週刊ベースボールONLINE

HOT TOPIC

佐々木麟太郎がマーリンズ入団を決断した理由

 

揺るぎないポリシー


約45分の記者会見は決意表明の場だった[写真=BBM]


 スタンフォード大・佐々木麟太郎(2年)はなぜ、マーリンズ入団を決断したのか。38社68人の報道陣が集結し、花巻市内で行われた7月19日の進路表明会見で明らかとなった。

 佐々木は昨年10月23日のNPBドラフトでソフトバンクから1位指名を受けた。アメリカ現地時間7月12日には、MLBドラフトでマーリンズから8巡目(全体235位)指名。佐々木にはNPB、MLB、そして大学在学(9月から3年生)と3つの選択肢があった。交渉期限はMLBがアメリカ東部時間27日の午後5時、NPBは31日と迫っていた中、18日までにマーリンズ入団を決断。同日、代理人を通じ、ソフトバンクに対して入団の意思がない旨を伝えた。

 決断する上での揺るぎないポリシーがあった。

「失敗したか、失敗しなかったかじゃなくて、やっぱり挑戦したか、しなかったかっていうところで自分自身に問えるような、そして、こういう生き方を見てもらえるような選手、人間になりたいという中での決断だったので、どういう結果になるか分からないですけど、この選んだ道、この覚悟をしっかり責任をまっとうした野球人生にはしていきたいなと思っています」

 最終的な決め手は何だったのか。

「日本の野球が良かった悪かった、アメリカの野球が良かった悪かったという判断基準は自分の中にはなかったです。どちらの国も素晴らしい野球文化だと思うので、自分の中ではどちらに行っても、どこで野球するに関しても、何も不安もなかったですし、それが自分の中で判断基準だったか否かというところで、違うと思います。自分が置かれている環境の延長線上で、同じ国で挑戦したかったというのもありますし、年齢の関係上、自分自身もいつ野球人生が終わるかもわからない中で、今、自分自身が目標にしている環境(メジャー)に一番近い場所でプレーさせていただきたいなという気持ちで、最終的に選ばせていただいたところでした。個人的にやっぱりアメリカで挑戦したかった。まず、これが一番ですし、やっぱり年齢的にも、先ほども言っていますけどいつ野球人生が終わるかも分からない、保証もない野球人生です。年齢が上がっていくということは、自分自身の体のピークもいずれ来て、それがだんだん落ちていく可能性もある。若いうちから自分自身の年齢も考慮した上で、自分自身が目標にしている一番近い目標から、一番近い環境で挑戦させていただきたかったなという思いが、大きな一つの選択理由です」

 指名順位は「判断基準」ではなかったのか。NPBドラフトは12球団同時入札における第1回入札でDeNAとソフトバンクの2球団競合というトップ評価を手にした一方で、MLBドラフトは8巡目と、双方では契約面などでも、大きな開きがあると言われている。

「指名順位に関しては、大体自分自身もある程度、予測という中で、自分の中でもこのレベル、自分自身もドラフト上位レベルではないと思っていました。それに関しては1日目(4巡目まで135人が指名)で呼ばれなかったからどうとか、指名順位がどうからだからという中では、自分の中では選択肢において感じるとこはなかったんじゃないかなと思っています。やっぱりご指名いただいたこと、こういうご縁をいただいたことに対して、自分自身も本当に感謝の気持ちしかないですし、8位だから、1位だから、そういうのは関係なく、自分自身の生き方として、どこでこの指名を受けたという宿命に対して、自分自身がどうやっていくかが大事だったんじゃないかなと思っています」

菊池雄星と大谷翔平の存在


記者会見には38社68人の報道陣が詰めかけた[写真=BBM]


 なぜ、契約までの交渉期限を残したこのタイミングでの発表になったのか。MLBドラフト以降、マーリンズからは熱烈なラブコールがあったという。

「私自身もマーリンズさんの球団さんに対して本当に素晴らしいイメージしかなかったですし、ドラフト直後もマーリンズさんサイドのGMさんからもお電話いただいて『こういう決断になることを理解している中でドラフト指名していただいた』ということ、そして『もし来ていただけるのであれば、われわれとしてもあなたを何とか結果を出せる、期待に応えられるような選手にまで育て上げたい』と、心からの意志をいただきました。マーリンズさんからも、もし入団チャンスがあるってことであれば『すぐにでも』っていうところの部分でプッシュもあった中で、ソフトバンクホークスさんサイドに対してもギリギリまでお待たせするというのは、自分の中では人情としてどうか、と。決断を伸ばすことで、他の選手の獲得なども含めてリスクもあったんじゃないかなと思うので、双方の日程面などの事情でこのタイミングになったと思います」

