プロでも即戦力の期待

今季青学大からドラフト1位で中日に入団した中西
借金16と最下位に低迷している中日だが、7月は6勝3敗と上昇気流に乗って上位のチームとの差を詰めている。その要因が先発陣だ。エース・
高橋宏斗が不調によりファーム調整しているのは大きな誤算だが、
大野雄大、
柳裕也、
金丸夢斗、
カイル・マラーの4本柱に加え、40歳右腕の
涌井秀章も今月に入って安定した投球を続けている。
その中で、先発陣に食い込むためにファームで力を磨いている投手がいる。ドラフト1位右腕の
中西聖輝だ。アマチュア時代は「日本一請負人」と形容された。智弁和歌山高のときは夏の甲子園で全国制覇を飾り、青学大でもエースとして東都大学リーグ通算17勝を挙げてリーグ6連覇、明治神宮大会優勝を達成した。
プロでも即戦力として期待され、オープン戦で4試合登板して防御率2.16とアピール。開幕2カード目となった4月1日の
巨人戦(バンテ
リン)でデビュー登板を果たした。先発して5回1/3で6安打4失点とプロ初黒星を喫したが、すべての経験が成長への糧となる。5月4日の
阪神戦(バンテリン)に登板し、7回3安打3失点でプロ初勝利をマーク。初回二死満塁のピンチを招き、
前川右京に走者一掃の適時二塁打で3点を先制されたが、2回以降はピンチを招いても追加点を許さなかった。6四死球と制球に苦労したが、逆転勝利につなげた。
「初回に3失点してベンチに戻って、2回以降はどういう投球が有効か、自分の真っすぐがどこまで通用するのか考えていました。打線に助けてもらい、勝てて良かった、その一言に尽きます。タイガースのクリーンアップ(
森下翔太、
佐藤輝明、
大山悠輔)は怖いです。でも、怖がっていては勝負にならない。どういうふうに立ち向かうかが大事になると思っていました。一生懸命に腕を振りました。プロ3度目の登板。あとがないと思って勝負できました。結果として7回を投げられました。ガッツポーズした場面もありました。自分を出せたのは成長につながると思います」
総合力で勝負するタイプ
総合力で勝負する投手だ。140キロ台後半の直球にフォーク、カーブ、スライダー、フォークと変化球の質が高い。ファーム・リーグで6試合登板して3勝1敗、防御率0.79と別格の投球を見せているが、一軍で5試合登板して1勝2敗、防御率5.06。26回2/3を投げて30三振を奪い、奪三振率10.13と高いが、16四死球は多い。
決して制球が悪い投球ではないが、甘く入ったら痛打されるため慎重な投球になる。ファームでは球威で押し込めても、一軍の強打者はきっちり投げ切らなければ痛打を浴びる。15失点中11失点が初回で立ち上がりの悪さも大きな課題だ。プロの世界で白星を積み重ねる難しさを、肌身で感じているだろう。
「我慢ができる選手」
大卒で入団した先輩たちもこの壁を乗り越えてきた。大野はプロ入り前に左肩を痛めた影響で、プロ1年目は1試合登板のみ。柳も即戦力として期待されたが新人のシーズンは11試合登板で1勝4敗、防御率4.47に終わり、同期入団の
京田陽太(現
DeNA)が新人王を受賞した。
青学大の安藤寧則監督は、週刊ベースボールの取材で中西の活躍に期待を込めていた。
「この4年間で人間的にも、技術的にも大きく成長しました。プロの打者と対戦した際、洗礼を浴びる場面が見られるかもしれません。ただ、壁にぶち当たってから、課題を見つめ、考えて、修正し、レベルアップする姿が想像できるんです。なぜならば、気持ちの強い学生だったからです。我慢ができる選手だからです。大学入学前に右肘を手術して、復帰までのリハビリは先の見えない、大変な時間だったと思います。タイミングを見て、中西には『ブレていないか? オレは、ブレていないぞ!』と話してきました。それが何かと言えば、高校3年時に青山学院大学とご縁をいただいたとき、二人で約束した『4年後にドラフト1位でプロ入り』。中日さんとのご縁はまさに、本人がつかみ取った努力の結晶です」
プロ野球人生は始まったばかり。中日の未来を担うエース候補は心身ともにたくましくなった姿で、一軍のマウンドに戻ってきてほしい。
写真=BBM