ソフトバンク首位独走に貢献

昨季、育成選手出身者として史上初の首位打者に輝いた牧原。今季もその打撃力は健在で、打率3割に迫る勢いで安打を積み重ねている
ソフトバンクが強い。8月11日の
ロッテ戦(みずほPayPay)で16対2と圧勝。貯金を今季最多の29に増やし、2位・
西武に8.5ゲーム差と首位を快走している。
今季初登板となったエースの
リバン・モイネロを打線が強力に援護した。試合の流れを大きく引き寄せたのが、
牧原大成の一打だった。初回に1点を先制し、さらに一死二、三塁の好機で、右翼ポール際に高々と打球が上がった。牧原大は三塁まで走ったが、リクエストでリプレー検証の結果、フェンス上のフェアラインを直撃していたため、本塁打と判定されて3ランとなった。
試合後のお立ち台では「頼むからフェアであってくれという気持ちだけでした。(判定後は)ありがとうと思いました」と安堵の表情。牧原は熊本の城北高校で3年間過ごしている。熊本地震について質問が及ぶと、「熊本の皆さんには、僕たちは本当にプレーでしか元気を与えられないと思いますので、よりこれからもっと熱いプレーを届けていきたいと思っています」と誓うと、スタンドから大きな拍手が注がれた。
首脳陣にとってありがたい存在
プロ15年目の昨年に初の規定打席に到達し、育成出身選手で史上初の首位打者を獲得した。3、4月は打率.230だったが、気温の上昇と共に調子を上げて8月は16試合連続安打をマークするなど月間打率.385をマーク。パ・リーグで唯一の打率3割超えとなる.304で自身初のタイトルを獲得し、リーグ連覇と5年ぶり日本一の原動力になった。今年も8月は月間打率.417と得意の夏場で上昇気流に乗っている。リーグ3位の打率.296となり、2年連続首位打者を狙える位置につけている。
首脳陣にとって、牧原ほどありがたい存在はいないだろう。内外野の複数ポジションを高い水準で守り、あらゆる打順に対応した打撃ができる。野球センスに目を見張るばかりだが、本質は育成出身からはい上がった努力の男だ。
プロ入り前から「練習の虫」
城北高で3年間指導した末次敬典監督は、ソフトバンクが5年ぶりの日本一に輝いた昨年、週刊ベースボールの独占手記で牧原の高校時代を振り返っている。
入学から約1週間、練習への取り組みや身体能力を見た末次監督は、早くも「プロに行ける選手」だと確信したという。第一印象は「新庄の小型」。西日本短大付高時代に指導した
新庄剛志(現
日本ハム監督)と、潜在的な身体のしなやかさや、誰よりも早くグラウンドに出て練習する「練習の虫」という点で共通していた。もともとは遊撃手だったが、二塁ベース寄りの打球をアウトにするには、牧原の強肩が必要だった。チーム事情もあり、早い段階で二塁手に抜てき。才能をさらに生かすポジションを見いだした。
高校3年夏を前にすると、城北高にはNPB5球団ほどのスカウトが視察に訪れた。ただ、その目的は投手だった。末次監督はあえて牧原ではなく「他を見てください」と伝えたという。一度見れば、その魅力は十分に伝わると確信していたからだ。そんな中、ソフトバンクの福山龍太郎スカウトから「育成でも良いですか」と獲得への興味を示された。本人にも確認した上で、末次監督は「ぜひとも、お願いします」と返答。2010年のドラフト会議で育成5位、背番号129でホークス入りが決まった。
プロへ送り出す際、末次監督が牧原に伝えたのは、グラウンド整備とあいさつを徹底することだった。牧原はその約束を忠実に守った。後に当時二軍監督だった
小川一夫氏から連絡があり、二軍コーチ陣の間では「1日でも支配下にしてやろう」が合言葉になっていたという。高校時代から続けてきた真摯な姿勢は、プロの世界でも指導者たちの心を動かしていた。
牧原は24年にFA権を取得しているが、23年オフの契約更改で「福岡で野球をしたい思いが強かった」と3年契約を結んでいる。今年が契約最終年。常勝軍団の中心選手として残留が有力視されるが、今はリーグ3連覇、2年連続日本一に向けて白星を積み重ねることに集中する。
写真=BBM