走り込みの約2週間

早大・小宮山監督の話を真剣な表情で聞く主将・香西。リーダーがチーム方針を選手たちにも落とし込んでいく[写真=矢野寿明]
早稲田大学野球部は8月7日からベーマガスタジアムで実施していた南魚沼キャンプを21日に打ち上げた。新潟県南魚沼市内で夏の強化合宿を行うのは2022年から5年連続。野球漬けの充実の約2週間を過ごした。今年4月、ベーマガスタジアムのスコアボードが改修。リニューアルされたスクリーンには「歓迎 早稲田大学野球部 南魚沼市 南魚沼キャンプ」が映し出され、オープン戦でも、より良い環境でプレーすることができるようになった。
一塁ベンチには参加選手が目標設定した用紙が掲示。第116代主将・香西一希(4年・九州国際大付高)の欄には、こう書かれていた。
「投げて技術力、体力の向上。びっくりするくらい走ってみる。下半身の強化。きついときにもう一歩がんばって踏み出して、逆境に立ち向かえる自分の心の強さを自分で知る。自分がやる姿で後輩たちに示す」
有言実行した。サブグラウンドではショートダッシュ、球場横では急勾配の坂道走、球場内ではポール間走と、時間を見つけ、ピッチングの土台となる下半身を鍛えた。
どん底からの巻き返し

今年4月、ベーマガスタジアムのスコアボードが改修された[写真=矢野寿明]
春は勝ち点1の5位。早大・
小宮山悟監督はこれまで、学生の自主性を重視してきた。春の結果を受けて、指揮官と学生幹部は入念に話し合い、練習の方向性を再確認。学生主体という軸を守りながらも、勝つために、指導者もより介入する流れに転換した。
「自分たちはとにかく実力が足りなかったというところを感じて、個々のレベルアップをするしかない。春はだいぶ任せてもらった中でやっていた練習だったんですけど、この夏はメニューも大人のコーチ陣からいろいろ指導もしていただきながらやっています。意識の部分で足りなかったので、しっかり高めてやっていこうということで向き合ってきました」
昨秋はリーグ4連覇を逃し、中心選手が卒業した新チームは「どん底からの天皇杯奪還」とスローガンを掲げ、危機感を植え付けてきたが、結果が伴わなかった。小宮山監督は「低迷期に突入した」と、学生に意識改革を求めてきた。
「春までの取り組みは、甘かったと思います。そのときは、できたつもりにはなっていたんですけど、結果が出なかったということは、足りなかったということです。今回の南魚沼キャンプでは投手に関しては単純に走る量を増やし、野手もベースランニングの精度を高め、ボールを捕球する数、バットを振る数をこなしてきました」
次の代に良い形でバトンタッチ

ベーマガスタジアムのポール間を走り込み、下半身を鍛えた[写真=矢野寿明]
4勝8敗1分と苦戦が続いたが、32年ぶりの天覧試合となった慶大2回戦ではサヨナラ勝利。3回戦を落とし、慶大のリーグ優勝を目前とする形になったが、ライバルを相手に意地を見せた伝統の一戦だった。
「秋につながる1勝だったと思いますし、応援部、ファンの方々からもすごく良い試合だったと話してくださるので、苦しいシーズンでしたけど、秋への一筋の光明が見えた試合だったと思います」
ラストシーズンへの決意を語る。
「間違いなくここまで何年かは強い早稲田が続いていたので、5位という結果は間違いなく落ちていると思うので、課題を克服しないといけない。自分たちの代で入った低迷期は、自分たちの代で抜け出して、次の代にバ
トンタッチするというところを全員が強く思っています。対戦する5校すべてから勝ち点を挙げ、完全優勝できたらいいんですけど、泥臭く2勝1敗でもいいので、天皇杯を目指してやっていきたいです。良い形で後輩に受け継ぎたいと思います」
8月25日。香西は神奈川大学野球連盟77周年記念事業として行われた交流試合に、東京六大学野球連盟選抜チームとして出場。二番手として登板し、打者3人をパーフェクトに抑え、順調な調整ぶりをアピールした。南魚沼での鍛錬の成果を出したのだ。この秋は背番号「10」を着ける主将として、最終週の早慶戦まで、チームリーダーとしての役割をまっとうする。
取材・文=岡本朋祐