5月は11勝3敗の快進撃

5月17日の日本ハム戦、7回に代打で登場して逆転2ランを放った岸
もはやこの強さは本物だろう。
西武が5月17日の日本ハム戦(エスコンF)に6対3と逆転勝ちし、これで5カード連続の勝ち越し。この福岡、札幌遠征を4勝1敗で乗り切り貯金を6に戻し、
オリックスが敗れたために、5月以降では2022年9月1日以来、4年ぶりとなる単独首位に立った。
5月に入ってからのチームは11勝3敗(勝率.786)と怒涛の快進撃。今季最大の借金5を背負い、首位と5ゲーム差の5位にいた4月18日から17勝6敗(勝率.739)と巻き返し、約1カ月で一気にパ・リーグ首位の座に駆け上がった。
特に打線の中心にいる
タイラー・ネビンが5月1日に復帰して以降、5月のチーム打率は.295と活発で、4対5で負けた16日の日本ハム戦(エスコンF)でも緊急先発した
佐藤爽の初回の3失点をネビン、
滝澤夏央、
アレクサンダー・カナリオのソロ本塁打3本で追いつき、
フランミル・レイエスの適時打で突き放された直後の4回にも再びネビンの2打席連発となる一撃で4対4の同点に追いつく空中戦を演じる“強い負け方”が昨年までのライオンズ打線との違いを印象付けていた。
ひと振りで最高の仕事
17日の試合では、1対2と1点を追っていた7回二死から怒涛の長短6連打が始まった。
日本ハム三番手・
上原健太からカナリオが150キロの内角速球に詰まりながらも三塁後方へ落とす二塁打で出塁。続く代打・
岸潤一郎が上原の初球、浮いてきたフォークをとらえ自軍投手陣が待つ左翼ブルペンに飛び込む値千金の1号逆転2ラン。さらに、
渡部聖弥が左前打で出塁し四番・ネビンが2ストライクに追い込まれながら低めの誘い球を見極め、フルカウントから甘く入ってきたフォークを仕留め7号2ランを叩き込んだ。
日本ハムに1点を返されたその裏の守備では、
西川愛也に代わって中堅の守備に就いた打のヒーロー・岸が
万波中正の中前適時打を処理し、迷わずサードへ送球。三進を狙った一走・
上川畑大悟を補殺し、相手主砲・レイエスの前で攻撃を寸断し、盛り上がる敵地・エスコンFの歓声を一瞬にして溜息に変えた。
8回の打席でも、勝利を決定づけるスクイズを決めた殊勲の岸は「試合前のミーティングで仁志(
仁志敏久野手チーフ兼打撃)コーチが『控えの人は緊迫した終盤に必ず出番があるから』と言われていたので『いざ、来たな!』という感じで打席に立ちました。(本塁打は)たまたまですけど、本当に当たってくれてよかった」とコメント。仁志コーチの想定どおり、試合前からイメージしていた場面で代打出場。思い描いていた場面での初球を、ひと振りで最高の仕事に昇華させた。
栗山の「準備力」への呼び掛け
今の西武はスタートから試合に出ているスタメン組だけでなく、試合の中盤以降に代打、代走、守備固めで出ていく控えメンバーまで「自分が何をするべきか」のイメージが共有されていて、ベンチが一丸となって試合に臨んでいる。
岸は「登録されている(メンバー)全員で『自分たちのやるべきことをしっかりやろう』ということを、日頃、栗山さんに言っていただいているので、その気持ちで全員が戦っている。ベンチの雰囲気はすごくいいので、これからも続けていきたいと思います」と現役ラストイヤーを迎えている25年目・
栗山巧の「準備力」への呼び掛けが控えの野手陣をまとめていることを語る。
また7回の逆転機を振り返れば、二死からカナリオの二塁打、岸の逆転2ランが飛び出す直前には、見逃し三振に倒れたものの、この日の4打席で相手投手に計30球を投げさせた九番・滝澤の仕事ぶりも見逃せない。上原からファウル3球を含む9球を投げさせスタミナと集中力を削り、チームの勝利に貢献した。
3年連続Bクラス(5位、6位、5位)からの再建を図る西武に日替わりヒーローが出現し続ける秘訣が、このベンチを含めたチーム全体の試合参加と準備の徹底にありそうだ。
文=伊藤順一 写真=毛受亮介