世界で広がる友情の輪

記者発表後、登壇者が記念撮影に応じた。左から成田市観光キャラクターうなりくん、日本野球連盟・清野会長、成田市・小泉市長、WCBF・王理事長、NPB・榊原コミッショナー、WCBF・中畑評議員[写真=BBM]
「第32回世界少年野球大会 成田大会」の記者発表が6月29日、東京都内のホテルで開かれた。世界少年野球推進財団(WCBF)、成田市、日本野球連盟の共催により7月30日から8月7日まで行われる。スローガンは「We Love Baseball!! 世界で広がる友情の輪」である。
WCBFは日本とアメリカのホームラン王である
王貞治氏と故ハンク・アーロン氏の提唱により創設された。目的は二つ。「正しい野球の普及・発展」と「世界の子どもたちの友情と親善の輪を広げる」。1990年にロサンゼルスで第1回大会が開催されて以来、毎年夏、世界各地から子どもたちが参加し、野球を通じた国際交流事業を展開している。
今年の第6回WBCには8カ国・地域から同大会の卒業生計12人が出場した。各国・地域のナショナルチームの代表選手、スタッフを輩出。野球の技術向上だけでなく、白球を通じて友情を育む貴重な機会である。世界の子どもたちに、国境や文化の違いを超越した「学びの場」として定着している。
成田市での開催は2015年の第25回大会以来。11年前の卒業生である左投手・ドミニク・シェフラー(スイス)は千葉大会を通じて日本の野球文化に感銘を受け21年、佐倉高に短期野球留学した。23年にはレッズと契約し、スイス人初のMLB契約選手となった。WCBFは国際交流事業を通してさまざまな実績を残している。
今大会は午前中の野球教室に日本を含む世界11カ国から少年少女80人(海外50人、成田市内15人、全国枠15人)が参加。スロバキアが初参加であり、世界少年野球大会に参加した国・地域は累計で101となった。世界野球ソフトボール連盟(WBSC)選任のコーチ陣が指導し、野球の技術、スポーツマンシップを学ぶ。また、並行して国際交流試合が実施される。中華台北チーム(15人)が成田市内の6チームと対戦。野球を通じた国際交流に加えて、双方の野球技術を競い合うのが目的である。
午後には交流行事が開催される。ボウ
リング体験、写経・御護摩体験(成田山新勝寺)、プロ野球観戦(
ロッテ対
西武、ZOZOマリン)、JAL航空機見学(成田国際空港)が実施。子どもたちは日本の文化に触れ、国境を越えて友情を育む充実のプログラムとなっている。このほか特別企画として全国農業協同組合連合会の協力による「スポーツ栄養教室」を実施する。小学生の子を持つ保護者が対象。成長期に必要な栄養素や試合前におすすめの食事など、管理栄養士が講師になる。また、
ソフトバンク・
城島健司CBOによる「中学生野球教室」が行われる。成田市内の中学校野球部の生徒を対象に技術指導。2つのイベントは成田市民がターゲットで、世界少年野球大会成田大会が開催される上で、大きな効果となっている。
32回継続してきた意義

