価値のあるホームラン

今季はここまでリーグ1位の20本塁打を放っている森下
巨人と首位タイで並ぶ
阪神だが、リーグ連覇に向けて本来の戦いができているわけではない。一時は最大貯金11あったが、交流戦で6勝12敗と苦戦。リーグ戦再開後も4勝4敗と波に乗り切れない。その中で、目を見張る活躍を見せているのが
森下翔太だ。
本拠地が広い甲子園で、本塁打を積み重ねていることに価値がある。6月30日の
中日戦で、1点差を追いかける6回に
カイル・マラーから左翼へ弾丸ライナーで2戦連続アーチを放つと、同点の延長10回一死で相手守護神・
松山晋也のフォークを完璧にとらえ、左翼へこの日2本目のサヨナラアーチを放った。ナインにウォーターシャワーで祝福を受けると、お立ち台で「決めてやるという思いだけで(打席に)立っていたので。最高の結果で終われて良かったです。甲子園で打つホームランが一番気持ちいい。これからもたくさん打ちたいと思います」と力強く宣言した。
有言実行で、すぐに結果を出す。7月2日の中日戦で、初回に
柳裕也のスライダーをフルスイングすると、打球は甲子園のバックスクリーン左へ。3試合連続アーチでリーグ最速の20号に到達。2位のチームメート・
佐藤輝明を4本差に引き離した。
驚異的な成長速度
驚異的な成長速度を見せている。新人のときからクリーンアップに定着し、昨年は全143試合出場で打率.275、23本塁打、89打点と自己最高の数字をマーク。本塁打、打点はいずれも佐藤輝明に次ぐリーグ2位の数字で、自身初のベストナインを受賞した。今年3月のWBCでは侍ジャパンに選出されたが、
大谷翔平(ドジャース)、
鈴木誠也(カブス)らメジャーのスター選手たちの前でも堂々としていた。
阪神前監督の
岡田彰布氏は週刊ベースボールのコラムで、「彼は『らしさ』満開といった感じやね。ここという場面で必ず結果を出す。これは阪神に入団したルーキーのときからそうやった。どの打順でも必ずチャンスで回ってくる。こういう選手は必ずいるのよ。そこで打つ、結果を残すから『勝負強さ』のインパクトを植え付ける。3月3日の阪神との強化試合でも走者がたまったところで
井端弘和監督は森下を代打で起用。そこでしぶとくタイムリーを放ち、侍ベンチに勝負強さを示した。本戦に入ってのここ一番。森下には『期待大』ですな」と話していたが、その予言が的中する。途中出場した準々決勝・ベネズエラ戦で3回に
レンジャー・スアレス(フィリーズ)のチェンジアップをすくい上げ、左翼席に運ぶ勝ち越し3ラン。試合はその後に逆転負けを喫したが、大舞台に強いことを証明した。
好球必打でチームを勝利へ
若さゆえの苦い経験も糧にしている。6月6日の
楽天戦(甲子園)で、5回に空振り三振を倒れた際に、審判の判定に暴言を吐いたとして自身初の退場処分を言い渡された。野球評論家の
廣岡達朗氏は「選手の側も審判を追い詰め過ぎると相手も人間だ。感情的になる。得なことは何ひとつない。阪神の森下翔太はストライク、ボールの判定に不満を唱えたことで退場処分を受けた。あの場面は『今のボールは入っていますか?』と聞いて『ギリギリ入っている』と言われれば、矛を収めればいいのだ。私は森下の“逃げないバッティング”を高く評価しているが、彼もまだまだ勉強だ」と指摘していたが、その後の打席では際どい球をストライクと判定された際に深呼吸したり、一度打席を外して素振りするなど気持ちを切り替えようとする姿勢が見られる。
今年は尊敬する先輩と打撃タイトル争いでしのぎを削っている。佐藤輝は打率.338、16本塁打、49打点に対し、森下は打率.305、20本塁打、47打点。打率は佐藤輝と差が開いているが、数字が上下動するために逆転の可能性がまだまだ十分にある。三冠王は決して夢物語ではない。
もちろん、最も手に入れたいのは球団史上初のリーグ連覇だ。チームが勝たなければ喜びも半減する。24、25年とリーグ最多の12死球を受けたが、今年は早くも10死球。相手バッテリーのマークは日に日に厳しさを増している。それでも甘い球は逃さず、一振りで試合を決める――。森下の豪快なスイングが、阪神をリーグ連覇へ導く原動力になる。
写真=BBM