
5月31日の早慶2回戦。4回表終了後、早大と慶大の選手たちはダイヤモンド内に整列。天皇陛下と長女・愛子さまが神宮球場の貴賓席に着かれると、2万9500人の大観衆からはどよめきと大きな拍手に包まれた[写真=矢野寿明]
5月31日(2回戦)
早大5x-4慶大(1勝1敗)
王手から一転、後がなくなった。
2023年秋以来の東京六大学リーグ戦での優勝を目指す慶大は、早慶戦での勝ち点を奪取(2勝先勝)が条件である。1回戦は8対1で快勝。エース左腕・
渡辺和大(4年・高松商高)が7回1失点で6勝目を挙げ、打線も13安打と好機での勝負強さが光った。
リーグ制覇へあと1勝で迎えた早大2回戦は、1994年春の早慶戦以来、32年ぶりの天覧試合。2万9500人の大観衆である。慶大は1点リードの9回裏、前日に勝利投手の渡辺を投入して、逃げ切りを図ったが、痛恨のサヨナラ負け(4対5)。1勝1敗のタイ。慶大が早大3回戦で勝てば優勝、負ければ明大が優勝という展開になった。
試合後、慶大・堀井哲也監督は「彼でここまで来たわけですから」と、3回戦における渡辺の3連投を示唆した。主将・今津慶介(4年・旭川東高)は淡々と話した。
「一筋縄ではいかないというのは分かっていたので、こういう展開になるのを想定していたということで、切り替えて明日頑張ろうかなと思います。天皇陛下と愛子さまが来てくださっているというところで、そこで天皇杯をいただこうという話はあったんですけれども、仕方ないです。素晴らしい雰囲気の中で、観客の皆様も含めて、貴重な体験することができましたし、本当に自分の人生においても素晴らしい経験だったかなと思います。今日負けた敗因としては、今までやってきたことが生かせなかった部分というのが多くある。まずはそこを修正して、明日また皆さんに慶応の野球をお見せできればなと思います」
部員219人の思いを結集
あらためて、今津主将は優勝への思いを語った。チームスローガンは「ファンファーレ」である。
「(昨秋まで3季連続5位と)苦しい時期を過ごしたので、その分、優勝にかける思いは強いですし。明治神宮球場100年、連盟結成101年というところで、新たな幕開けを慶應が先頭を切って優勝して、いいスタートを切れればいいなというふうに思います」
最後に聞いた。3連投となるエース・渡辺への思いである。
「彼も場慣れしているので切り替えられると思いますし、彼に助けられたシーズンだったので、明日は打線が基本的には彼を助けて、彼を優勝投手にしたいと思います」
主将・今津、主務・沖崎真周(4年・幕張総合高)とともに大所帯を束ねてきた山口瑛士チーフコーチ(4年・郡山高)は言う。
「大人数で情報の伝達がやっぱり難しいところはありますが、そこはスタッフ全員で協力してくれたり、全員が勝つために必要なことを取り組んでくれているからこそ、最高のチーム力になっている。人数が多くて群れるというよりは、個の力がそれぞれ、足し算掛け算になっている。今津は熱い男なので、情熱であふれている。渡辺もやる時はやる男。本当に一戦一戦、一球一球、丁寧な野球やるだけです」
慶大の取材対応はエール交換中に行われた。天皇陛下と愛子さまはネット裏の貴賓席で、最後まで見届けられた。エール交換は勝者・早大、敗者・慶大の順。主将・今津が三塁ベンチ前の列に戻ると『塾歌』が流れていた。三番まで斉唱。いつ聞いても、心が落ち着く。ライバル早大との大熱戦を終え、3回戦へとリセットするには、有意義な時間となったはず。4学年219人が思いを一つに結集させ、最高の準備で、決戦の早大3回戦を迎える。
取材・文=岡本朋祐