会社員としてやるべきこと

ENEOSを率いて2年目の宮澤監督は逆境の中、指揮官として勉強の日々を過ごしている[写真=矢野寿明]
これぞ、社会人野球の「意地」である。都市対抗最多12度の優勝を誇る名門・ENEOSは7月4日、侍ジャパン大学日本代表と強化試合(バッティングパレス相石スタジアムひらつか)を行い、5対3で勝利した(10回はタイブレークの練習でENEOSは10回表に1得点、大学日本代表は同裏に2得点)。第1回ワールド カレッジ ベースボールチャンピオンシップ(7月11〜15日)に臨む大学日本代表としては、最高の勉強の場となった。
ENEOSにとっては、再スタートへの試金石となる一戦だった。就任2年目の宮澤健太郎監督(明大)は言う。
「今回、都市対抗予選で敗退してしまったんですけど、このタイミングで大学日本代表と試合ができるのは、非常にウチの選手にとっては良い刺激になると思います。若い選手が多いので、同世代のメンバーとしっかりとした試合をして、良い勝負をしてもらいたいなと思っていました。エネオスの野球ができたのではないかと思っています」
西関東地区二次予選は代表2枠。ENEOSは第2代表決定トーナメント3回戦(6月11日)で三菱重工Eastに敗退し、2020年から続いていた連続出場が6年で途切れた。無念の予選敗退から約3週間をどのように過ごしてきたのか。宮澤監督は言う。
「我々はまず、社会人野球でありますので、会社員ということで会社に行く時間をしっかり取っていました。それから少しずつ練習をし始めて、今クールから試合が始まりましたので、しっかり戦えるように準備しようという話をして今日を迎えました」
宮澤監督自身は、この敗戦をどう受け止めていたのか。
「1回、ここでリセットされましたので、予選でできたこと、できなかったことを反省して、10月に社会人野球日本選手権の予選が控えていますので、そこに向けて、チームとしての方向性を定めていたところです」
品格を備えた集団

入社4年目の山田(左)が主将としてチームをけん引し、宮澤監督の期待も大きい。右は成瀬かおりマネジャー[写真=矢野寿明]
指揮官がミーティングで強調したキーワードがある。
「ENEOS野球部とは、どういうものか。どういうものを大事にしてきたかとか、そういった部分を皆で共通認識として把握して、選手たちに浸透させる。そこに時間を費やしてきました。先輩方が築いた伝統であったり、人として、社会人として、規律だったり、品格だったりを備えながらも、やるべきことを全力でやる。全力疾走をあらためて伝えて、われわれがそういう姿を見せることで、勝つこともそうですけど『アマチュア野球界を引っ張っていくような存在にならないとダメだよね』という話はさせてもらいました」
山田陸人主将(明大)以下、1プレーに魂がこもっていた。当たり前のことを当たり前に、全員がやるべきことを徹底する。カバー
リングも、最後まで決して手を抜かない姿勢が印象に残った。地道な作業の反復であるが、こうした隙のないチームが接戦を制するのだ。
2026年シーズンは続く。昨年は社会人野球日本選手権の出場を逃しており、秋へ向けた相当な意気込みを語る。
「ここでもう1回リセットして、気持ちを新たに進んでいます。そのすべてが悪かったとは思っていないので、良いものは続け、悪いことをうまく良い方向に導いて、日本選手権予選に向かっていきたい。もうワンランク、レベルアップして、 チーム力が上がったところを日本選手権本大会で見せたいと思います」
2026年のチームスローガンは『「必勝」〜For the Team やり遂げる〜』。野球部ホームページには意図が記されている。まずは「必勝」だ。
「どんな相手にも全力で挑み、目の前の一戦一戦に勝利するために、準備・努力を惜しまず最善を尽くします。さらに、己に打ち克つ『克己』の精神を持ち、日々の練習で技術を磨き、体力を鍛え、精神力を鍛錬し続けます。自分に負けない強さを追求し、チームの勝利に繋がる一歩を積み重ねていきます」
次に「〜For the Team やり遂げる〜」である。
「全員がチームの勝利に向けた自らの役割を深く理解し、その責任を果たすために全力を尽くします。どんな困難があっても最後まで諦めず、必ずやり遂げるという強い覚悟を持って挑みます。チーム目標の達成はもちろん、個人目標の実現にも妥協せず、準備・努力を重ね、一人ひとりが最高のパフォーマンスを発揮することで、勝利への道を切り拓いていきます」
伝統のブルーのユニフォームこそ、名門・ENEOSの強さの象徴である。都市対抗出場を逃しても、モチベーションが下がることなく、大学生に「模範」を示すことができた。生き残りをかけた必死さ。学生にとっては、アマチュア野球最高峰のプレーの一つひとつが学びの機会となった。ENEOSとしても次なるステップへ、ターニングポイントとなる1日となったはずだ。
取材・文=岡本朋祐