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【大学野球】侍ジャパン大学代表監督が「うれしい悲鳴」を上げる理由

 

「格が違う」と絶賛


大学日本代表を指揮する鈴木監督[撮影は1月の全日本大学野球連盟監督会 写真=BBM]


 今年から侍ジャパン大学日本代表を指揮する鈴木英之監督(関西国際大監督)は、3人の投球に驚愕した。

 候補選手50人が集合しての選考合宿が6月20日、バッティングパレス相石スタジアムひらつかで始まった。初日は雨天の影響で野手は別施設に移動して行われ、投手は球場内で汗を流した。2、3日目の紅白戦(投手は1人2イニング)が行われ、実戦形式で選考が行われる。初日のブルペン入りは希望制。鈴木監督が最もインパクトを受けたのは青学大・鈴木泰成(4年・東海大菅生高)だった。

「投球練習を見ましたが、すごい球を投げていました。鈴木君は選手権に出てなかったんですけど、ちょっと、格が違うというか、やっぱりいいボールを投げていました」

 指揮官からの絶賛の言葉を受けて、鈴木は「評価していただくことはすごくありがたいことなんですけど、あとは実戦になって、しっかり抑えられるかということが大事だと思っています。もっといいボールが投げてしっかり抑えたいなと思います」と気を引き締めた。

 154キロ右腕・鈴木は5戦全勝優勝を遂げた昨年の日米大学選手権では、抑え役を任された。青学大では入学から昨秋まで、6シーズンすべてでリーグ優勝。この春は初めてV逸を経験し、悔しさを味わった。シーズン後は同合宿に招集されることを想定して、トレーニングを継続してきた。

「リーグ戦の疲労はしっかり抜きながら、これに向けて、しっかりと調整してきました。まずは選ばれることが大事だと思うんですけど、仮に選ばれたら、しっかりと投手陣、チームを引っ張っていけるように頑張りたいなと思います」

 あるNPBスカウトは「2026年の1位候補でも抜けている」と12球団同時入札での重複を示唆。鈴木はかつて「ドラフトへの思いは人一倍強いです。1位で行くことにこだわってやっている」と語っていたことがあった。今合宿でも多くのスカウトが熱視線を送る。

「目に入ってしまうことはあるんですけど、意識しすぎないようにというか、自分のピッチングをするだけだと思うので、今できる最大のパフォーマンスをしたいなと思います」

真っすぐで勝負できる投手


 鈴木監督の目が点になった投手がいた。全日本大学選手権で関大を54年ぶり3度目の日本一へと導いた米沢友翔(4年・金沢高)である。

 この日はブルペンには入らず、基礎トレーニングなどに時間を割いた。鈴木監督は「準決勝、決勝に進出したピッチャーは、疲労を考慮したい」と、最終日となる3日目の紅白戦での登板を示唆した。米沢の印象を語る。

「最後は点滴を打ちながら、ちょっとフラフラしていましたけど、1回戦の投球で、久しぶりに見ました。あんなストレートで勝負できるピッチャーは最近、あまりいないですからね」

 米沢は大学入学以来、故障などがあり、3年秋まで未勝利。この春、初めて主戦投手として、シーズンを完走した。国学院大との全日本大学選手権準決勝前には発熱も、5回1失点で決勝進出に貢献。試合後の取材は受けられず、病院に直行し、点滴を打った。翌朝も発熱は収まらず、再度、点滴を打ち、慶大との頂上対決で先発を志願した。

 気力を振り絞り、5回無失点に抑え、頂点まで駆け上がった。この春で、米沢の評価は急上昇。大会前には「ドラフト上位でプロ」と語っていた進路を、大学日本一を経て「ドラフト1位を目指したい」と上方修正した。

 決勝後、体温は39度まで上がったという。帰阪後は静養し、合宿まで中5日で体調を整えて、平塚に乗り込んできた。

「まずはしっかり体を休めてから、ランニングなどで体を動かして、この週に合わせてきました。初めてリーグ戦を投げ切ることができましたし、その分、体にダメージ、疲労はたくさんあったんですけど、それでもチームの勝利だけを考えて投げていましたので。それがあったからこそ、乗り切れたと思いますし、こうして自分のパフォーマンスを発揮できたのはすごく良かったなというふうに思います」

