攻略が難しい投手

今季は7月31日現在、9勝を挙げ、先発陣の軸になっている井上
初出場した球宴で目を輝かせていた。
巨人・
井上温大は東京ドームで開催された7月28日の第1戦に登板して1回4安打1奪三振2失点。
万波中正(
日本ハム)に右中間へ二塁打を打たれると、
近藤健介(
ソフトバンク)、
フランミル・レイエス(日本ハム)、
栗原陵矢(ソフトバンク)に適時打を浴びた。お祭りの舞台で生命線の直球を内角へ投げづらいため、外角に偏った配球になるので致し方ない部分があるが、パ・リーグの強打者相手に真っ向勝負を楽しんだ。試合前には同じ左腕の
大野雄大(
中日)、
高橋遥人(
阪神)にツーシームの握り、トレーニング方法などを積極的に質問する姿が。向上心旺盛な左腕は大きな収穫を得られただろう。
今年は春季キャンプを三軍で迎えた。左肘痛からのリハビリを経て、ファームリーグで3試合に登板して2勝0敗、防御率0.53と状態を上げて4月5日に一軍昇格。先発ローテーションに定着して、前半戦で早くも自己最多の9勝をマークしている。6月5日の
ロッテ戦(東京ドーム)では111球を投げ切り、無四球2失点で自身初の完投勝利。8回まで無失点に抑え、9回二死一塁で
ネフタリ・ソトに2ランを浴びて初完封勝利は逃したが、
杉内俊哉投手チーフコーチは「2ランを打たれたあとに怒りが見えた。すごく大事なこと」と左腕の成長ぶりを称えていた。
他球団の打撃コーチは「球威十分の直球が内角に決まるとなかなか打てない。カットボール、フォーク、スライダー、ツーシームと変化球の質もいい。以前は走者を背負った場面で制球を乱す場面があったが、今年はピンチの場面でも落ち着いて直球の出力を上げてくる。攻略が難しい投手であることは間違いない」と警戒を強める。
不完全燃焼に終わった昨季
紆余曲折を経て、今がある。高卒2年目の2021年に左肘の手術を受けて育成契約となった。ファームで好投を続けて翌22年に支配下昇格すると、24年は先発、中継ぎでフル回転して25試合登板して8勝5敗2ホールド、防御率2.76でリーグ優勝に貢献。先発で6月以降に7勝をマークしてエース候補に名乗りを上げたが、自身初の開幕先発ローテーション入りを果たした昨年は要所で踏ん張れない登板が続いた。20試合登板で4勝8敗、防御率3.70。シーズン終盤に左肘痛を発症し、不完全燃焼に終わった。
試合をつくるのがうまいタイプ
今年は同学年のドラフト1位左腕・
竹丸和幸が入団。希望していた背番号「21」を背負う左腕の存在は当然意識するだろう。球団OBの
堀内恒夫氏は5月下旬に週刊ベースボールのコラムで、以下のように評している。
「井上こそ試合をつくるのがうまいタイプだ。フォークの握りで投げるチェンジアップが武器である。今季の井上は3つの勝ち星すべてを
DeNAから挙げている。お得意さんをつくるのはいいことだが、3つの敗戦のうち2つは
ヤクルト。カモと苦手がはっきりと分かれているようではいささか物足りなさが残る。井上は、2000年にドラフト1位で社会人(東芝)から入団した
高橋尚成を彷彿とさせるサウスポーだ。高橋は巨人に10年間在籍、79勝(66敗)をマークしたあとに4年間、MLBで先発とリリーフの両方で活躍している。巨人は竹丸、井上のサウスポーコンビを大きく育てることで、V奪回へ向けた盤石な体制を整えてもらいたい」
前半戦の成績は15試合登板で9勝5敗、防御率2.11。阪神と同率首位で折り返す原動力になったが、対戦成績を見ると改善の余地がある。DeNA戦は5試合登板で5勝0敗、防御率0.79と相性の良さを見せ、中日戦も2試合登板で12回2/3を投げて無失点と抑え込んでいる。一方でヤクルト戦は2試合登板で0勝2敗、防御率3.38。首位を争う阪神戦は2試合登板で0勝2敗、防御率8.10と白星を挙げられていない。
エースと呼ばれる投手は苦手球団をつくらず、上位球団相手にも白星を積み重ねる。井上に求められる水準は高い。2ケタ勝利を通過点にどこまで白星を積み重ねられるか。相手のマークが厳しくなる中で好投を続ければ、投手タイトルを十分に狙える。
写真=BBM