成長著しい2年目右腕

2年目の今季、勝利の方程式に入る活躍を見せている工藤
巨人、
ヤクルトと熾烈な首位争いを繰り広げる
阪神。リーグ連覇のカギを握るのが救援陣だ。
昨年は救援防御率1.96と12球団トップの数字だったが、今季はリーグワーストの3.68と大幅に悪化。昨年にプロ野球新記録の50試合連続無失点を樹立した
石井大智が2月に左アキレス腱断裂で長期離脱のアクシデントに加え、昨年66試合登板で防御率0.87と抜群の安定感だった
及川雅貴も、1カ月間のファームで調整を経て18試合登板で防御率5.17と本来の輝きを取り戻せない。新外国人右腕の
ダウリ・モレッタは17試合登板で防御率7.07と痛打を浴びる登板が目立ち、6月1日にファームに降格した。
「勝利の方程式」の構築がままならない状況だが、明るい材料がある。成長著しいプロ2年目の
工藤泰成だ。今季20試合登板で防御率1.27。制球力が課題だったが、21回1/3で5四球と改善されてきている。常時155キロを超える直球を武器に三振奪取率が高いことが大きな魅力だ。6月16日の
西武戦(甲子園)では7回にマウンドに上がると、3者連続で3球三振に仕留める「イマキュレートイニング」を達成。先頭の
西川愛也、
山村崇嘉をフォークで空振り三振に仕留めると、
桑原将志を159キロ直球で見逃し三振。直球、カットボールをストライクゾーンにどんどん投げ込みカウントを有利に運べることから、決め球のフォークが生きてくる。
「カットボールの質もいい」
6月23日のヤクルト戦(甲子園)でも3者連続三振を記録した。7回にマウンドに上がると、先頭打者の
赤羽由紘をフォークで3球三振、代打の
塩見泰隆をカットボールで空振り三振に抑え、
モンテルに対して3球目の158キロ直球が頭部付近に抜けて球場がどよめきに包まれたが、最後はフォークで空振り三振を奪って8試合連続無失点を記録した。
他球団の首脳陣は「投手全体の球速が上がっていますが、ここまで速い投手はなかなかいない。積んでいるエンジンが違いますよね。カットボールの質がいいので、なかなか球種を絞れない。直球の質がさらに良くなれば、ちょっと打つ手がなくなってくる」と分析する。
トレーニングで追い込んで
育成ドラフト1位で入団した昨年は春季キャンプから快投を続け、3月に支配下昇格。シーズンに入って18試合登板で0勝2敗1ホールド、防御率3.31をマークしたが、一軍定着までには至らなかった。「プロの厳しさを知った。去年は気持ちだけでしたが、気迫で抑えるけど考える力も大事」。直球は速いが制球が定まらないケースが目立ち、甘く入った球を捉えられる。160キロ近い球でも操れなければ、一軍では通用しない。工藤は今年に向けて重点を置くテーマについて、週刊ベースボールの取材で以下のように語っていた。
「トレーニング面ですね。もっと追い込めるというところでは、やっぱりオフのうちにしかできないことなので。シーズン中、やれるときにやる感じで強度などは大体オフの半分くらいになってしまうので。挙げる重量自体はあまり変わらないですが、セット数とかが半分になったりしますね。オフに入った今は、部位を分けながら毎日トレーニングできています。数字的な部分は筋肉量は上がるだけ上がったらいいと思っていますけど、体重は今ぐらいでいいかなと。挙げる重量に関しては、上げられそうだったら上げるという感じでやっています。とにかく鍛えて、シーズン中に向けた蓄えを作るという感じですね」
2年目の春季キャンプは
木下里都、
石黒佑弥と共に「強化指定選手」に指名された。起用法にも
藤川球児監督の期待の大きさが垣間見える。5月26日の
日本ハム戦(甲子園)で、1点ビハインドの7回に登板したが、先頭の
万波中正に中前打、
細川凌平に四球とピンチを招いて降板。2失点を喫したが、藤川監督は翌27、28日の同戦も起用した。
リーグ連覇を果たすためには、救援陣が安定感を取り戻すことが不可欠な要素になる。「(石井)大智さんの枠を誰かが埋めないといけない。その競争にしっかりと勝ちたい」。剛速球右腕がセットアッパーとして一本立ちできるかが、チームの命運を握ると言っても大げさではない。
写真=BBM