“つなぎの野球”で3点差をはね返す

6月9日の広島戦でサヨナラ勝利に貢献した長谷川[左]と岩城
西武は6月9日の広島戦(ベルーナ)に4対3の逆転サヨナラ勝ち。3連勝で交流戦成績を9勝2敗1分けの2位とし、貯金を今季最大14とした。
先発・武内夏輝が4回までに
ファビアン、
平川蓮、
坂倉将吾にソロ3発を許し3点のビハインドを背負った。しかし、この劣勢を“つなぎの野球”ではね返せるのが今のライオンズだ。
4回裏に
西川愛也の犠飛で1点をかえした西武は続く5回、
滝澤夏央のバント安打と
長谷川信哉の中前打で二死一、三塁の好機をつくると六番・
古賀悠斗、七番・
渡部聖弥の連続適時打で2点を奪い3対3の同点に追いついた。そして、仕上げは同点の9回一死満塁から7日の
中日戦(バンテ
リン)で8号決勝弾を叩き込んだ長谷川の2試合連続決勝打となる右前打が飛び出し、花咲徳栄高吹奏楽部による特別応援デーとなったレフトスタンドが沸騰した。
西口文也監督は「早い回に追いつくことができてよかった。それが勝利に結びついた。(長谷川は)その前のチャンスでちょっと強引に行っているように見えたんでね、うまく修正してしっかりミートしてくれたと思う」と2試合連続殊勲打の24歳を称えた。その上で中盤の同点劇について「二死から古賀がよく打ってくれて何とか形になった。しつこさがみんなに出ていると思う。(2四球を選んだ
源田壮亮も)粘って粘って四球を選ぶというのが2打席続いたのでピッチャーもある程度球数を費やして5回で降ろすことができた」とコメント。苦手としていた相手先発・
床田寛樹から3打席で計26球を投げさせた源田の功労も評価した。
「いい流れを持ってこられた」
そして、今季初めて3点差をはね返したこの野手陣の粘りがドラフト2位ルーキー・
岩城颯空のプロ初勝利(1敗18セーブ)につながった。同点の9回に三番手として登板した岩城はわずか9球でカープの中軸を三者凡退に打ち取り、プロ23試合目でうれしい初勝利を手にした。
9回裏のサヨナラシーンをベンチで見届けた岩城は「いつもと違う景色が見られてとても新鮮な気持ち。(9回表は)同点の場面だったので次の攻撃にいい流れをと思ってマウンドへ向かいました。久しぶりの三者凡退だったのでいい流れを持ってこられたと思います」と少し自虐的な苦笑いを浮かべた。
先週の
阪神戦(甲子園)では連続セーブを挙げたものの、3日の試合では3点差の9回に
佐藤輝明に2ランを許し1点差での逃げ切り。4日の同カードでも同じく3点差の9回に登板し、2四球と味方エラーから一死満塁のピンチを背負い一ゴロの間に1失点。さらに二死満塁、フルカウントという状況から代打・
坂本誠志郎をスライダーで空振り三振。1回34球を費やし何とか逃げ切りに成功していた。
岩城はこの敵地での“恐怖体験”を振り返り「(甲子園は)なんかシンプルに応援がすごかった。声でっか! と思いました」と初めて経験した聖地での洗礼に圧倒された事実を打ち明けた。
精神的にも追い詰められていた甲子園での2登板については「なんかもう言い方がいいのか分からないですけど、(試合を)早く終わらせたくて……。嫌なムードだったから、ものすごく(時間が)長く感じました。早く終わらせたい、アウトを取りたいというか、時間が長く感じて(マウンドに)1時間ぐらいいたような気がします。全然冷静じゃなかったですよ」と岩城。ルーキーらしからぬ、ふてぶてしい見た目とは裏腹に、内心は苦しい状況から逃げ出したい自分との葛藤の2日間だったことを語った。
しかし、22歳ルーキーは今、このありがたい見た目こそ生き馬の目を抜く勝負の世界で生きていく「武器」にしようと思い始めている。
「初めて会う人には、そいういうふうに(ふてぶてしく)見られることのほうが多いから、そこをうまく使っていこうかなと思います。私生活ではちょっと誤解を生むかもしれないですけど(笑)」
こう語る岩城は少し“チキン”な内面を隠す外見の“アドバンテージ”を生かしながら、初めて体験するベルーナドームの夏を乗り越え、あと「13」と迫った目標とする昨年の守護神・
平良海馬がマークした31セーブを見据えている。
文=伊藤順一 写真=大泉謙也