女子野球タウン認定自治体は14自治体

第2回女子野球タウンサミット2026には約100人の関係者が出席。活発な意見、情報交換が行われた[写真=BBM]
掲げるビジョンは「女子野球を当たり前の文化・スポーツにする」。「女子野球タウン」は全国に広がりを見せており、さらなるステップアップを実感する2日間となった。
全日本女子野球連盟は5月22、23日、東京都内のホテルで「第2回女子野球タウンサミット2026」を開催した。女子野球を通じた地域活性化と自治体間の連携を目的に昨年、第1回が開催。今年は「女子野球タウン認定自治体」として既存の12自治体(埼玉県加須市、愛媛県松山市、
広島県廿日市市、広島県三次市、滋賀県東近江市、長野県松本市、兵庫県淡路市、和歌山県田辺市、東京都府中市、兵庫県丹波市、神奈川県秦野市、高知県高知市、岡山県瀬戸内市、栃木県栃木市、島根県川本町、岩手県花巻市、岩手県盛岡市、福岡県大野城市)に加え、新たに認定された可児市(岐阜県)と室戸市(高知県)が参加している。このほか女子野球関係者、アマチュア野球団体、NPB球団・プロ野球関係者、全日本女子野球連盟の協賛社、地方創生に携わる関係者など約100人が出席し、活発な情報交換が行われた。
「女子野球タウン」とは何か。
全日本女子野球連盟は女子野球をシティプロモーションとして活用し、地域活性化を目指す自治体を「女子野球タウン」と認定している。同事業は2020年9月にスタート。「女子野球タウン」となった自治体は同連盟と情報交換や交流を通じて大会開催、合宿、女子野球教室などの普及活動を行っている。パートナーシップ、共同企画などの協力体制を敷き、双方のリソースを最大限に活用し、女子野球の普及振興と地域発展を目指している。
プログラムの冒頭、昨年はスペシャルゲストとして登場した球心会・
王貞治代表がビデオメッセージを寄せた。
「昨年、参加をさせていただきまして、女子野球の皆さんとそれぞれの自治体の人たちと大変力強い結び付きを感心させていただきました。我々男子のほうも、もっともっと努力しなくてはいけないなと感じさせた次第です。可児市とか室戸市が加えられたということで、ますます野球の輪が広がっていくなと、そのように心強く思っております。やはり今の時代は女子の力が大変強いです。女子ならではの優しさというんですかね、子どもたちに教えていただく時でも、子どもたちが心を許して女子の皆さんの指導を受けているという感じがして、これは男性には絶対できないな、そのように思ったりもしました。ぜひこの時代ですから、女子の皆さんに大いに活躍していただいて、地域の皆さんとの結びつきもより濃いものにして、やはり野球はいいんだ、野球は絶対やらせるべきだとか、お母さんたちに思ってもらえるように。皆で日本の野球を盛り上げるには、男子であるとか女子であるとかなくて、人間がやっているんだというふうなことで進めていければ、もっと高いレベルのところに上がられるんじゃないかと思います」
競技人口は右肩上がり

全日本女子野球連盟・山田博子会長は同連盟の歩み、活動内容、今後の展望について話した[写真=BBM]
第1回に続いて、今回も墨田区内のホテルで行われた。同イベントの開催に際して墨田区長の山本亨氏が歓迎のあいさつをした。まさしく、同連盟と自治体が一体となったサミットであることをあらためて印象づけるメッセージだった。
「2019年に女子野球タウン構想を掲げられて、町おこし、地域の活性化と、そして女子野球の普及活動、ここを展開されているということであります。さらに今年は二つの市がご参加をされたということで、ますますこのネットワークが広がっている。素晴らしいことだなと思っております。王貞治さんがこの墨田区で生まれて、幼少期、業平小学校、本所中学校、そこから早稲田実業に進まれたということで、まさに墨田区は野球とも非常に関係の深い地域であります。墨田区として、皆様方の活動をしっかりと支えながら、女子野球の普及に努めてまいりたいと思っております」
新タウンの可児市と室戸市がプレゼンを行った。新たな取り組みに期待が集まる。
次に今後の女子野球がどのような施策を持って動いていくのか。一般社団法人全日本女子野球連盟・山田博子会長がインスピレーショントークを行った。山田会長は2004年からボランティアスタッフとして女子野球の運営に携わり、3期6年務めた初代会長・長谷川一雄氏の後任として2020年に第2代会長に就任した。2013年に侍ジャパンのカテゴリーに入ると14年にはNPO法人から一般社団法人を設立し、ここまでの発展を遂げてきた。
