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【高校野球】東京都高野連が「7イニング制」について日本高野連に伝えた「意見」とは

 

社会を生き抜く力を養う場


東京都高野連・佐々木会長は責任教師・監督会議の冒頭であいさつした[写真=BBM]


 東京都高野連は5月23日、都内で責任教師・監督会議を行い、加盟校の約270校の野球部関係者が出席した。年に1度、指導者が一堂に会す場。約1時間にわたり、チーム、そして生徒を預かる教員たちは真剣な表情で壇上の議題に耳を傾け、配布資料に目を通した。

 冒頭では今年4月、東京都高野連会長に就任した佐々木慎一会長(早稲田実業学校中等部・高等部校長)からあいさつがあった。

 まずは、7月4日に開幕する東・西東京大会について触れた。

「東京の高校野球は2年連続で夏の甲子園で決勝まで進むということが示すとおり、非常に高いレベルで切磋琢磨しています。一方で、練習環境に恵まれない中で、総意を崩し、懸命に努力を重ねている学校も少なくありません。学校ごとに多様なプレースタイルや活動方針があるとは思いますが、それぞれ目標に向かって高校生活のすべてを捧げ、野球に打ち込む部員たちの価値は極めて尊いものです。残念ながら、最後の夏は甲子園に出場する2校を除き、すべての学校が敗戦を迎えることとなります。しかし、高校野球という厳しい環境の中で得た成長は、間違いなく生徒たちの将来の財産になります」

 日本学生野球憲章に定められた「教育の一環」である高校野球の持つ本質について語った。

「先生方が貴重な時間を割いて重ねられる意味の熱心な指導は、次代を担う若者の育成に大きく貢献していると考えています。高校野球は、単に技術の向上求める場所ではありません。数多くの失敗と成功を積み重ねる中で、社会を生き抜く力を養う場でもあります。生徒たちは、顧問の先生や監督、コーチといった指導者の後ろ姿を常に見つめ、そこから多大な影響を受けて成長しています。それだけに、指導者によるハラスメントや部内のいじめといった不祥事が後を絶たない現状は非常に残念であります。指導者の皆様におかれましては、部員一人ひとりの人格を尊重し、その成長を心から温かく見守る存在であっていただきたいというふうに願っています。そうした姿勢こそが、ハラスメントやいじめの根絶につながると考えています」

SNS利用について注意喚起


 近頃、抱えている社会問題について、具体的な事案を挙げて言及した。

「昨今はSNSの不適切な利用による不祥事も頻発しております。他者を思いやるところと、一瞬の過ちが取り返しのつかない事態を招くという危機意識、それと想像力があれば、こうした問題は未然に防げるはずです。これは高校野球だけのことではなく、社会全体が直面している課題でもありますが、生徒たちにとって最大の理解者であり、指導者である先生方から、ぜひSNSの適正な利用について継続的な注意喚起とご指導をお願いいたします」

 最後に夏本番へ向けて、熱きメッセージを送っている。

「いよいよ高校野球の総決算である夏の選手権大会が目前に控えています。勝利を目指して一戦一戦全力を尽くすこと、これはもちろん重要なことですけども、何よりも生徒たちが野球を通じて大きく成長し、すべての球児が野球への愛着と誇りを持ったまま最後の夏を終えることを願っています。そのためには、指導者の皆様の力が不可欠です。今後とも温かい指導をよろしくお願いします」

「可及的速やかに」の受け止め方


東京都高野連・根岸専務理事は7イニング制の進捗について連絡した[写真=BBM]


 次に日本高野連理事であり、東京都高野連・根岸雅則専務理事から連絡があった。現場にとって最大の関心事となっているのは、協議が進められている「7イニング制」についてだ。

 日本高野連は「7イニング制諸課題検討会議」の審議経過、最終報告書内容ついて、各都道府県高等学校野球連盟へ説明会を実施している。全国9地区で4月15日の近畿地区を皮切りに、6月15日の北海道地区まで全国9地区で開催。東京都高野連が属する関東地区は5月18日、ZOZOマリンスタジアム内の会議室で行われた。また、7イニング制諸課題検討会議の最終報告書の内容について、審議経緯などを説明し、現場の高校野球監督、大学教授、医療関係者、プロ野球界、オリンピアンなど有識者の意見を聞く場である「意見交換会」を5月30日と6月6日に開催される。

 改めて経過を整理する。2024年4月25日、日本高野連の第1回理事会で、高校野球における7イニング制を検討するため、「高校野球7イニング制に関するワーキンググループ」が設置。4回の会合において、7イニング制のメリット・デメリット、世界情勢、イニングの歴史的経緯などの情報が整理され、同年12月6日に同連盟の第6回理事会へ報告された。25年には「7イニング制等高校野球の諸課題検討会議」が1月から11月までの間、計10回にわたって実施され、12月5日の日本高野連理事会で議論の結果が報告。「総括」にこう記されていた。

「高校野球が直面する差し迫った課題の一つに、年々厳しさを増す全国高等学校野球選手権大会における熱中症対策があり、酷暑への対策は待ったなしの状況である。したがって、全国高等学校野球選手権大会においては、地方大会を含め可及的速やかに7イニング制の採用が望まれるとした」。検討会議からの報告を受け今後、同連盟理事会で7イニング制導入の是非について継続して議論していくことになった。

現状での導入は「時期尚早」


 根岸専務理事は言葉を選びながら、まずは、ここまでの経過を報告した。

「約1年間をかけて日本高等学校野球連盟では7イニング検討委員会というのを立ち上げまして、その結論というのが、この暑さに対する対応をしたほうが、生徒の健康上、安全上にはベストではないかということで、できるだけ可及的速やかに7イニングを導入してはどうだというような見解がまとまりました。実は日本高野連では先生方にアンケートをお願いし、加盟校の思いだとか、調査もしてきました。7イニング導入に対して、全国の加盟校の約7割強が反対ということになりました。実際に生徒たちが本当に7イニングでいいのかどうなのか、中学校体育連盟の先生方の意見はどうなのか、中学生、高校に進学してくる子どもたちの思いはどうなのか、統計を取りながら、この問題について日本高野連では慎重に審議を重ねております。検討委員会のほうでは『可及的速やかに』と結論が出ましたけれども、簡単に言うと、じゃあすぐ始まるのかというと、始まるわけではございません。今後、動きがあれば先生方にご連絡をさせていただくということになると思います」

 5月18日の説明会についても、詳細に報告している。

「関東大会期間中、日本高等学校野球連盟と関東地区高等学校野球連盟で、この7イニングの問題についてのお話を意見交換してもらいました。東京都といたしましては、先生方のご意見、生徒たちの希望を考えてもらうために、現状の7イニングでの導入というのは、時期尚早ではないかというようなことでお伝えしております。しかしながら、これから日本高野連並びに全国の都道府県高野連と協議を重ねていきながら、この暑さに対する対策というものを取っていかなくてはいけないということも、先生方にはご理解いただきながら、現状の第108回大会に関しましては、現行通り9イニング、甲子園大会でも9イニングということで行います。その後、第108回大会を検証しつつ、第109回、第110回がどうなってくるのかということで、また先生方にはお話できる機会ができると思います。7イニング問題に関しましては、何も決まっておりませんので、第108回大会、そして秋季大会に関しても、この本年度の大会に関しましては、 9イニングを行うということが事実ですので、新たな動きが出た場合に関しては、すぐ先生方にはご連絡できると思います。12月5日の指導者研修会の席で、またこの進捗状況についてはご説明させていただきたいと思います」

 7イニング制については、現場だけでなく、各方面からもさまざまな意見が出ている。日本高野連としても一つひとつの場で丁寧に理解を得ながら、慎重に進めていく構えであるという。

取材・文=岡本朋祐
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