3年後、5年後の中軸へ

高卒1年目ながらファームで好成績を挙げている横田
西武首脳陣が、高卒1年目とは思えない「完成度」に目を細めている。ドラフト5位ルーキー・
横田蒼和が、期待以上の成長曲線を描いている。
ファームではここまで66試合に出場し、打率.299、3本塁打、28打点(8月5日現在)をマーク。高卒1年目ながらフレッシュオールスターにもパ・リーグ選抜の「二番・三塁」で先発出場するなど、球団内では早くも「3年後、5年後の中軸を担う存在」として期待されている。
もちろん、数字だけを見れば将来性豊かな高卒ルーキーは毎年いる。しかし、横田が首脳陣から特別視される理由は成績だけではない。技術的な成長を支える精神的な成熟度にある。
小関竜也ファーム監督は、高卒1年目としての現在地をこう評価する。
「(通常の高卒1年目は)超えているんじゃないですか。まだシーズン途中なので、全部終わってみないと分からないですけど、体力的にもあそこまで試合に出ながら練習もして、ガクッと落ちることもなく、いわゆる除脂肪体重と言われる筋力もアップしている。入ってきたときから全体的にガッチリしていましたが、さらにガッチリして、その辺は大したものだと思う」
試合に出続けながらも練習量を落とさず、シーズン中もフィジカルは向上。野球への取り組み方も首脳陣の評価は高い。
「野球がうまくなるために技術練習もそうだし、トレーニングもそうだし、練習全般が好きですよね。暇さえあればマシンを打っている」
そして、小関ファーム監督が何よりも高く評価するのが、精神面の安定感だ。
「気持ちのブレも少ない。結果によって一喜一憂することもない。大人というか、性格なのか、自分の今やるべきことをずっとやっていく。まあ本当に気持ちが安定していますよね。考え方もしっかりしているし、あまり周りの目を気にすることもない。その辺がいいんじゃないですかね」
高卒1年目の選手は、結果に左右されてフォームや考え方まで崩してしまうことも珍しくない。しかし横田には、それがほとんど見られないという。打てても打てなくても、自分が積み重ねるべき練習を変えず、冷静に目の前の課題と向き合う。その積み重ねが、着実な技術向上につながっている。
タイミングの取り方が抜群
実際、打席でもその落ち着きは表れている。追い込まれても慌てることなく、その状況に応じた打撃に徹することができる。
「追い込まれたら追い込まれたなりのバッティングをしようとする」
落ち球には逆方向への軽打も選択しながら、甘く入った球は強く振り切ることもできる。状況判断と積極性を両立できている点も高く評価されている。
さらに小関ファーム監督は、横田の最大の技術的な特長として「タイミングの取り方」を挙げる。
「タイミングを取って自分のポイントでしっかり振る。そこがまず上手ですよね。だから初対戦のピッチャーでもある程度イメージをして初球からブンッと振れる。ましてプロのピッチャーで変化球もいい、スピードも高校とは全然違う。その中でも自分のタイミングで振れる。そこが一番いいところなんじゃないですか」
精神的にブレないからこそ、自分のタイミングも崩れない。打席で迷いが少ないことが、プロ相手でも自分のスイングを貫ける要因になっている。
そのため、小関ファーム監督は現時点で「このコースが打てない」「この球種が苦手」といった明確な技術的課題は見当たらないという。
「課題と言えば、もう今は実戦の中で経験していくことだけ。これが明確に課題です、というのはそこまで感じないです」
守備では三塁を中心に起用しながら遊撃にも挑戦させており、「可能性を探りながら育てていく」方針だ。
高卒1年目で技術が高い選手はいる。しかし、結果に左右されず、自分のやるべきことを淡々と積み重ねられる選手は決して多くない。技術と精神力の両輪を兼ね備えた18歳だからこそ、西武首脳陣は「3年後、5年後の中軸」と将来像を描く。その姿を首脳陣が思い描くのも当然と言える。
文=伊藤順一 写真=BBM