5月10日から対外試合解禁

日大三高の三番で主将の田中は180cm100kgと立派な体格である[写真=BBM]
▽西東京大会2回戦(7月14日)
日大三高6-2府中西高
日大三高の主将・
田中諒(3年)はもがいている。府中西高との西東京大会2回戦。相手の右腕・峰岡昴光(3年)の緩急自在の投球に、タイミングを合わせるのに苦心した。1回裏は自らの犠飛で先制。その後、2安打を放ったものの、バットの先、当たり損ねで「自分のスイング」ができなかったと、3回戦進出を決めた試合後は反省が口をついた。
チームは不祥事により、日本学生野球協会の審査室会議で昨年11月3日から今年5月9日まで(アウトオブシーズンは除く)3カ月の対外試合禁止処分を受けた。春季都大会は出場辞退。2月中旬から約2カ月の活動自粛を経て、4月上旬に活動を再開した。5月10日からは対外試合が解禁。限られた時間の中で今夏を迎えた。決して言い訳はしないが、実戦不足は否めず、田中も苦しんでいる。チームは6対2で2回戦を突破。負ければ終わりのトーナメントにおいて勝って反省できるのは、今後の成長への糧になる。
需要が高まる「右の打てる捕手」

日大三高・三木監督(写真右)は主将・田中に期待を込めるからこそ、厳しい言葉を投げかける[写真=BBM]
ネット裏には、NPB4球団のスカウトが視察。初戦(2回戦)にも複数球団が足を運んでおり、注目度が高い。田中が熱視線を浴びるのは、なぜか。2つの理由がある。
準優勝を遂げた昨夏の甲子園では2本塁打。2024年春に完全移行した新基準の金属バットは低反発で、ホームランが出にくい状況となった。その中での「量産」には価値がある。
もう一つの要因は、新チーム結成の昨秋以降、捕手に転向したことにある。かつて守っていたポジションだが、高校ではチーム事情もあり、一塁が定位置だった。「右の打てる捕手」となれば、需要は高まる。
田中はこの日、あらためて「プロ志望」であることを明かした。昨秋の段階では意思を表明していなかったが、春先に家族、三木監督と話し合い、決意を固めたという。
2回戦を視察した
巨人・
木佐貫洋スカウトは「捕手はいきなりできるポジションではない。選択肢としてあるのは売りになる。打撃はインコースのさばきがうまい。主軸として引っ張っていくことが、自身の打撃でも良い面が出てくるはず」と話した。この日は日大三高・三木有造監督が「戦略上の理由」と、一塁で起用。視察球団は捕手の能力を確認したかっただけに、肩透かしを食らう形となったが、今後もチェックを重ねていくという。
持ち味は引っ張りの打球

府中西高との2回戦を突破。主将・田中(右端)としてチームをけん引する[写真=BBM]
不甲斐ない試合内容に試合後、三木監督の言葉数も少なかった。中1日で迎える次戦に向けて、三木監督は「明日は自分たちで練習しなさい、と。私は何も言いません。自分たちで何とか切り開かないと。自分が言ったところで、と思うので……」と、あえて距離を置くことを明かした。指示待ちではなく、自らで考え、実践しなければ打開策は見つからない。田中も「練習して、雰囲気を上げていきたい」と、主将としての危機感を語る。
16日には、世田谷学園高との3回戦を控える。チームの勝利を大前提に、こう語る。不振を脱出する上で、理想の打撃を語る。
「1本、強烈なヒットというか、強い当たりが出れば、気が楽になります。センターからレフトへの強い打球が自分の持ち味。引っ張りの強い打球が打てればいいなと思います」
あらためて最後の夏の抱負を話した。
「自分の中では『甲子園に行く』という目標はあるんですけど、一戦一戦、戦っていくしかない」
日大三高のモットーである「ガッツ、気合、根性」に原点回帰する。主将・田中は苦しんだ分だけ、これからの野球人生の財産にする。時間があれば一人、黙々とバットを振ってきた。小倉全由前監督時代からの「練習は嘘をつかない」を胸に秘め、万全の準備で一発勝負の夏の戦いに挑む。
取材・文=岡本朋祐