登録チーム数と競技人口は右肩上がりである。2010年に21チームだったのが、25年には138チーム。山田会長が女子野球に関わった約20年前は200人ほどだった競技人口は3,561人。軟式を含めると2万2000人となった。全国高等学校女子硬式野球選手権大会は5校が参加した1997年の第1回大会から数えて、今年が第30回の節目。21年から決勝が
阪神甲子園球場での開催となり、チケット販売を行っており、コロナ禍で入場制限のあった21年は500人だったが、以降22年は3,021人、23年は3,237人、24年は3,809人、25年は4,000人以上が来場し、注目度が高まっている。今年は5,000人の大台を目指している。
同連盟の活動が紹介された。大きく分けて4つの柱がある。
まずは、大会運営。「プレミアム8」と呼ばれ、中学、高校、大学、社会人クラブの全国大会、そして4カテゴリーのトップチームを集めて行う全日本選手権を含めて計8大会がある。このほか、地域大会として、ゴールデンウィーク中に開催される松山での中学生大会、沖縄では12月にクリスマスウィークを開催するなど、さまざまな大会をサポートしている。
次に普及振興活動。世界少年野球推進財団(WCBF)の野球教室や活動をサポート。また、各地域にある7つのリーグの運営サポートも担い、全国7地区ではコンディショニングセミナーを開催している。
3つ目は国際交流。海外チーム、海外の審判員の受け入れ、日本チームが海外に遠征する際のサポート、海外における野球教室も行う。山田会長は「日本の女子野球は世界ランキングナンバーワンであり『日本の女子野球に学びたい』という海外チームが毎年増えています」と明かす。最後に強化・人材育成である。侍ジャパン女子代表チームを編成し、W杯では7連覇中。高校強化プログラムとしては21年から
イチロー選抜と対戦し、大学強化プログラムとしてはオーストラリア遠征に行っている。
W杯開催によるレガシー

三次市・福岡誠志市長は2025年に発足した三次ブラックパールズのユニフォームを着用してプレゼンした[写真=BBM]
普及振興活動の目玉が「女子野球タウン」である。
「皆さんからそれぞれタウンの申請をしてくださった時に、女子野球ワールドカップを誘致したいとか、チームをつくりたいとか、大会を開催してみたい、大会を誘致したい、さまざまな申請、提案をいただきました。どれも素晴らしくて、ありがたい企画でした。タウンを実際に動かしていく中で、実際に課題が見えてきたり、こちらのほうが、効果があるんじゃないか、そういったことで変わっていくのは当然で、それもありがたいことです。チャレンジできることはぜひ、挑戦していただきたいというお願いと提案でございます。こういった女子野球連盟からのご提案もそうなんですけれども、タウンの皆さんと連盟のコミュニケーションをもう少し改善していきたいな、と。これは私どもの課題でありまして、皆さんと積極的にコミュニケーションを取っていきたいと思っております」
山田会長があらためて提案したのは31年の第11回W杯の招致。現在、日本は第10回のW杯において、昨年のアジアカップを経て、今年はグループステージを戦い、そして、アメリカで開催される来年のファイナルステージでの8連覇を目指している。次なる第11回は29年にアジアカップ、30年にグループステージがあり、31年にファイナルステージが予定されている。過去に08年に松山でW杯が開催され、13年にはグループステージ B を三次市で開催した実績がある。大会開催による影響力は絶大であり、レガシーを残した。山田会長は代表合宿、大会招致も女子野球タウンの関係者の前で、あらためてお願いした。
この日は「ピックアップタウン」として、三次市・福岡誠志市長が登壇。W杯開催を機として、女子野球の持つ魅力についてあらためて感じたという。
「ワールドカップが成功できたのは、地元の企業さんや地元のプロ野球球団である広島東洋カープさんや、本当に多くの皆さんのつながりとか支えによって導かれたと感じております。正直、こんなに盛り上がるという想定は当初はできなかったのですけれども、我々もゼロからのスタートでありましたが、市民や地域の人に認知をしていただきながら取り組んだことは『シティプロモーション』にもつながったと感じております。女子野球熱がだんだんと出始め、それまで三次市にはスポーツ関係の実業団チームはなかったんですけども『皆で盛り上げよう!』といったような機運になり、25年に三次市を拠点とする女子硬式野球チーム、ブラックパールズが誕生していくということにつながってきたところであります。これは三次市が主体的に取り組むのではなく、あくまでも民間ベースで民間事業者の皆さんが取り組まれて、そして球団ができた、チームができたということにシナリオを描きながら、いろいろと取り組みを進めてきたと、こういったようなところであります」
