存在価値が高まる大城

今年はスタメンマスクをかぶる機会を増やしている大城
巨人が6月2日の
オリックス戦(東京ドーム)で3対2と接戦を制した。
則本昂大は7度目の先発で6回途中5安打2失点の粘投を見せて移籍後初勝利。好リードで支えたのが、女房役の
大城卓三だった。
則本は初回から2者連続で3ボールスタートと制球がバラついていたが、大城はスライダー、カットボール、カーブを織り交ぜながら巧みな配球術で投球のリズムをつかませた。6回は
中川圭太のソロで1点リードに縮まると、続く
渡部遼人が打ち上げた打球はファウルゾーンの一塁ベンチ付近へ。懸命に追いかけるとベンチ前で左手を伸ばして好捕し、相手に傾きかけた流れを渡さなかった。則本降板後も救援陣を引っ張り、オリックス打線の反撃を断つ。打撃ではプロ9年目で初の三番に起用され、3回に痛烈な中前打を放った。
今年の大城は完全に自信を取り戻したように見える。近年は出場機会を減らしていたが、35試合出場で打率.344、4本塁打、14打点の好成績をマーク。対左投手に打率.391とコンタクト能力の高さが光る。5月は25試合中17試合で先発マスクをかぶるなど、存在価値が高まっている。
キャプテンも務める岸田

中心選手としてチームをまとめる存在でもある岸田
岸田行倫も正捕手争いで負けるわけにはいかない。昨年は87試合出場で打率.293、8本塁打、39打点。春先は
ソフトバンクからFA移籍した
甲斐拓也が捕手でスタメン起用されていたが、5月下旬以降にマスクをかぶる機会が増えて正捕手格に。好調の打撃を評価されて四番に抜擢されたこともあった。今年はブルージェイズに移籍した
岡本和真に代わって主将に就任。
坂本勇人、岡本と「チームの顔」となる選手が主将を務めてきた歴史があるだけに、重みがある。岸田も昨年までとの立場の違いを感じていた。
「初めてキャプテンとして過ごしたキャンプは、正直、今までとは違う感じはしました。僕自身の勝手な感覚かもしれませんけど、周りから『見られている』と感じて、自覚が芽生えました。キャンプ中、同じ捕手だった阿部(
阿部慎之助)監督に、キャプテンのときに大事にしていたことを聞かせていただいたら、『まずは自分のできることを精いっぱいやる』、『チームの流れが悪いときに話をする場をつくる』。それが大事だと教えていただきました。勇人(坂本勇人)さんとか、和真(岡本和真)のキャプテンとしての姿もずっと見てきましたし、いろんな人の考えがあると思うので、自分なりのやり方で頑張っていきたいと思います」
今年は開幕から先発マスクをかぶってきたが、5月に入ると打席好調の大城の出場機会が増える形に。だが、岸田の状態が決して悪いわけではない。5月30日の
日本ハム戦(エスコン)で2回に
有原航平の初球の145キロ直球を逆方向の右翼にはじき返すと、打球はブルペンに飛び込む2号ソロに。その後の打席でも四球、2本の安打と全4打席で出塁。4月中旬は打率2割を切っていたが、打率.292、2本塁打、10打点と上昇気流に乗っている。
互いの存在が良い刺激に
捕手は試合に出場できるポジションが1枠しかない。守備で神経を使うが、現代野球では「強打の捕手」の価値が高まっている。プロ入り後に捕手で出場機会を増やし、その後に一塁、三塁で球界を代表する強打者として活躍した
小笠原道大氏は捕手の特殊性について、週刊ベースボールのコラムで以下のように語っている。
「野手の中でも捕手は、ひときわ特殊なポジションです。より一層受け身で、顔も見せない。守備側で唯一、逆を向いています。捕手ほど視野の広さが必要なポジションはなく、常に冷静さと頭の回転の速さが求められます。体も気持ちも強くなければ、捕手は続けられないのです。なんといっても捕手は、すべてを受け止めなければなりません。投手を導き、コントロールして試合をも支配する。ベンチからのものを含め、指示を出すのは捕手。それだけ重労働な上に、状況によっては打たなければならないのだから、大変です」
交流戦はパリーグの主催試合で指名打者制のため、大城と岸田の同時起用が可能となる。複数の捕手を起用することが球界のトレンドになっているが、共に正捕手奪回への思いは強いだろう。互いの存在が良い刺激になる。ハイレベルな定位置争いに要注目だ。
写真=BBM