池田記念美術館を5年連続で訪問

早稲田大学野球部は8月10日、池田記念美術館を訪問した[左から小宮山悟監督、日野愛郎部長、香西一希主将][写真=BBM]
早稲田大学野球部は8月7日から21日まで新潟県南魚沼市内のベーマガスタジアム(大原運動公園)で夏季キャンプを張っている。
同キャンプは2022年から始まり、今年で5年目。南魚沼キャンプ期間中の8月10日、日野愛郎部長、小宮山悟監督以下、部員約60人が同市内にある池田記念美術館を訪問した。
同美術館はベースボール・マガジン社の創設者・池田恒雄氏(1989年野球殿堂入り)の強い志の下、1998年に開館した。池田氏は1946年の同社創業にあたり「学生野球の父」と言われた飛田穂洲氏(早稲田大学野球部初代監督、1960年野球殿堂入り)に原稿執筆を依頼。池田氏は飛田氏がいた水戸へと何度も足を運び、承諾を得ることができた。
1946年創刊の「ベースボールマガジン」の巻頭言には、飛田氏が寄稿した『進め!野球の大道へ!』を掲載。池田記念美術館にはスポーツ展示室があり、飛田氏が著した直筆原稿が展示されている。墨で記された和紙を広げると、約2メートルの長さになる。
1901年創部の早稲田大学野球部の神髄が、南魚沼市に置かれている縁もあり、22年から合宿を実施。初年度から継続し、同美術館を訪問するのがキャンプの恒例行事となっている。
池田記念美術館には早稲田大学野球部初代部長・安部磯雄氏(1959年野球殿堂入り)の色紙や、戦前に活躍した伊達正男氏(1989年野球殿堂入り)のユニフォームなど、同野球部関連の資料の数々が展示されている。学生たちは約1時間、食い入るようにして、早稲田大学野球部が記してきた歴史と伝統に触れた。
覚悟を持って臨む南魚沼キャンプ

1946年創刊の「ベースボールマガジン」の巻頭言には、飛田氏が寄稿した『進め!野球の大道へ!』を掲載。学生は食い入るように見て、歴史と触れ合った。写真左から山根潤太郎副将[4年・鎌倉学園高]、香西主将、岡西佑弥副将[4年・智弁和歌山高][写真=BBM]
この春、早大は東京六大学春季リーグ戦で5位に終わった。32年ぶりの天覧試合となった慶大2回戦ではサヨナラ勝ちを収め、意地を見せたものの、3回戦を落とし、勝ち点1(4勝8敗1分)でシーズンを終えている。小宮山悟監督は危機感を語る。
「この春の惨敗を受けて、どうすればいいんだということを、東京で選手とミーティングをしてこちらに入ってきて、学生たちは『妥協をせずにやる』と。その覚悟を持ってキャンプに臨んでいるということなので、こちらも鍛えるというつもりでやっています。南魚沼での滞在期間中、どれだけレベルが上がるか楽しみにしています」
厳しさを前面に出しているが、物足りなさを感じる部分もあるという。
「残念なことに、今どきの子なので、しんどい思いをしたくないという考えなんです……。でも、何かを得るには、しんどいことしないと得られない。それを簡単に身につけられるような勘違いをしているので、そこをもう一度『ちゃんとやれ!』ということでやろうと思っています」
「われわれの教えはもうそれしかない」
飛田氏が残したのは「一球入魂」。早稲田大学野球部にとって、大事な言葉である。
「これはもう、唯一無二なので、われわれの教えはもうそれしかないので。いま、目の前にあるこのボールに、己の魂を込めて扱いなさいということですから。ただ、雑に扱う学生が多すぎるんです。一か八かのプレーで知っていてやっているのであればまだ、救いようがありますけど、そうではなくて、それが当たり前のプレーになってしまっているので……。われわれ早稲田大学野球部はそうではないんだということを、教えてあげないといけない。教えなければ監督として技量不足ということになるので、指導者として彼らにそういうところを教えていかないといけないということです」
飛田先生の巻頭言を見て、いつも刺激を受けている。
「節目には先生のところに出向いて、墓前で手を合わせて早稲田の野球についてお伝えを申し上げているんですけど、先生が喜んでくれているであろうと期待していますが、(日ごろの指導で)ところどころでけしからんという部分が散見していますので、その辺はきちんと反省し、学生たちの襟を正すという使命の下、指導に当たっています。何10年か経った時に、監督を務めたときのいろいろなことを思い出しながら、胸を張って先生のお墓に行けるかどうかという話なので……。今のところ、胸を張ってもいいのかなとは思っています」
この秋のテーマは、春5位からの逆襲である。
「(キャプテンの)香西には口が酸っぱくなるぐらい言ってきました。この春の開幕前の段階で『低迷期の入り口にいる』と。その入り口をくぐらずにそのままいけるのか、それとも低迷期に突入するのか。その瀬戸際だっていうところで、とんでもない成績で終わったわけですから……。この秋、同じような戦いをするようでは、これはもうしばらく低迷期から抜け出せないというふうに思っていますから、それぐらいの覚悟を持って臨むということです」
集中力を高めた練習
背番号10を着ける第116代主将の左腕・香西一希(4年・九州国際大付高)は危機感を語る。池田記念美術館への訪問が良いきっかけになったという。
「たくさんの偉大な先輩たちがつないできてくれた東京六大学野球連盟の101年目のシーズンでプレーできているということに、あらためて幸せだなという思いを感じながら見させていただきました。安部先生と飛田先生がいたから、自分たちもいまこうして野球ができているというのは、選手一人ひとりが感じていることなので、今回の美術館で改めて勉強できて良かったなと思います。『一球入魂』とは野球に取り組む上での原点じゃないですけど、すべての練習に手を抜かず、気持ちを込めて取り組むというところにもつながります。野球だけでなく、私生活含めて大切にしている言葉です。このキャンプのテーマは各個人のレベルアップというところはもちろんなんですけど『一球入魂』の精神の下に、チームとしてとにかく集中力を持ってすべての練習に取り組もうと意識しています」
練習拠点であるベーマガスタジアムは、活気にあふれている。天皇杯奪還へ、早大は充実の夏を過ごし、秋の神宮で巻き返すだけだ。
取材・文=岡本朋祐