4月下旬から長期離脱

阪神打線の「一番・中堅」に座る近本は欠かせない存在だ
7月31日から後半戦がスタートする。
巨人と同率首位で並ぶ阪神が熾烈なデッドヒートを勝ち抜くためには、ケガから復帰したリードオフマン・
近本光司の活躍が不可欠だ。
「一番・中堅」でスタメン出場する。当たり前の光景がスコアボードから消えてしまったのは、4月26日の
広島戦(甲子園)だった。8回に左手首に死球を受けてその場に倒れ込んだ。苦悶の表情を浮かべて途中交代。病院で「左手首の骨折」と診断されて登録抹消に。長期離脱を余儀なくされた。
近本不在の状況で、
高寺望夢、
福島圭音、
立石正広、
岡城快生が一番で起用されたが、なかなか固定できなかった。リハビリを経て攻守の要が復帰したのが、7月11日の
ヤクルト戦(甲子園)。近本は「一番・中堅」がよく似合う。22日の
DeNA戦(甲子園)では、復帰後初打点をマークするなど猛打賞の活躍。初回にかつてのチームメートだった
藤浪晋太郎から右前打を放つと、1点差を追いかける6回一死二塁でサイド左腕・
岩田将貴のスライダーを中前にはじき返す適時打で同点に追いついた。さらに、8回も先頭打者で右翼線に二塁打で出塁し、
森下翔太の右犠飛で決勝の本塁生還。試合後のお立ち台で「帰ってきました」と呼びかけると、スタンドから大歓声が。「すごい力になります」と笑顔で感謝の思いを口にした。
ほかのチームでは味わえない歓声
昨オフにFAで去就が注目された際、5年契約で残留を決断。熟考した末で決め手となった大きな理由が、阪神ファンの大歓声だった。近本は週刊ベースボールのコラムで、以下のように語っている。
「プロ野球選手として『これがプロ野球だ』と思えるのは何なのだろう、と……。そう熟考したとき、自分のプレーではなく『あの歓声』が僕の中に浮かんできたんです。このコラムでもお話をしていますが、2023年の日本シリーズ第4戦の9回裏です。僕は三塁走者で時間は22時を過ぎていて、歓声だけの応援になっていました。満塁で一打サヨナラの場面。悠輔(
大山悠輔)がサヨナラヒットを打ったあの打席です。あのときの地響きのような歓声は今でも僕の体の中に残っています。昨年の
ソフトバンクとの日本シリーズでもなかった感覚でした」
「あの23年の甲子園での歓声は、ほかのチームでは味わえないでしょうし、毎回、日本シリーズに出場してもあの感覚は味わえないでしょう。昨年は僕らがそういう展開に持っていけなかった。でもどこか、あの歓声を求めている自分がいたんですね。これはもしかしたら選手としてはマイナスの面(ダメなこと)なのかもしれません。皆さんが作り出してくれる歓声をモチベーションにしてはいけないと思っている自分もいるので(笑)。昨年は独走で優勝したので、実際に23年のときのようなヒリヒリした場面もそうはなかったのも事実でした。その中で、これからも阪神で『これやばいな、という歓声の中でプレーできたら』と。残された短いプロ野球人生で、あの瞬間をもう一度求めていくのかなと思います」
あらゆる面で高いチーム貢献度
攻守でスピード感あふれるプレースタイル、広角に打ち分ける高い打撃技術。31歳と脂が乗り切った時期を迎えている。近本が故障から復帰後は8勝6敗。他球団の首脳陣は「彼がいるだけで阪神は別のチームに変わる。初回から塁に出て走ることで打線全体が勢いに乗るし、外野も守備範囲が広いだけでなく、安打の打球でキャッチする仕草を見せるフェイクがうまい。走塁を含め、技術が他の選手と違います」と語る。
入団以来7年間で6度の盗塁王を獲得。2021年に最多安打のタイトルを獲得している。昨年は球団の生え抜き最速で通算1000安打に到達した。守備でもゴールデン・グラブ賞を5度受賞。輝かしい実績が並ぶが、記録に現れない点でもチームへの貢献度が高い。
今夏は母校の社高が3年ぶりの甲子園出場を決めたことも大きな刺激になっているだろう。球団史上初のリーグ連覇へ。大歓声を背に受け、近本が躍動する。
写真=BBM