大谷翔平以来の快挙

開幕から7連勝と高卒3年目で才能が開花した前田悠
首位を快走する
ソフトバンクを牽引しているのが、高卒3年目の
前田悠伍だ。7月19日の
ロッテ戦(ZOZOマ
リン)に先発登板して7回4安打無失点の快投。開幕から無傷の7連勝は、高卒3年目以内で2015年の
大谷翔平(当時
日本ハム、現ドジャース)以来11年ぶりの快挙だった。
目を見張る成長曲線を見せている。大きく進化したのは直球の質だ。平均球速は145キロと球速表示は速くないが、打者を押し込む球質でストライクゾーンにテンポ良く投げ込む。落差の大きいフォーク、緩急をつけるカーブ、キレ味鋭いスライダーと変化球も質が良いため、連打をほとんど許さない。ロッテ戦では7回に一死二、三塁のピンチを招いたが、
井上広大を144キロの直球、
佐藤都志也をフォークで連続三振。先発投手が7イニング以上を投げ、自責点を2点以内に抑えた試合で記録されるHQS(ハイクオリティスタート)を5試合連続で達成した。
10試合登板で7勝0敗、防御率1.55。今年はエースの
リバン・モイネロが左肩周辺の違和感で一軍登板がないが、前田がその穴を見事に埋めている。今年の新人王最有力候補であることは間違いない。他球団のスコアラーは「もともと良い投手でしたが、直球が格段に良くなったことで攻略が一気に難しくなった。ピンチになっても制球力が乱れないし、ギアが一段上がる。これからさらに良くなると思いますよ。日本のエースになるんじゃないですかね」と絶賛する。
現状に満足しない姿勢
現状に満足せず、目指す理想が高い。昨年はウエスタン・リーグで新記録の46回2/3連続無失点を達成したが、「課題のほうが多かったですね。二軍では、たとえ真ん中にボールが行ってもファウルになったり、空振りしてくれることもあります。結果だけ見れば、アウトや三振ですが、一軍基準で考えたとき、これはヒットにされているな、ファウルじゃなく前に飛ばされているという評価をしていました。抑えられている分にはいいですけど、一人ひとりの対戦、一球一球を振り返ったとき、まだ一軍では抑えられるレベルに達していないと感じていました」と週刊ベースボールのインタビューで語っていた。
一軍では3試合登板のみだったが、プロ初勝利がペナントレースで重要な白星となった。7月13日の
楽天戦(楽天モバイル)で6回4安打無失点の快投。チームが3連敗中、しかも3試合連続完封負けと打線がつながらない中で流れを変えた。大物の片鱗を見せる光景も。5点リードの6回無死一、二塁で打席に
村林一輝を迎えた際に、楽天のチャンステーマが流れて球場のボルテージが高まると、マウンド上でほほえむような表情を浮かべた。「相手の応援も大きくなってきた中で、なにか、めちゃくちゃ楽しかったので。それで自然とやってやろうという気持ちになった」。村林の三塁正面への強烈な打球は三重殺で無失点に。
小久保裕紀監督は「トリプルプレーで抑えるところが持っているやつだなと」と称えた。
背番号41の先輩からの学び
シーズン終了後も投球フォーム、直球の質を改善する必要性を感じたため、球界を代表する右腕から学ぼうと、貪欲に行動に移した。
「オフの自主トレは背番号41を引き継いだ
千賀滉大さんとやらせてもらうことになりました。初勝利のときも連絡をさせてもらい、10月にはご飯も一緒に。そこで手術を受けた左肘の状態や、負担が掛かりにくいフォームの話をしました。昨年も12月に3日間だけ一緒に自主トレをやらせてもらいました。野球ボールは小さいのでどうしても腕で投げられちゃうので、少し大きいボールを使って体全体で投げる感覚を養って、それを野球ボールで再現できるようにというトレーニングでした。やっぱり千賀さんは真っすぐが速いですし、力もある。そこをうまく吸収したいのと体の使い方も勉強したいです」
ソフトバンクはかつて
和田毅、
杉内俊哉(現
巨人一軍投手コーチ)が球界を代表する先発左腕として活躍した。前田も絶対的なエースになれるか。その可能性を十分に秘めている。
写真=BBM