規格外の飛距離を誇る打撃

打率、本塁打、打点でリーグ屈指の成績を残している佐藤輝
現在の日本球界で、最も怖い打者であることは間違いないだろう。
阪神の
佐藤輝明だ。36試合出場で打率.377、10本塁打、30打点はいずれもリーグトップ。出塁率と長打率を足したOPSは1.223と驚異的な数字を誇る。得点圏打率.433と勝負強さも光る。他球団のスコアラーは「狙い球の裏をかく配球や、きっちりコントロールした球を投げ込まないとはじき返される。ゾーンに入っているときは投げる球がなくなる怖さを感じます」と警戒を口にする。
今季の初アーチは開幕10試合目となった4月7日の
ヤクルト戦(甲子園)。8回二死一塁で中越え2ランを放つなど4安打4打点の活躍を見せた。11日の
中日戦(バンテ
リン)では7回に右翼ウイング席に飛び込む3ランを放つと、9回もバックスクリーンへ2打席連発の3号2ラン。佐藤のすご味は球場の広さが関係ないことだ。本拠地・甲子園は右翼から左方向に浜風が吹くため、左打者が本塁打を打つのは難しいが、昨年は甲子園で11本塁打を放つなど、球団生え抜きの選手で1985年の
掛布雅之氏以来40年ぶりの40本塁打に到達。102打点で2冠王に輝き、リーグMVPを初受賞した。
今年も規格外の飛距離でアーチを量産している。5月5日の中日戦(バンテリン)で9回に左腕・
福敬登のスライダーを右翼席の中段にリーグトップの9号ソロを叩き込んだ。さらに10日の
DeNA戦(甲子園)でも6回に
石田裕太郎の外角低めへのシンカーを左中間席へ。新人時代から6年連続の2ケタ本塁打となった。
格段に進化した打撃フォーム

5月10日のDeNA戦では10号ソロを放ち、3対0の勝利に貢献した
現役時代に2度の首位打者を獲得するなど、卓越したバットコントロールで通算打率.304をマークした野球評論家の
篠塚和典氏は、週刊ベースボールの企画「篠塚和典の連続写真に見るプロのテクニック」で、佐藤が構えた際のグリップの位置と体重移動を修正したことで、対応力が格段にアップしたスイングになったことを指摘している。
「3年前にもこの連載で解説していますが、打撃フォームを見てもそこから格段の進化を遂げていることが分かります。かつては構えの段階からグリップの位置が高く、顔の前(三塁側)に出てしまっており、しっかりと軸足に体重が乗らないまま、ステップでも前への体重移動が少ないイメージがありました。重心を後ろに残してその場で打ちたいという意識が強過ぎたことで、低めのボールや外に逃げるボールにバットが届かなかったり、前に突っ込んでしまったりと、対応力に問題を抱えていました」
「この打撃フォームであれば高めの速いボールをはじき返していくことはもちろん、緩いボールや外に逃げるボールにも対応していくことができるはずですし、確実性はアップするでしょう。もともとパワーや飛ばす力には天性のものがありますから、打率をさらに上げながら、『ヒットの延長がホームラン』という打球が増えて本塁打の数もさらに増やすことができるのではないでしょうか。投高打低の現在は首位打者のラインも下がっているだけに、今季は三冠王の期待も膨らみます」
バース氏もかける大きな期待
令和に入って三冠王を獲得したのは当時ヤクルト、現在ホワイトソックスで本塁打を量産している
村上宗隆のみ。2022年に打率.318、日本選手最多記録の56本塁打、134打点とNPB史上最年少となる22歳で三冠王を獲得した。阪神ではランディー・バースが85、86年と球団史上唯一となる2度の三冠王に輝いている。
バース氏は23年7月に阪神OBの
マット・マートンと週刊ベースボールの企画で対談した際、「今の阪神で言えば三塁を守っている佐藤輝明が気になりますね。彼がもっと左翼フィールドに打球を打つのを見たいです。彼はボールを引っ張ることができる。これからは中堅から左翼方向に打球を運ぶことに取り組むことを期待しています。そうすれば本塁打ももっと出るようになりますよ」と期待を込めていた。
2年連続シーズン40本塁打は球界を代表する長距離砲の村上、
岡本和真(ブルージェイズ)が達成していない記録だ。球団史上初のリーグ連覇に向け、佐藤輝の異次元の活躍から目が離せない。
写真=BBM