記者発表には多くの関係者、協賛企業、メディアが訪れた[写真=BBM]
登壇者のコメントは下記である。
▽王貞治(一般財団法人世界少年野球推進財団理事長、第32回世界少年野球大会成田大会組織委員会会長)
「今やワールドカップで大盛り上がりなんですけど、我々はやはり野球を愛好する者として、また青少年のために野球の輪を広げようということで頑張らなきゃいけないと意欲を強くしております。この成田大会で大いにまた野球の輪を広げていきたいなと思います。世界の各国・地域から子どもたちが集まります。その子どもたちの交流の場を見ていますと、本当にこの大会を開催してよかったと毎回、思わせていただきます。やはり子どもたちというのは本当に正直なので、10日間という短い期間ですけど、その間、子どもたちの触れ合いというのを見ていますと、純粋な気持ちこそが、世の中を支えるし、人間の輪を和やかなものにしてくれているんだなと思います。成田市の皆さんが、野球教室以外にも交流の場をたくさんつくっていただいているようですので、大いに期待して、子どもたちには大きなお土産を持ち帰ってもらい、その後も継続してSNSなどでつながりが広がれば、もっともっとこの輪の大きさ、厚みも変わってくるんじゃないかと、そのように思います。友情の輪を広げられるように、我々としては頑張ってまいりたいと思います」
▽小泉一成(成田市長、成田大会組織委員会顧問)
「世界少年野球大会は子どもたちが野球を通じて友情を育み、互いの文化や価値観を理解し合うことを目的として開催されてきました。世界でも類を見ない崇高な国際交流事業であります。王理事長が長年にわたり掲げてこられた野球を通じた世界平和という理念の意義は、現在、国際社会が様々な課題に直面する今日だからこそ、ますます重要になっていると感じているところでございます。そして、この意義深い大会を千葉県成田市で開催していただけますことを大変光栄に感じております。平成27年にも本市において開催させていただいており、その際に参加した子供たちが野球を通じて心を一つにし、異なる国や文化への理解を深めながら笑顔で交流する姿が大変印象に残っております。大会に参加するすべての子どもたち、関係者の皆様が安全で快適に過ごし、素晴らしい思い出を持ち帰っていただけるよう、成田市民、企業、関係団体と力を合わせ『オール成田』で大会運営に取り組んでまいります。世界各国地域から集う子供たちが成田の地で友情を育み、未来へ羽ばたく素晴らしい大会となりますことを心よりご祈念申し上げます」
▽清野智(公益財団法人日本野球連盟会長、成田大会組織委員会委員)
「最初は野球を知らない子どもたちもいます。ボールを握ったことがないような子どもたちもいます。そういった子どもたちが集まって、最初は同じ国・地域から来た子ども同士でも初めての人でありますし、なかなか馴染みがないんですけど、それが1日目、2日目、3日目と時間が経過するにつれて成長が見えてきます。暑いですから、水しぶきの中で水を張った中で滑り込みの練習もするんです。最初はぎこちない子どもたちが10日間が経過しますと、ボールに慣れて、頼もしい感じに育ってまいります。私がこの大会に何回も参加していて感じますのが、最初は見ず知らずの子たちみんな集まってよそよそしいんですけども、最後は涙、涙、涙で……。抱き合ったり、メールのアドレスを交換したり、非常に素晴らしい光景が見られます。こういう子どもたちが大きくなれば、いま、世界で揉めているようなことはなくなるだろうと思えるような、そういう素晴らしいイベントであります」
▽榊原定征(日本プロフェッショナル野球組織コミッショナー、成田大会組織委員会委員)
「1990年、王会長とメジャーリーグのハンク・アーロン氏の親交により創設されたこの大会でございますが、今年で32回目を迎えるということで、これまでこの大会に参加した国・地域の数は先ほど、王会長から101カ国・地域とありましたが、本当に素晴らしいことだと思います。これまで30年以上にわたって世界に目を向けて、将来の野球選手あるいは野球ファンとなる子どもたちに対し、継続的に野球の振興、普及を図っておられるこの大会の意義というのは非常に大きいと思います。FIFAワールドカップが開催されていますけれども、国際サッカー連盟には211の国と地域が加盟しています。サッカー人口というのはいろいろ数字がございますけど、約2億7000人と言われています。それに対して野球はどうかと言いますと、この3月に開催されたワールドベースボールクラシックの参加国・地域は24チームです。野球の競技人口はいろいろな統計がございますが、約3600万人と、一ケタ違うんです。そういった意味で、世界に野球の輪を広げていく、しかもこれからの時代を背負う少年少女の若年層に野球の輪を広げる、本当に重要な役割だと思っています。我々NPBもいろいろな努力をしていますけれども、王会長をはじめとしたこの世界少年野球大会の役割というのは極めて大きく、大会を続けてこられた皆様方の努力に改めて敬意を表したいと思いますし、この大会の成功を心から祈念申し上げたいと思います」
ここからがスタート

王理事長と中畑評議員はWCBFの活動を通じて世界を明るくしていく[写真=BBM]
記者発表では途中、インタビュアーとして成田大会の組織委員会委員で、一般財団法人世界少年野球推進財団の評議員である
中畑清氏が登場。場を和ませるトークを展開し、登壇者だけでなく、協賛企業、メディアにもマイクを向けて、多くのエピソードを引き出していた。
記者発表後、王理事長は取材に応じた。
「自分が野球をやって、本当にいい人生歩ませてもらいました。プロ野球になると、楽しいというよりも、しんどいことのほうが多かったですけど、子どものときにあの球を追って、仲間同士でやったことが、すごく自分の思い出として残っています。だから子どもたちにも、仲間としてやるという体験をさせてあげたいと思っています。その中から、僕のように将来、野球を続けてくれる子が出てくればいいですけど、野球をやった子どもたちが、その後、大人になったときに、良き思い出として残してくれればと思っています。さきほどの記者発表でも榊原コミッショナーから話がありましたが、野球をやっている国というのはそんなに多くないんです。我々も長くやっていますけど、野球を世界に広めるためには、ここからがスタートだと思っています」
王理事長の考えに感銘を受け、賛同している中畑評議員は「(野球の普及・発展の)きっかけになる大会をいま、継続してやっていると思います。世界に広がっていくためのきっかけをつくる世界少年野球推進財団というのが今までなかったわけですから、それを設立して、徐々にこうして世界に広まってきているという実績を残しつつあり、これを継続してやっていくしかないんじゃないかなと思います」と、今後も尽力する姿勢を示した。
報道陣に今大会、成田滞在の日数を質問されると、王理事長は「全部というわけにはいかないでしょうけど、期間中はずっとおります。子どもたちの顔を見るのがね、楽しみです」と笑顔で話した。86歳。野球への情熱は、ますます高まるばかりである。
取材・文=岡本朋祐