、来日初勝利を飾った。キハダは「本当にずっとこれからのキャリアもここで過ごしたいくらい大好きなので幸せです」と試合後のお立ち台で語ると大歓声が上がり、「(ウイニングボールは)すごく特別なボールで、今日は妊娠している妻が球場に見に来ているので彼女に渡したい」と愛妻のいるスタンドに向けて手を振った。
抑えが安定しているチームは強い。うなりを上げる剛速球で相手打者をねじ伏せる。
写真=BBM