打者が嫌がることを考えたリード

古巣・西武との一戦でスタメンマスクをかぶった森。強打も大きな武器だ
西武は5月24日の
オリックス戦(ベルーナ)に4対3と競り勝ち、今季対戦3カード目で初の勝ち越し。2018年以来、8年ぶりとなる首位で交流戦を迎えることになった。
名手・
源田壮亮の再三に渡る好守など固い守備で勝利を引き寄せた前日23日にオリックス戦の連敗を6で止めた西武。この試合では新外国人
アレクサンダー・カナリオの同点3号ソロ、勝ち越し4号2ランと効果的な2発で難敵を振り払い首位を奪還した。
チームは最大借金5を抱えていた4月18日から20勝8敗(勝率.714)の快進撃で2位・オリックスに0.5ゲーム差の首位。
西口文也監督は「開幕して序盤はなかなか得点を挙げることができず、苦しい試合も多かったが、
ネビンが帰ってきてから打線が活発になった。交流戦を迎える前にいい形で勝てた。これで勢いに乗っていける」と投打の噛み合ったチームの現状に手応えを語った。
また、この日の勝利は今季ここまで5戦全敗と手こずってきた元レオ戦士・
森友哉のスタメンマスク試合を6戦目で打破。嫌なジンクスを撃破した試合でもあった。
ここまでのオリックス戦、勝っていた2試合(3月31日、5月23日)はいずれもスタメンマスクが
若月健矢だった。自軍の元主戦捕手で、この試合までの対戦打率も.375と攻守で手玉に取られてきた森が先発マスクをかぶった5試合で今季好調の西武打線は低空飛行。チーム打率.185、6得点と抑え込まれ、初の勝ち越しを懸けたこの日の首位攻防第3ラウンドは「捕手・森友哉攻略」がカギとなっていた。
5月に入って打率.298、4本塁打、10打点と調子を上げてきた
長谷川信哉は試合前までに「やっぱり森さんの配球がちょっと嫌ですね。なんかこっちが手を出してきそうなところに要求してくるんで、そこが厄介ですね」と森のリードを警戒。その上で「個人的な感想ですけど、森さんの場合は自分が(打者として)されて嫌なことを配球でしようとしてくる。分かりやすいと言えば、分かりやすいんですけど、それにハマってしまうんですよ」と捕手・森の伏線の張り方、ウイニングショットのずらし方を解説していた。
岸潤一郎も「(読みが)当てはまるところと当てはまらないところのギャップが大きい。(チームを)よく知っているが故に意地悪っすね」とそのリードの嫌らしさを表現していた。
バッターとしての感覚がベース

5月24日の一戦は西武がカナリオの効果的な2本塁打でオリックスに勝利した
これを補足するように
亀井猛斗ヘッドアナリストは「(森のリードは)僕も分からないです。われわれ(の仕事)はスコアラーさんが集めたデータに基づいてスタートするものなんですけど、友哉はウチにいたときから、最低限の情報しか(頭に)入れない。結構出たとこ勝負なんですよ」と自らの感性を重視する捕手・森のリードの前提を語りながらこう続けていた。
「友哉はバッターとしての感覚がすごいんで、リードもそこがベースになっている。感性がすごいんで(データに)残らないんですよ。長谷川と話をしたときに『友哉の考えていることは俺もちょっと分かんない』と伝えてました。だったら、バッターが嫌がることをやろうとしてくる、となるんだけど(そこには)根拠がない。例えば『このあたりに真っすぐを行ったら打たれるぞ』と言われてもアイツの中で“行ける”と思ったら平気で行ってしまえる。(森のリードに関する)データも当然あるんですけど、それ以上に感性が鋭い。特に今は自分のバッティングの状態がいいから、なおさら。ダメなときは、コンピューターがズレるんですよ。だけど、いいからリードも冴えますよね。(対策を)対友哉で考えるか、対投手で考えるか。そこが問題でしょう」
結果的に、24日の試合は森の“感性リード”とは無関係に3年ぶりの先発マウンドとなった
山岡泰輔の制球が定まらず、カナリオが初球ストレートを3号ソロとしまず同点。なお無死一、三塁からネビンの中犠飛で2対1と逆転し、初回の第1打席でその森に打たれた5号先制弾を帳消しとした。2対2の同点に追いつかれた直後の6回にもカナリオが相手四番手・
吉田輝星の浮いたチェンジアップをとらえ、来日初の1試合2発で接戦をものにした。
攻守で警戒していた森にはこの3戦で13打数7安打(打率.538)、1本塁打、4打点と打たれながら、肉を切らせて骨を断った西武だった。
文=伊藤順一 写真=大泉謙也