期待以上の働き

貴重なリリーフ左腕として中日のブルペンを支える吉田
最下位に低迷する中日だが、明るい材料がある。2年目左腕・
吉田聖弥の覚醒だ。
社会人・西濃運輸からドラフト2位で入団した昨年は5試合登板にとどまったが、今年は4月中旬に一軍昇格すると、10試合連続無失点と好投。ビハインドの場面で投げていたが、首脳陣の信頼をつかんで「勝利の方程式」を担うセットアッパーに抜擢された。5月23日の
広島戦(バンテ
リン)で決勝打を浴びて黒星を喫したが、その後の登板で12試合連続無失点。145キロ前後の直球とチェンジアップのコンビネーションで、内角にどんどん突けるため、打者が踏み込めない。右打者に対して被打率.105。左打者にも被打率.185で、三振奪取率9.89。25試合登板で11ホールド、防御率0.76と期待以上の働きを見せている。
しっかり準備できている
端正な顔立ちで女性ファンが多いが、マウンド上ではピンチでも表情を変えずに淡々と投げ込む。気持ちの切り替えの早さも好投を続けている要因だ。6月30日の
阪神戦(甲子園)で今季2度目の失点を許したが、7月2日の同戦では1回無失点。同点の9回にマウンドに上がると、
坂本誠志郎をカットボールで三ゴロ、
熊谷敬宥もカットボールで空振り三振、
百崎蒼生は外角低めいっぱいの147キロ直球で見逃し三振と完ぺきな投球を見せた。
吉田は今年の好調の要因について、週刊ベースボールの取材で以下のように分析している。
「リリーフとして、どんな場面や起用であろうとゼロで抑えるのが仕事だと今は意気に感じています。ブルペンで落合さん(
落合英二、投手コーディネーター)にも『自分のペースでやれよ』と言われていて、気持ち的にもしっかり準備ができています。1年目の昨年は追い込んでから三振が取れなかったり、打たれる場面が多くありました。今はボール球を振らせる意識だったり、ここは決めに行っていいという頭の整理ができています。直球でもファウルを取れる自信がある。同じ球速帯でも何げない真っすぐと勝負に行った球は違うのでそこは意識していますね。何点差であろうと全力を尽くす。それで打たれても悔いのないように投げたいです」
打者との駆け引きを楽しみながら
2022年から4年連続50試合以上登板した
清水達也が今年は腰痛の影響で4試合登板にとどまり、守護神の
松山晋也につなぐセットアッパーに苦心していた中で、吉田の台頭は大きなプラスアルファだ。新人王の有力候補でもある。今年のセ・リーグは新人の
竹丸和幸、
田和廉(ともに
巨人)のほか、2年目以降では
浦田俊輔(巨人)、
工藤泰成(阪神)、
廣澤優(
ヤクルト)の活躍が光るが、吉田が今後もリリーバーで活躍を続ければ、タイトル受賞が見えてくる。
順風満帆な野球人生だったわけではない。佐賀の伊万里農林高でエースだったが無名の存在で、3年夏の大会は伊万里実業高、伊万里商業高との連合チームで登板したが、初戦で
コールド負けを喫した。西濃運輸に入社後は登板機会が少なく、退部を考えた時期もあった。
社会人4年目で頭角を現して中日にドラフト2位で指名された際は、「2位という高評価には驚きましたし、ホッとしています。西濃運輸にとって、地元の人気球団なので、楽しみです。同じ左腕の1位の
金丸夢斗投手へのライバル意識ですか? ないです(苦笑)。僕に期待してもらっているのはありがたい。そこは意気に感じますが、自分を見失わないように頑張っていきたいです」とコメント。地に足がついている印象があったが、入団会見で4年間を過ごした社会人野球について聞かれると、こみ上げる感情を抑えきれなかった。「苦しい4年間でした。本当にいろいろな方々に支えられました。自分1人ではここまで来られなかったので、関わってくださった全員に感謝を伝えたいです」。涙が頬を伝っていた。
打者との駆け引きを楽しみながら、アウトを積み重ねる。理想の投手は幼少の頃に
ソフトバンクのエースだった
杉内俊哉(現巨人一軍投手コーチ)だ。「自分は子どものころからプロ野球選手にあこがれてプロ野球選手を目指したので、今度は自分が子どもたちにあこがれられる選手になる番です」。有言実行で、勝負どころのマウンドに立ち続ける。
写真=BBM