集中力を研ぎ澄まして大仕事

今季、古巣・中日に復帰してベテランらしい仕事を果たしている阿部
決して雄弁ではないが、グラウンドで見せる生き様が若手のお手本になっている。
楽天から戦力外通告を受け、今年から中日に復帰した
阿部寿樹が見事な活躍を見せている。
7月21日の
ヤクルト戦(神宮)で、休養の
ミゲル・サノーに代わって四番に抜てきされると、自身初の1試合2本塁打で5打点の大暴れ。同点で迎えた6回一死一、二塁で左翼席へ2号3ランを放つと、再び同点に追いつかれた8回無死一塁で、3ボール1ストライクから今季自責点0だった
ヘスス・リランソの直球を強振した打球は左中間席へ。勝ち越しの3号2ランで勝負を決めた。
4年ぶりに古巣に復帰した今季は52試合出場で打率.278、3本塁打、19打点をマーク。代打で27打数9安打、打率.333、出塁率.441と目を見張る活躍を見せ、スタメンで起用された際もきっちり仕事をする。「五番・一塁」で起用された5月22日の
広島戦(バンテ
リン)で4安打の固め打ち。初回二死一、二塁の好機で先制の右前適時打を放つと、勢いに乗った打線はこの回に4得点を奪った。その後も左右に安打を打ち分け、試合後のお立ち台で、「柳(裕也)にいつも僕が投げているとき、打たないと言われていたので、なんとか打ててよかったです」とコメントしてスタンドの笑いを誘った。
集中力を極限に研ぎ澄まし、大仕事をする。6月5日の
西武戦(バンテリン)では0対0で迎えた9回二死一、二塁の好機に代打で起用され、
高橋光成の154キロ直球を右前にはじき返すサヨナラの適時打。楽天時代の24年8月21日の
ソフトバンク戦(楽天モバイル)で放って以来のサヨナラ打で、ベンチから飛び出したナインから手荒い祝福を受けた。得点圏打率.419と驚異の数字を叩き出している。
パで過ごした3年間は得難い経験
「マスター」の愛称で親しまれる36歳のベテランは社会人野球・Hondaから中日にドラフト5位で入団すると、プロ4年目の19年に自身初の規定打席に到達して打率.291、7本塁打、59打点をマーク。翌20年も自己最多の13本塁打、61打点を記録した。22年オフに
涌井秀章との交換トレードで楽天へ。パ・リーグでプレーした3年間で得られた経験が野球人生の財産になっている。週刊ベースボールのインタビューで、以下のように語っている。
「バッターで言えばスイングが違うというか、どんどん仕掛けていく。スイングが強く、それは目に見えて分かりました。勉強になりましたし、そこを目指してやっていかないとパ・リーグでは通用しないなと。パの打者は怯(ひる)むことなくどんどん振っていく。野球以外で言えば移動が大変。パは飛行機での移動が多く、移動だけで疲れました(笑)」
「僕ももともと初球はあまり振らないバッターだったんですが、パ・リーグへ行ってからは見ても仕方がないと思うようになりました。見ていても始まらないし、今の時代は球速があって、変化球もすごいですし、見たいは見たいですけど、見ていたらすぐに追い込まれてしまいますから」
「毎日試合に出ることで気持ちも張る」
年齢を積み重ねたことで、体に変化が出てきていることを実感している。
「何も変わっていないことはないと思いますけど、疲れやすくはなりましたね。おそらく試合に出なくなり始めてからだと思います。試合にずっと出ているときのほうが気持ち的に疲れないことが分かりました。よく30歳を過ぎてから、あるいは35歳から(体力が)落ちてくるとか言われますけど、年齢じゃないと思い始めました。試合に出られなくなって落ちていくんだなと。毎日試合に出ることで気持ちも張るし、リズムも生まれる。出たり出なかったりではリズムが定まらないし、出番を待ってベンチでドキドキしているから体力も落ちていくんだなと」
チームは借金17で最下位に低迷しているが、3位のヤクルトに7ゲーム差と逆転でのCS進出を目指す。残り2試合となった前半戦、勝負の後半戦で逆襲へ。百戦錬磨のマスターの存在は心強い。
写真=BBM