起死回生の逆転2ラン

逆転2ランを放った小島[左]はネビンとハイタッチ
西武は8月8日の
ソフトバンク戦(ベルーナ)に2対1と逆転勝ち。
日本ハムが敗れたためゲーム差なしの2位に再浮上し、首位・ソフトバンクとの差を7.5ゲームとした。
前日の3連戦初戦を落とし、絶対に連敗できない状況で迎えた2戦目。7回まで1点を追う展開から、8回にドラフト1位ルーキー・
小島大河が起死回生の逆転2ランを放った。首位・ソフトバンクに正念場の3連戦で先勝され、後がなくなったところでつかんだ、V戦線に何とか首の皮一枚残る大きな1勝だった。
7回まで相手先発・
上茶谷大河の前に散発5安打無得点。自軍先発・
隅田知一郎の7回6安打1失点の好投を見殺しにする寸前だった。その窮地を救ったのが、女房役の小島だった。0対1で迎えた8回。二死二塁からソフトバンク二番手のセットアッパー・
松本裕樹のスライダーを完璧にとらえた打球が右翼スタンド中段に飛び込む。沸騰する西武ファンの大歓声を浴びながら、マウンドにガックリとしゃがみ込む松本の表情が、その逆転2ランの持つ意味を如実に物語っていた。
値千金の5号2ランでお立ち台に上がった小島は「チームが苦しい中でこういう1勝ができたことがうれしい。自分が打って同点に追いつけばいいかなと思って打席に入ったんですけど、それ以上の結果になってくれてよかったです」と喜んだ。本拠地では3月31日の
オリックス戦以来の一発。「打った瞬間、行ったかなと思いました。すごい大歓声で(これまでの)ホームランの中で一番うれしかったです」とスタンドの大歓声に応えた。
守備のほうでも隅田、
篠原響、
甲斐野央の3投手をリードし1失点。小島は「ひとりずつしっかり投げてくれたのでナイスピッチングだったと思います。チームとしてまだ優勝はあきらめていないので、首位になって日本一になれるよう頑張ります」とチームとしての思いを代弁し、ライオンズファンの大歓声を引き出していた。
実際、残り40試合で実質“8ゲーム差”となる7.5ゲーム差をひっくり返すのは、ソフトバンクの失速がない限り厳しい。しかし、3年連続5位以下の“Cクラス”からの再建途中にあるチームという観点から見ると、常に追い込まれた緊張感の中で、チームの未来を担う若手が負けられない戦いを経験する意味は重い。
クリーンアップを三者凡退

後半戦初登板となった篠原は好リリーフで2勝目を挙げた
この日、その象徴となったのが小島と篠原だった。
打のほうでは1年目の小島が起死回生の逆転2ランで土俵際のチームを救った。投のほうでは2年目の篠原が1点ビハインドの8回に登板。
近藤健介、
栗原陵矢、
柳田悠岐のクリーンアップを三者凡退に抑え、その裏の小島の逆転弾を呼び込んだ。篠原は2勝目(1セーブ、23ホールド)を挙げた。
チーム関係者は「個々の選手を見てもソフトバンクの戦力がウチを圧倒しているのは明らか。ただ、その中でも若い選手たちがギリギリの状況の中で、自分で考え、試行錯誤し、成功体験を積んでいけること以上の育成の場はない」と話す。首位を走るソフトバンクとの力の差を認めながらも、だからこそ、こうした正念場で若手が結果を出すことには大きな意味がある。
西口文也監督も小島の働きを高く評価した。
「(小島は)打席の中でずっといい雰囲気だったので何かやってくれそうな気はしていました。(二番起用の期待に)大いに応えてくれました。今はしっかりとバットが振れている。リードのほうもバッテリーでよく組み立てて試合をつくってくれたと思います」
隅田が粘り強く試合をつくり、篠原がつなぎ、甲斐野が最後を締めた。打線ではベテラン・
中村剛也にも今季初安打が出た。「みんながみんな自分の役割をしっかり果たしてくれたと思います」。指揮官がそう振り返った一戦は、まさに総力戦だった。
前日の初戦を落とし、連敗だけは避けなければならなかった状況で、若手が勝負を決め、投手陣が1点を守り切った。首位・ソフトバンクを追い掛けるためにも、V戦線にどうにか踏みとどまった1勝だ。残り40試合。7.5ゲーム差という数字は決して小さくない。それでも、追う側にできることは目の前の1試合を取りにいくことだけだ。
初戦を落とした後、絶対に連敗できない状況でつかんだ逆転勝利。その1勝を、1年目の小島と2年目の篠原が中心となってもぎ取った。V戦線に首の皮一枚残っただけではない。苦しい状況で自分たちの力で勝利をつかむ経験こそ、再建を進めるライオンズの未来につながる「経験値」となっていく。
文=伊藤順一 写真=兼村竜介