プロ入りから3年間で29勝

球団初のリーグ連覇へシーズン最終盤で輝いてみせる
低めに、丁寧に、粘り強く。天国に旅立った恩師の教えを胸に、左腕を振り続けた。
阪神の
伊藤将司が8月19日の
ヤクルト戦(京セラドーム)で6回4安打無失点の好投。白星はつかなかったが、2試合連続のサヨナラ勝利につなげた。相手左腕・
山野太一との息詰まる投手戦で先制点を与えなかった。2回に一死二、三塁のピンチを招いたが、山野、
伊藤琉偉をいずれも直球で連続三振に仕留めると、その後もツーシーム、カットボール、チェンジアップを効果的に使って7三振。2日前の17日に横浜高校時代の監督だった恩師の渡辺元智さんが81歳で逝去したが、悲しみを乗り越えて先発の役割を見事に果たした。
新人の2021年に先発ローテーションに入り、10勝をマーク。新人左腕の2ケタ勝利は1967年の
江夏豊以来球団史上3人目の快挙だった。22年に9勝、23年は左肩の違和感で出遅れたが、4月下旬に一軍昇格すると自身初の規定投球回数をクリアして10勝5敗、防御率2.39。リーグ優勝、日本一の原動力になった。
シーズン前に週刊ベースボールのインタビューで、「去年は2ケタ勝利を逃してしまったので、そこは絶対達成したいという思いは強いですね。もっと言えば、規定投球回は2年とも達成できていないので、そこは絶対に到達したいと思っています。僕の中では、調子のよくない試合などを少なくすることができたら、2ケタは達成できる可能性はあるのではないかと思いますし、規定投球回も達成できるかなと思っています」、「僕自身、まだ3年目なので……3年先発ローテをこなして初めて『先発投手』と言われると思うんです。まずは今年、そこはしっかり守っていき、先発投手としての責任を果たしていきたいです。そしてどんどん後輩を引っ張っていける存在になりたいとは思っています」と語っていたが、有言実行の活躍ぶりだった。
待ち受けていた試練
技巧派左腕のイメージが強いが、生命線は相手打者の懐に投げ込む直球だ。140キロ台前半と決して速くないが、球の出どころが見づらいフォームから糸を引くような軌道で捕手のミットに吸い込まれ、打者はとらえられない。プロ3年間で計29勝を積み上げ、左腕エースとしてさらなる飛躍を目指したが、その後に試練が待ち受けていた。
24年は18試合登板で4勝5敗、防御率4.62。生命線の直球がキレを欠き、相手球団に研究されたことで痛打を浴びる場面が目立った。巻き返しを誓った昨年も14試合登板で4勝3敗、防御率3.07。「過去を求めず、小さいマイナスを気にするんじゃなくて、何か自分にプラスになることを考えるようにしました」と振り返っている。
今季は3月29日の開幕3戦目・
巨人戦(東京ドーム)の先発を託されたが、2回1/3を6安打3失点KOと試合を作れず登録抹消に。4月8日に左大腿部の筋損傷でリハビリから再出発となったが、6月に戦列復帰以降はすべての登板で5回を投げ切っている。8月1日のヤクルト戦(神宮)は5回3失点で打線の援護に恵まれて今季初勝利。白星はこの1勝のみだが、現在14イニング連続無失点中で防御率2.52に良化している。
大きなプラスアルファ
首位を快走している阪神だが、先発のコマが充実しているとは言えない。開幕から先発ローテーションで稼働し、リーグトップの150奪三振をマークしている
才木浩人がコンディション不良で15日に登録抹消。
大竹耕太郎も15日の
広島戦(マツダ広島)に登板して4回3失点で8敗目を喫すると、ファーム再調整になった。
さらに、酒席で一般女性とトラブルを起こしたことが週刊誌で報じられた
伊原陵人が登録抹消に。開幕から10連勝を飾るなどリーグトップの12勝をマークしている
高橋遥人も無理をさせられない。疲労を考慮して13日に登録抹消され、登板間隔を空けている。
この状況で、伊藤が先発で安定した投球を続ければ大きなプラスアルファをもたらせる。23年に味わったリーグ優勝、日本一を再び味わうためにも、完全復活を目指す。
写真=BBM