 決断する上で先輩2人の存在も大きかった。花巻東高の先輩・菊池雄星(エンゼルス)と大谷翔平(ドジャース)である。

「自分自身も今やっと、チームに所属するスタートラインに立ったばかりですし、一番下から這い上がる形になるので、本当にどうなるかも分からない状況なんですけども、間違いなく決断の中には、お2人の存在というのは自分の心の中にはあったんじゃないかなと思っています。雄星さん、翔平さんにも、小さいころからずっと気にかけていただいて、今日に至ったという形なので、自分としても決断する中で、何とか近い世界から一歩ずつ這い上がって、同じ舞台に並べるような選手になりたいという思いでした。本当にお2人の存在というのが間違いなく、私は私のこの人生のキャリアを作り上げてきていただいたんじゃないかなと思っていますし、私自身の人生の中でのカギになるような大先輩だったんじゃないかなと思っているので、お2人には感謝の気持ちでいっぱいです。本当に下からの生活になるので、まだ肩を並べるような選手でもありませんし、立場でもないんですけど、そういうところに並べるように目指して、一生懸命頑張りたいという覚悟です」

 2人には連絡済みである。

「雄星さんには、いい球団だ、ドラフト指名されたのも、入る球団も素晴らしい、日米通して素晴らしい球団だったんじゃないかという話をさせていただきました。マーリンズという球団さんに対して、若手選手が活躍できる場、チャンスが非常に高いチームなんじゃないかとのお話もさせていただきました。雄星さんは『麟太郎がメジャーに上がってくるときまで、自分自身も現役でいられるように頑張りたい』とメッセージもいただいたので、うれしい気持ちでいっぱいです。翔平さんからもご連絡させていただいて、お互い頑張りましょうというようなお話もいただいたので、本当に自分自身は恵まれているなと思っています。あらためてですけど、何とか下から一歩ずつ這い上がって、肩を並べられるような舞台にまず追いつけるように、頑張っていきたいなと思っています」

前例もない生き方


 相当、険しい道であることは覚悟している。だが、マインドセットが充実している佐々木はしっかり「未来予想図」を描いている。

「自分自身、大した人間ではないですし、野球選手としても未熟なんですけど、地元花巻、そして岩手に対して、何とか野球選手としても、人間としても恩返ししたいという気持ちでいっぱいです。こういう決断をしたからこそ、何とか結果が伴って、そして少しでも地元に明るいニュースを運べるような選手になれるように、期待に応えられるようになりたいです。アメリカでも地元魂、そして、日本人としての侍魂を忘れずに頑張っていきたいと思っています。自分自身、少しとがったプレーヤーなんです。粗削りですし、どちらかと言うと長打、ホームランといった極端な選手なんですけど、逆にそういう長所をしっかり伸ばしながら、こういう生き方でもチームに貢献できるんだ、と。日本人として、こういう前例もない生き方の中でも、必ず這い上がってこられるような、こういう生き方を、もしメジャーリーグでプレーできるのであれば、示していきたいなというふうに思っています」

 佐々木は近く渡米し、メディカルチェックなどを経て、契約後はマイアミの球団施設でのトレーニングに合流するという。現地での入団会見の有無について問われた取材担当窓口のマネジメント会社であるナイスガイ・パートナーズの木下博之代表は、現状を説明した。

「華々しい渡米というわけではないと思うので、8巡目という順位が決して低いとは思わないです。ただ、ドラフト1巡目ではないので……。本人はその厳しい選択をして、これから頑張るということなので、ぜひ、その挑戦を応援してあげてください」

 スタンフォード大は「休学制度」を利用し、今後しばらくは競技者としての活動に専念する。あくまでも大学卒業を目指すスタンスは変わらない。会見冒頭で語った「『新たな道の開拓』が佐々木麟太郎の使命、宿命だと心に刻み、アメリカで頑張ってまいりたいと思います」。21歳の「決断」を「正解」にする長旅に出る。
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング