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【大学野球】東京六大学で首位・慶大の投手力が安定している理由

 

快進撃の背景


今春の慶大は堀井監督[右]と上田コーチ[左]による抜群のベンチワークで試合を進めている[写真=矢野寿明]


 東京六大学リーグ戦は5月16日から第6週を迎える。慶大は開幕から立大、明大、東大と3カード連続で勝ち点3(6勝1敗)を挙げている。第6週に組まれている法大戦、また、早大と対戦する明大の結果次第で、2023年秋以来のリーグ優勝決定の可能性がある。

 慶大は昨秋まで3季連続5位。低迷期から脱した背景を探ると、昨年からの大きな変化は、指導陣の一新にある。かつて慶應義塾高で春3回、夏1回の甲子園出場へ導いた上田誠コーチと、巨人で長くコーチ、フロントとして手腕を発揮した上田和明コーチが新たに加入したことが大きい。

 上田誠コーチは以前にも慶大コーチを5年務めており、5年ぶりの復帰。前回は居残りメンバーや、Bチーム以下の指導をサポートするポジションで、今回とは立場が大きく異なる。

 チーム関係者を取材すると、今春の快進撃の背景が見えてきた。

 堀井哲也監督の指揮の下、上田誠コーチは投手を含めたバッテリー、上田和明コーチは内野手、小林宏コーチは外野手と役割分担が明確になっている。昨秋までベンチに入っていた北倉克憲助監督は対外的な部分で、堀井監督をバックアップ。部員は219人の大所帯。堀井監督はこれまで以上に学生と向き合い、グラウンドに集中できる環境が整っている。

チーム防御率は1.60


 言うまでもなく、ゲームにおいて、投手が占めるウエートは高い。そこで、大きな任務を担っているのが、上田誠コーチだ。この春からベンチに入り、堀井監督と綿密な連携を取りながら、ブルペンを行き来している。

 数字が示している。チーム防御率はリーグトップの1.60。2位が明大の2.96、以下は法大の3.48、早大の3.55、東大の5.03、立大の7.50と続く。7試合で17失点。プロ注目の左腕エース・渡辺和大(4年・高松商高)が先発4戦で4勝をマークし、防御率0.93。メジャーの複数球団が熱視線を送る153キロ右腕・広池浩成(4年・慶應義塾高)も調子を上げてきており、救援陣は左腕・鈴木佳門(2年・慶應義塾高)、右腕・水野敬太(3年・札幌南高)らが持ち味を発揮。打線もチーム打率.297と、投打がうまく噛み合っている。

 上田コーチは休日を除いて、活動拠点の日吉グラウンドに顔を出して、フルタイムで指導している。指導者として長けた3つの能力がある。

 まずは、探求力。トレーニング理論に精通しており、投手陣は目の色を変えてメニューに打ち込んできた。正しい形で体を動かすため、故障防止にもつながっている。走り込みも徹底。体が見違えるように変わり、61人いる投手のほとんどが、ストレートの球速が140キロ超を計測しているという。やらされる雰囲気ではなく、自主性を持ってメニューを消化。上田コーチは学生のモチベーションを導き出すのがうまい。

 投手陣のリーダーは副将の広池だ。上田コーチの指導の下、食事、トレーニングの重要性について率先して動き、投手陣全体をけん引している。

指揮官が全幅の信頼


 次にマネジメント力だ。慶大は実戦経験を重視する堀井監督の方針により、オープン戦の試合数が圧倒的に多い。東京六大学野球連盟のホームページによれば、春のオープン戦は断トツトップの45試合で、続くのは法大の26試合(以下、明大25試合、早大21試合、立大20試合、東大17試合)。いかに突出しているかが分かる。主力メンバーのA戦だけでなく、控え組のB戦も相当数が組まれている。この膨大な対外試合における投手の順番、ローテーションを組むのは、上田コーチの仕事。巧みに振り分け、均等にチャンスを与え、4月上旬のリーグ戦開幕まで競争。戦うメンバーに仕上げてきた。リーグ戦開幕後も、コンディショニングに気を配ってきた。ある日の練習、手帳とにらめっこしている姿を見たことがある。選手のために、すべての時間を捧げている。

 最後に、コミュニケーション力。学生と真っ正面から向き合い、とことん付き合う。学生野球の指導キャリアが十分であり、選手のツボを熟知。「マックさん」と親しまれており、自然と人が集まってくる温かみのある人柄だ。堀井監督も全幅の信頼を寄せている。

 慶應義塾高時代に3年間、指導を受けた慶大野球部OBは明かす。

「高校時代の実績から見れば、慶應の戦力は他校と比べても、かなりの差があります。その実力差を埋め、互角以上に戦えるようにしていく上で、上田さんの功績は絶大です。知略家であり、無い素材から、何とか形にするのがうまい。上田さんがベンチにいるのは、安心感があると思います」

 堀井監督を頂点に指導陣、学生が同じベクトルを向いている。部員219人の慶大は「天皇杯奪還」というゴールへと、一致団結でまい進している。

取材・文=岡本朋祐
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