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【高校野球】古豪・横浜商高が「逆襲」をテーマに掲げる理由

 

感慨深い勝利の校歌


横浜商高は荏田高との2回戦で勝利。主将・平本[左端]はスタンドの応援に感謝を示した[写真=BBM]


▽神奈川大会2回戦(7月10日)
横浜商高9-2荏田高(7回コールド)

 横浜商高は荏田高との2回戦を9対2の7回コールドで初戦突破を果たした。昨年7月10日。横浜栄高との1回戦で無念の敗退を喫してからちょうど丸1年である。2024年秋の新チームから横浜商高を指揮する廣濱優監督は試合後、安堵の表情を見せた。

「この1勝するまでに1年間、長かったなというのはあります。ずっと学校でも校歌を歌ってきましたが、それがこの夏の大会、公式戦で経験できるというのは、当たり前じゃないんだよということを話しながら活動してきましたので、今日の1勝は大きかったと思います」

 高校通算2本目、公式戦初アーチ(右越え2ラン)を放ち、勝利に貢献した三番・今井裕也(3年)は笑顔を見せた。今井は横浜商高の伝統の応援歌『青い稲妻』を背に打席に立つ。

「夏に1本出て、本当にうれしい気持ちでいっぱいです。昨年は1回戦で負けてしまって、校歌を歌えなかったんですけど、やっぱり歌えるという喜びをすごく身に染みて感じました。監督さんからは、部員全員が同じベクトルを向けるようにと日頃から言われています。この夏は過去一番と言っていいほど、チームとして仕上がっていると思います」

 廣濱監督は横浜商大高、東京情報大を経て、16年に横浜商高に赴任し、18年秋から野球部の副部長、部長を歴任してきた。古豪・Y校を指揮するのは、重い責任があるという。

「プレッシャーはかなりありますけど、その分やりがいもあるというか、光栄に思います。130年続くユニフォームを着ていますので、それなりの覚悟でグラウンドに立っています。この子たちにも、常に誇りとプライドを持って活動するように指導しています」

 伝統のブルーのユニフォームの左胸には「Y」が刺繍されている。横浜商高の指揮官として夏初勝利。廣濱監督としても、感慨深いものがある。

「ホッとしたというのが一番ですね。でも、これに満足せず、一つひとつ、一戦必勝というか、1試合1試合を総力戦で、これが最後だというぐらいの気持ちでやっていきたいです」

下から這い上がる決意


廣濱監督は2024年秋からY校を指揮する。昨秋の新チーム結成以来のモットーは生徒が考案した「逆襲」である[写真=BBM]


 昨秋の新チーム結成時から「逆襲」をモットーに掲げてきた。昨夏も四番・三塁で先発出場した二番・三塁の主将・平本亜門(3年)は意図を明かす。この試合は2安打2打点の活躍だった。

「昨夏は1回戦で負けたので、一番下から這い上がっていくという意味を込めました。ベンチにある千羽鶴は3年生1人、2年生1人、1年生2人の女子マネジャーが作ってくれました。いつも目に入ってきますから、めっちゃ、大きな力になっています」

全員で36年ぶりの甲子園へ


今春の地区予選ではベンチ入りした投手の深谷は今夏、応援団長に立候補した[写真=BBM]


 スタンドの控え部員も含めて92人が一つになっている。Y校は一体感のある応援も、夏の風物詩として定着している。応援団長に自ら立候補した深谷爽大(3年)は意気込む。

「自分たちも勝つためにやってきて、ベンチ入りのために練習してきたんですけど、あとは選ばれた20人を全力で応援するだけなので、全員で勝つ気持ちで、スタンドも声出しをしっかりやりたい。廣濱監督は選手をしっかり見てくれる指導者で、泉田(浩道)部長は自分たちの近くにいて、声かけで雰囲気を上げてくれる。結果で恩返ししたい思いがあります。自分たちも36年ぶりの甲子園まで行きたい。一つずつ勝ち上がっていきたいと思います」

野球部創部から130年


三番・今井は公式戦初本塁打を放ち、初戦突破に貢献した [写真=BBM]


 横浜商高硬式野球部は今年、創部130周年である。旧制一高が在留米人で組織されたYC&AC(横浜カントリー&アスレティッククラブ)と日本初の野球の国際試合を行ったのが1896年。この試合には、横浜商高の前身である横浜商業学校の生徒が応援に駆け付け、野球用具が贈られ、同年の野球部創部のきっかけとなったと言われている。

 今年6月13日にはYC&AC、東大野球部OB、横浜商高OBの3チームによる親善試合が横浜市内で行われた。また、同20日には野球部創部130周年の祝賀会が開かれた。野球部3年生の激励会も兼ね、卒業生約140人が出席。就任10年目の長谷部淳一OB会長は言う。

「Y校は地元の横浜市民の方々が、熱狂的に応援してくれる高校なんです。その代わり、いつも厳しい目で見られていることも忘れてはいけません。毎年、入学してきた1年生には、野球部の成り立ちなど、歴史の話をする機会があります。『Y』というマーク、学校の看板を背負っており、日頃の行動についても自覚を持つように言っています」

 長谷部OB会長は現役時代は投手で、関東学院大、電電東京(現NTT東日本)でもプレーした。高校3年生だった1977年夏には戦後初の神奈川大会決勝進出も、東海大相模高に惜敗し、甲子園にはあと一歩、届かなかった。79年夏から春夏計8回の甲子園出場に導いた古屋文雄監督から指導を受け、のちの黄金期の礎を築いた世代である。横浜商高は83年には春夏連続準優勝と「公立の雄」として神奈川をけん引してきたが、夏の選手権は90年、春のセンバツは97年を最後に甲子園から遠ざかる。23年夏には25年ぶりの神奈川大会4強進出と、古豪復活への機運が高まっている。

「130周年という記念すべき年にぜひ、できれば甲子園に行ってほしいですし、先ほども言いましたけど、市民の方々、応援団がいっぱいいますので、皆さんが喜ぶような成績を残していただきたいと願っています」

「ワイワイ野球」を貫くのみ


長谷部OB会長は現役選手の支援に尽力する[写真=BBM]


 卒業生からの強力バックアップを受け、廣濱監督は姿勢を正した。

「OBは熱いです。ありがたい存在です。OBが昨年、マスターズで甲子園に出場しているので、現役の子たちもなんとかそれに続いて頑張らないと、という思いはあります」

 最後に主将・平本は言った。

「夏のメンバーが決まった瞬間から、ベンチから漏れた同期の3年生は練習でサポートを率先してくれています。打撃投手もやってくれ、メンバー外がいて、初めて僕たちがプレーできているので、すごく感謝しています。『一緒に勝ち上がっていく』という話もしました。この代から復活したと思ってもらえるように、しっかり一戦必勝で勝ち進むつもりです」

 3回戦は第3シードの横浜隼人高との対戦が控えている。相手はどこであっても、先輩から受け継がれてきた「ワイワイ野球」を貫くのみ。Y校の「逆襲の夏」は始まったばかりだ。

取材・文=岡本朋祐
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