球団初の交流戦V

6月16日の阪神戦、先発・武内の好投もあり勝利した西武は球団初の交流戦優勝を飾った
西武は6月16日の阪神戦(甲子園)に1対0の逃げ切り勝ち。交流戦成績を14勝3敗1分け(勝率.824)とし球団初となる交流戦優勝を決めた。
優勝のかかった大一番に先発した
武内夏暉は6回を95球、3安打10奪三振と仕事を果たした。5回には無死一塁から自らの犠打で走者を進め、
桑原将志の適時打で虎の子の1点が西武に転がり込んだ。これを
トレイ・ウィンゲンター、
篠原響、
甲斐野央のブルペン陣が無失点リレーでつなぎ武内が価値ある5勝目(2敗)を手にした。
武内は「試合前から緊張しましたが、何とかチーム一丸となって勝つことができた。インコースの真っすぐがよかったので(速球で)押していけたのがよかったと思う。(犠打は)2ストライクに追い込まれて、無理かなと思ったんですが、何とか送れて、それが点につながってよかった」と充実の笑顔。「まだまだシーズンは続くので、目の前の1勝を続けて勝ち進んでいきたい」とチームとしての目標を語った。
これで西武はシーズン成績を通算41勝23敗2分け(勝率.641)とし、貯金18の首位でリーグ戦再開を迎えることになったが、本当の勝負どころはこれから。2019年以来、7年ぶりとなるリーグ制覇がかかる「勝負の9月」を迎えるためには、喫緊の課題となる鬼門の「ベルーナドームの夏」をいかに乗り切るかが勝負の分かれ道となってくる。
チームには昨季の苦い記憶がある。交流戦まで37勝31敗の貯金6と優勝争いの輪の中にいた西武だが、リーグ戦再開初戦となった6月27日の
日本ハム戦で当時のエース・
今井達也(現アストロズ)が熱中症による体調不良で途中降板。気温27.3度、湿度81%の過酷な高温多湿環境に変調をきたし、4回途中での降板を余儀なくされた。後に今井は「暑さというより呼吸がしづらいというほうが気になる」とこのとき襲われた本拠地での“危険な経験”を語っている。
高温多湿の環境の中で試合

昨年は夏場の冷涼化対応としてベルーナに大規模なミスト設備が導入された
ベルーナドームの夏は、単純な暑さだけではない。高温多湿の環境の中で試合を行い、移動を挟みながら連戦を戦う。特に運動量が多いピッチャーは体力を削られ、消耗も激しい。
ルーキーイヤーの昨年は左翼手として102試合にスタメン出場し、2年目の今季、サードにコンバートされた
渡部聖弥はいう。
「キツいのは夏場ですね。(6月中旬の)今はまだ夜のほうが涼しかったりするので大丈夫ですけど、真夏の夜になると熱風が外野の(屋根の)隙間から入ってきてすごいんですよ。もわっとした湿気があるんですけど、逆に内野手は意外と後ろのアメリカン・エキスプレス プレミアム シートの冷房が軽くふんわりと届いているんですよ。バッターボックスがちょっと涼しくて内野も若干……。『ショートを越えたぐらいから超涼しいよな』と去年はよく(西川)愛也さんと言っていました。暑いんですけど、ちょっと耐えられる感じですね。その中で一人だけ運動量が違うピッチャーは本当に大変だと思います」
こう投手を気遣いながら、グラウンドレベルでの知られざる温度差を語る渡部は「今年は何か対策はあるんですかね。去年のミストは逆にモアモアして湿気がすごかった」とも語る。続けて「今年は内野なので去年よりは軽い気持ちでいけるのかな。そんなに覚悟まではしなくていいのかなと思う」とサードコンバートの最大の恩恵に感謝しながら、過酷な本拠地での夏に一定の不安を隠さない。
求められるチームの総合力
だからこそ今季の西武に求められるのは、チームの総合力だ。
昨季との違いは、今季の西武には若い戦力に厚みがあることだ。渡部、
滝澤夏央、
長谷川信哉ら若手がレギュラーとして定着しつつあり、打線を引っ張る
タイラー・ネビンや
アレクサンダー・カナリオ、FA加入の桑原、
石井一成らと絶妙なハーモニーを奏でる。
西川愛也、
源田壮亮、
岸潤一郎、
平沢大河の中堅陣に捕手陣も
古賀悠斗、
小島大河、
柘植世那の3人がそれぞれの個性で投手陣を引っ張っている。
中村剛也、
炭谷銀仁朗がいまだ未昇格の現実を見ても、ベテランに頼らない戦い方ができている。そして、圧巻のチーム防御率2.37を誇るリーグ屈指の投手陣を
豊田清、
大石達也両投手コーチがうまく休ませながら回し、勝負どころの夏場を見据えている。
今季の西武が本当に変わったのであるならば、この鬼門の夏場を乗り越えなければならない。7年ぶりリーグ制覇への最大の敵は「ベルーナドームの夏」。そこをどう制するかにこそV奪回の鍵があると言っても過言ではない。
文=伊藤順一 写真=宮原和也