 注目されることについては、こう語った。

「(周囲を取り巻く環境は)本当に大きく変わったと思うんですけど、優勝できましたが、満足してはいけないと思っているので、秋に向けて切り替えています。まだまだ詰めていかないといけないところはあると思うので、もう一回、自分自身と向き合えればと思います。チームとして4冠(春、秋のリーグ戦、全日本大学選手権、明治神宮大会優勝)を目指そうという話になっているので、秋に向けてチーム全体で良い練習を積み重ねていければなと思います。まずはこの合宿です。日の丸を背負える機会もなかなかないですし、日本代表に選ばれるようにしっかりとアピールしたいです」

昭和の大エース


 もう一人、鈴木監督が球質を評価したのは慶大・渡辺和大(4年・高松商高)である。捕手を座らせて30球、キレの良いボールを投げ込んだ。渡辺は関大との決勝では登板機会がなかったが、東北福祉大との準決勝では8回途中1失点(自責点0)。函館大との2回戦でも6回無失点と好投し、防御率0.00で最優秀投手賞を受賞した。7勝を挙げ、満票で初のベストを受賞した東京六大学リーグ戦からフル回転していた。

 関大との決勝後、翌日からは3日間完全オフとした。体のケアに時間を割く自己管理能力の高さ。肩肘などに異常がなかったことを確認し、木曜日からキャッチボールを再開、金曜日も調整して、この日の合宿初日を迎えた。慶大・上田誠投手コーチは「昭和のエース。毎日、ブルペンで投げる。こちらが制止しなければ、いつまでも投げ続ける。走り込みも豊富。こちらから言うことは何もありません」と明かす練習の虫である。合宿初日のブルペン入りにも、意図があった。「月曜日の紅白戦登板が予定されていますが、そこで、一気に出力を上げれば故障につながる」。自己分析がしっかりしており、考える能力がある。

「日本代表に選ばれたいので、僕が今出せるベストを試合で出して、そこを評価してもらいたいなと思います。特長があるピッチャーがいっぱいいるので、(合宿3日間で)自分に還元していきたいと思います」

投手選考は12人以上想定


 鈴木監督は「左投手が特に豊富というか、米沢君ももちろんですし、国学院の藤本君(藤本士生、3年・土浦日大高)とか慶應の渡辺君とか、立命館の有馬君(有馬伽久、4年・愛工大名電高)とか、左ピッチャーがすごいですよね。ですから、半分ぐらい、ひょっとしたら左になるのかなんて言っていたりもするんですけど、それぐらい左投手の好投手が多い。これだけ豊富なだけに、選考は苦労するかなとも思ったりするんです」と、うれしい悲鳴を上げた。

 鈴木とともに昨年、3年生として代表入りした有馬は「ライバルが多い反面、いろんな人からいい刺激をもらって、コミュニケーションを取って、いい部分は盗むことができる場だと思います。小さい頃から日本代表、ジャパンのユニフォームを着てプレーするのを目標にしてきました。昨年、それが初めて叶ってすごくうれしかったですが、もう一つ、結果を残せなかったところもあるので、今年はしっかり結果を残して、またその先の自分の目標に向かっていきたいと思います」と決意を述べた。

 ワールドカレッジベースボールチャンピオンシップ(7月11〜15日)は4カ国・地域(日本、アメリカ、台湾、韓国)が出場し、総当たりのリーグ戦3試合を経て、準決勝、決勝が行われる。5連戦の過密日程が組まれており、メンバー28人のうち、投手は12人以上を想定しているという。

「この学年、今年のチームは投手力が良いと思っているので、野手は昨年度よりもパワー的な面では多少、劣る部分があるのかもしれないですけど、スピードのある選手が非常に多い。ピッチャーが良いということはディフェンス面をしっかりと守りのチームになるかもしれないです。本当は個人的に好きなのはガンガンホームランを打つチームを作りたいんですけど、ピッチャーが良いだけに、バッテリーを中心に守れるチームを作りたいし、そういう選考をしたいなと思います」

 21日からは紅白戦が行われている。球場にはスカウトも大挙。計3日間のサバイバルから目が離せない。

取材・文=岡本朋祐
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