三次ブラックパールズは、クラブチーム方式を採用している。地元のたくさんの企業に応援してもらい、スポンサーを募り、支えてもらう構図だ。そこに、雇用も生まれた。
「女子硬式野球選手が、自分たちの夢を道半ばであきらめなければいけなかったという環境が今までにあった、という話を聞きました。三次市としても、そういったチームの受け皿ができることで、夢を後押しできるような、そんな一助にも少しはなったのかなと感じていますし、また、今それぞれの企業さんでも、人材不足であるとか、採用しようと思っても、なかなかできないといったような事業者さんも少なくないんです。入団希望者を募り、ブラックパールズに所属していただく前に、就職先の紹介など選手の皆さんとやりとりをして、そして勤務先を決める。パートナー企業さんとともに実施し、そこで雇用条件などを説明して、そして両者が納得の上で会社に所属し、ブラックパールズにも籍を置いていただくという形を取っています」
地元企業が女子野球選手を採用する理由

会場ではW杯7連覇のトロフィーなど、女子硬式野球の歩みが展示。会場内では「女子野球タウン」のそれぞれの自治体のブースも設置された[写真=BBM]
なぜ、地元の企業が女子野球選手を採用するのか。
「女子の野球選手たちというのは、圧倒的に明るい、笑顔が素敵、そして本当にその雰囲気を、明るくしてもらえる、こういったようなことを肌で感じさせていただいています」
市全体に活気を与えている。
「カープの三次での冠試合でのPR活動、スポーツフェスティバルへの参加、さらには雪合戦に参加、あるいは防災キャンプに参加をし、いろいろな周知、PRをしていただいています。災害の防災減災についての取り組みにも参加していただいておりまして、重機の運転資格を選手自らが取って、何か災害があった時にはすぐに駆けつけられるように、と。グラウンドだけでなく、さまざまな分野で活動を広げ、市民が応援する機運も高まっています」
今後の展望についても触れた。
「まだ具体的な話にはなっていないんですけれども、ブラックパールズ私設応援団の設立の声も出ています。5年後のビジョンにつきましては、ブラックパールズが法人格を取得して自走するところを目指して行っていきたいと考えておりますし、もっと町を挙げてブラックパールズを応援するという機運も、さらなる醸成が必要なのかなと感じております。また、10年後には女子野球が当たり前の文化になっていくというところを目指して、今後も取り組みを進めていきたいと思います」
三次市はまさしく同連盟がビジョンとして目指すモデルケース。山田会長は、この日の多くのプログラムを受け、今後の「女子野球タウン」の展望を語った。
「タウンの皆さんが、さまざまなクラブチームをお持ちでいらっしゃると思います。将来的にはタウン対抗の大会が開けないかな、と。市民の皆様も巻き込んで、それぞれのチームを応援する。できれば大会は持ち回りの形で、企画ができないかなと考えております」
また、女子野球の可能性についてあらためて話した。
「女子野球、野球にまったく関係がなかった私が女子野球の魅力に心を奪われ、そこから20年以上女子野球に携わっているのですが『女子野球力』というものがあると信じております。人を動かす力がある、と。女子野球力を信じて、皆さんと連盟でタッグを組んで、これからさらなる発展を目指したいと思っております。皆さんこれからも女子野球タウンとして、一緒に女子野球を盛り上げてください」
山田会長は、第2回サミットの感想を語った。
「遠方からもたくさんの皆さんに集まっていただいて、本当にありがたい2日間でした。三次市長にプレゼンしていただいたんですけど、女子野球が町に起こす力、大会開催によりそのレガシーとして、副産物が生まれている、と。新たにチームが発足し、そこに企業が応援・サポートして、女子野球によって町が回っている。市民が喜んでくれる構造づくり。実際にご説明をいただき、リアルに感じられ、私どもとしても率直にうれしかったです。『女子野球力』で、女子野球界のみならず、日本を元気にできるように頑張っていきたいです」
当日配布された第2回女子野球サミットの冊子の表紙には「女子野球タウンから想い、つなぐ未来へ。」とメッセージが記載されていた。成長し続けている女子野球界。地道な活動により、その輪は確実に広がっている。
取材・文=岡本朋祐