運営スタッフの尽力で大成功

グッドウイルパーティー(8月5日)では参加者がパフォーマンス。最後にホストスタッフとアシスタントコーチも壇上に立ち、WCBF・王貞治理事長の現役時代の「一本足打法」を披露し、会場を盛り上げた[写真=BBM]
第32回世界少年野球大会成田大会(7月30〜8月7日)は11カ国・地域が参加する野球教室と、国際交流試合(中華台北チームと成田市内の6チームが対戦)のほかに、多くの特別企画が実施。6日に全日程が終了し、開会式が行われ、7日に解散した。コンセプトは「成田で広がる友情の輪」。今回も大きな成果を残したが、大会が円滑に進んだのも運営スタッフの尽力があってこそである。3人の裏方を取り上げる。
人生を変えてくれた大会

ホストスタッフを務めた宮崎さん[写真=BBM]
大会のキーマンとなるのが、ホストスタッフである。参加国・地域の子どもたち5人と帯同するシャペロン(通訳)と連携を取りながら、大会期間中、すべての世話をする。つまり、すべての行程を動かすマネジャーの大役だ。このホストスタッフの指示役を担ったのが宮崎かのんさんだった。宮崎さんは小学5年時、2016年の
富山大会に参加。昨年からホストスタッフとして参加し、今年が2度目である。自らの経験を、今度は逆の立場で生かした。今回は唯一の初参加であるスロバキアを担当。運営サイドの宮崎さんへ対する信頼の証しと言える。
「自分が子どものときには見られなかった視点から子どもたちを見るというのが興味深いところであり、日々成長していく過程を見るのがすごく好きなので、そういう楽しさを求めて今年も参加しました」
世界少年野球大会は特別な場である。
「私の人生を変えてくれた大会なんです。これをきっかけに海外に行ってみたいと、英語を勉強してみようと思い、私自身、高校が英語科、大学もカナダに留学して、この前卒業して帰ってきたばかりです。語学を学ぶきっかけがすべてこの大会なので、人生の中で本当にトップスリーに入るぐらいの思い出だと思います」
将来の夢がある。
「WCBFのような仕事に就きたいと思っています。来年も機会があれば、参加したいです」
子どもたちに救われた

ホストスタッフを務めた青木さん[写真=BBM]
青木千紘さんも小学5年時、2018年の松江大会に参加した。卒業生として今回、初めてホストスタッフ(日本担当)として参加し、恩返しの場となった。まずは、参加者としての8年前の思い出を語る。
「ホームシックがあったんですけど、島根まで飛行機で行き、自分の力では帰れない(苦笑)。心細かったんですけど、ホストスタッフの方が、べったり寄り添うわけでもなく、良い距離感で傍にいて、一緒に行動してくれたり、約1週間の大会をやり切ることができました」
今大会、ホストスタッフとして、不慣れな場面があったという。
「いろいろなところから来ている子どもたちと一緒に過ごすのが、ちょっと難しいシーンも出てくるんですけど、実は大人が気にしているよりも、子どもたちはあまり気にしてなくて……。ちょっと時間が経ったら遊んでいるとか、そういう真っすぐな純粋さを、自分自身も思い出さなきゃいけないなと思いました。また、私自身が落ち込んでいる場面では、子どもたちに救われることもありました。ドイツの子は励ましてくれたり、ネパールの子は私の左手に『Don't cry』とペンで書いてくれ……。他のホストスタッフの方たちも私よりも年上で、皆さん声をかけてくれて、優しい人たちが集まって輪になっている大会だなと思います」
野球の楽しさをチームに還元

アシスタントコーチを務めた秋武さん[写真=BBM]
アシスタントコーチを務めたのは、山梨学院大学硬式野球部である。4年生2人、2年生6人が派遣。野球教室を動かすWBSCコーチ6人のサポート役として動いた。責任者は同野球部で学生コーチのチーフを務める秋武大翔さん(4年・千葉英和高)だった。アシスタントコーチは持ち前の明るさで、ウエルカムパーティー、グッドウイルパーティーと盛り上げ役を買って出ていた。パフォーマンスを考案したのも秋武さんらであり、場を明るくしていた。
「通訳の方(シャペロン)、ホストスタッフと協力しながら、一つの大会をつくり上げることに達成感がありました」
苦労話を明かす。
「最初はすべてが初めてのことで、接する子どもたちも外国の子で、言葉の壁というか、伝えたいことがうまく伝わらなかったりとか、あとは仕事面でやるべきことを見落としてしまったりとかありましたが、皆でサポートしながら乗り越えることができました」
あらためて野球の魅力を、子どもたちにどのように伝えたのか。
「『楽しい』というのを伝えたかったです。最初は思い通りにプレーができなく、悔しくて泣いてしまう子とかもいて……。でも、日が経つにつれて、成長していく姿が目に見えて分かりました。自分は野球を10年ぐらいやってきていますが、今大会を通じて新たな発見がありました。子どもたちが楽しそうにプレーしているのを見て、自分たちもあらためて野球は楽しむものであると再認識。それをチームに持ち帰り、楽しくやることで、今までできなかったことができてくるかもしれないので、チームに良い影響を与えられると思います」
秋武学生コーチは自チームでは試合前ノック、攻撃中は三塁コーチスボックスに立つ重要任務を託されている。今秋は関甲新学生リーグで優勝し、明治神宮大会関東代表決定戦(横浜市長杯)を勝ち上がり、本大会に出場するのが目標だ。将来は指導者を目指しているという。今大会が人生においてステップアップする貴重な機会となった。
世界少年野球大会で「友情の輪」を育むのは、子どもたちだけではない。約1週間の大会は運営スタッフにとっても、人生の上で、学びが多い時間となった。
取材・文=岡本朋祐