監督代行に初勝利をプレゼント
かつてのエースが復活の兆しを見せている。
巨人の
戸郷翔征が5月27日のソフトバンク戦(東京ドーム)で今季最多の117球を投げ、7回7安打1失点の力投。毎回のように走者を出したが決定打を許さなかった。初回二死一、二塁のピンチで、
山本恵大をフォークで空振り三振。3回に山本恵に先制適時打を浴びたが最少失点で切り抜け、直後の攻撃で自ら適時打を放つなど一挙5得点を奪った。フォークを生かすためには球威十分の直球が生命線となる。6回二死一塁では代打・
山川穂高を147キロ直球で空振り三振。
阿部慎之助監督が26日に電撃辞任という緊急事態を受け、就任した
橋上秀樹監督代行の初勝利にウイニングボールをプレゼントした。
昨年は2度のファーム降格を味わうなど8勝にとどまり、3年連続2ケタ勝利でストップ。復活を期した今年だったが、春季キャンプ中に異例のフォーム修正に取り組むなど試行錯誤を重ねた。オープン戦で防御率が9.00とアピールできず、開幕二軍スタートに。焦りの気持ちを抑えて、
久保康生巡回投手コーチらと課題に向き合ってきた。
5月4日に一軍昇格すると、登板を重ねることで投球内容が良くなっている。今季3度目の先発となった19日の
ヤクルト戦(いわき)で、7回5安打5奪三振無失点の快投で初勝利。イニングを重ねて直球の球威が落ちるのが懸案材料だったが、この日は最後まで150キロ近い球速表示で打者を押し込む。「納得して登板できたのは久しぶりの感覚。久しぶりに気持ちよく試合が終えられた。ここ1年半ぐらい苦しい投球が続きながらも、何とか監督も使ってくれて、その期待に応えられてよかった」とホッとした表情を浮かべていた。
交流戦は2022年から24年まで6連勝を飾るなど、良いイメージがある。「(パ・リーグの打者の)データが少ない分、どんどん押していける」と手応えを口にしていたが、ソフトバンク戦で有言実行の投球を見せ、チームの連敗を5でストップ。チームに交流戦初勝利をもたらした。
「以前に比べると数段良くなっている」

ダルベック[右]とともにお立ち台へ。今後の投球にも期待がかかる
巨人OBで野球評論家の
廣岡達朗氏は週刊ベースボールのコラムで、戸郷について以下のように語っている。
「以前に比べると数段良くなっている。5月4日、ヤクルト戦(東京ドーム)の投球内容に関して、私は『一つも直っていない。このままではクビになる』と酷評した。その後、12日の
広島戦(岐阜)では5回6安打、1本塁打、3失点で勝敗つかず。19日のヤクルト戦(いわき)では7回を投げて5安打、無失点で今季初勝利を飾った。試合後には『今までたくさん迷惑をかけていたので、1イニングでも長く、1球でも多くと思っていた』と話していた。何が良くなったかというと、上からピュッと投げるようになったことだ。球にキレが出てきた。低めに制球されていたため、いい当たりをされてもスタンドには入らなかった。これまでの戸郷は踏み出した左足が真っすぐに突っ立っていた。だから体を前へ移動できなかった。それでも通用したのは若さがあったからだ。しかし若さは永遠ではない。自然の法則には逆らえない。過去の栄光にアグラをかいてはいけない。ピッチングを変えなさいということを、結果が教えてくれたのだ。戸郷はしばらく悩んだだろうが、自分でモノにできつつある」
期待の高さゆえに、注文も忘れなかった。
「難点を言えば、左足を踏み出したとき、間合いがまだ一個足りない。もっと前にグーンと伸びていってから球を離せばいいのに、以前の投げ方の余韻が残っている。力を抜くことほど難しいものはない。このまま行けば、良くなりつつある投げ方が元に戻る可能性もある。だから担当コーチは厳しくチェックし、よい感覚を体で覚え込ませるべきだ。頭で考えているうちは覚えたうちには入らない。私が
西武監督時代に指導した
工藤公康は一塁ゴロのベースカバーに入る際、足元を見なくてもしっかりと歩数が合っていた。このように体が自然と動くまで繰り返しやることで、初めて覚えたことになるのだ」
上位の
阪神、ヤクルトに食らいつくためにも、巨人は戸郷の活躍が不可欠だ。エース復権へ。その歩みは始まったばかりだ。
写真=BBM