53年ぶりの快挙となる満塁弾

パンチ力のあるバッティングが魅力のルーキー・宮下
底知れない能力を秘めた新人が現れた。
DeNAのドラフト3位・
宮下朝陽だ。
思い切りよく振り抜いた打球が加速するように伸びていく。衝撃の一打で、スタンドを何度もどよめかせている。8月1日の
巨人戦(東京ドーム)で2回一死満塁の好機に打席が回ってくると、ドラフト1位左腕の
竹丸和幸の直球を左翼バルコニー席に運んだ。あの場所にアーチを叩き込む選手は球界で一握りだろう。新人打者が新人投手から満塁本塁打を放つのは53年ぶりの快挙だった。
さらに、5日の
阪神戦(横浜)では、難敵の
高橋遥人から逆方向にアーチを叩き込んだ。2回に
筒香嘉智の8号2ランで同点に追いつき、さらに一死一塁で宮下は146キロ直球に反応すると、差し込まれたかに見えた打球は右翼方向に伸びてスタンド最前列へ。驚きの一撃が決勝点となった。今季は5本塁打をいずれも左投手から放っている。得点圏打率.367と勝負強さを発揮し、遊撃の守備でも球際に強く送球が安定している。
4月11日に一軍初昇格すると、「六番・遊撃」でスタメン出場した12日の
広島戦(横浜)ですぐに結果を出した。2点差を追いかける7回二死で
床田寛樹の直球をすくい上げて右翼席にプロ初アーチ。この一撃で試合の流れを変え、逆転勝利の呼び水となった。
「これまでで一番うれしい本塁打でした。あまり覚えていないのですが、二死2ストライクから必死に振った結果だと思います。バットを少し短く持って、何とか塁に出ようという意識でした。このまま一軍に生き残れるように、常に結果を求めてやっていきたいです。一球一球を大切にやっていきます。宮崎(
宮崎敏郎)さんや牧(
牧秀悟)さんなど、チームには右の長距離打者がたくさんいます。そのバッティング練習や試合に入るまでの準備を見て、いろいろなものを吸収できるので、まねしながら毎日やっていきたいです。右方向に打てるのが強みだと思っているので、それをもっと伸ばしていければと思います」
故障に苦しんだ大学時代
北海高では1年夏から四番を打ち、主将を務めた3年春、夏に甲子園出場。高校通算20本塁打をマークした。東洋大で1年春(二部)にリーグ戦デビューすると、専大2回戦でサイクル安打を達成。1年春秋と二塁手で東都二部リーグのベストナインを受賞し、2年春に打率.302、1本塁打、8打点の活躍でチームの一部復帰に貢献した。2年夏には侍ジャパン大学代表の一員として第44回日米大学野球に出場。敵地・米国開催での優勝に貢献したが、その後は故障に苦しんだ。
3年生の7月に右肘の関節内遊離体を除去するクリーニング手術を受け、「2~3カ月で治る予定だったのですが、半年以上かかってしまったので、結構キツかったです」と振り返る。4年春に実戦復帰したが、リーグ戦序盤に左のハムストリングスを肉離れ。再び戦線離脱し、秋も打率.190、1本塁打と本来の力を発揮できなかった。
「3年生のときからケガが増えて、試合にもなかなか出られませんでした。4年の春秋もケガが続いたり結果も全然、残せず。悔しさを味わった経験を次のステップに生かせるようにしたいです」
同期へのライバル意識
同じ右打ちの内野手である
立石正広(創価大)が「ドラフトの目玉」として注目されて阪神に1位で入団。
松下歩叶(法大)は
ヤクルトの1位、
谷端将伍(日大)は阪神2位と先に指名されたが、プロの世界は実力がすべての世界だ。「自分の中では、立石にも負けているとは思っていないです。プロで活躍して『宮下のほうがいい選手だな』と言われるように、泥臭くやっていきたい」とライバル意識を燃やしていた。
東洋大1、2年時に二遊間を組んだ2学年先輩の
石上泰輝がDeNAに入団したこともあり、横浜スタジアムへは何度か応援に訪れていた。
「ハマスタには熱いファンがいて、球場全体の雰囲気も自分は好きです。熱いファンの方々の応援に応えられるようなプレーをして、将来的には日本代表、侍ジャパンに選ばれるような選手になりたい」。
DeNAの遊撃はレギュラーを固定できないシーズンが続いていた。宮下がチームに不可欠なピースになれるか。逆転でのCS出場に向けて攻守で躍動する。
写真=BBM