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出場機会が大幅減も…存在価値証明したい「巨人のFA戦士」は

 

首位攻防戦で悔しい3連敗


今季は開幕から二軍暮らしが続いたが、シーズン最終盤でチームの力になりたい


 2位・巨人が8月30日の首位攻防戦・阪神戦(甲子園)で1対3と敗れ、同一カード3連敗。4.5ゲーム差に広がった。1937年秋以来となる89年ぶりの阪神戦7連敗。直接対決で圧倒されると、戦況が厳しくなる。今季の対戦成績は7勝16敗となった。

 この試合でアクシデントが生じたため、途中出場したのが甲斐拓也だった。3回一死一、三塁で近本光司が二盗に成功した際、大城卓三がブロッキングで右前腕にボールが直撃して腫れが出たため、二塁に投げられず途中交代に。甲斐が急遽マスクをかぶったが、中野拓夢に2点中前適時打を許した。4回以降は無失点に抑えたが、悔しさは大きいだろう。

野球人生の岐路


 かつて、常勝軍団の司令塔だった男は野球人生の岐路を迎えている。24年オフにソフトバンクから5年推定15億円の大型契約でFA移籍。大きな決意で新天地に臨んだ昨季は、8月下旬に本塁のクロスプレーで走者と交錯して右手中指を骨折してそのままシーズンを終えた。

 9年ぶりに100試合を割る68試合出場で打率.260、4本塁打、20打点。リーグ連覇を逃したことに「巨人というチームは勝たないといけない、勝ち続けないといけない、強いチームでなくちゃいけない」と悔しさをにじませ、「大変な部分もありましたけど、僕の野球人生にとってムダにならない一年だったと思います。(成績は)当然、納得いくものではないですし、試合数も少ない。ただ、まだまだ自分はできる」と前を向いていた。

 だが、今年は開幕からファーム暮らしに。大城卓三、主将の岸田行倫小林誠司、若手成長株の山瀬慎之助とライバルが多い中、炎天下のファームで若手と泥まみれになってプレーした。6月21日に一軍昇格したが2週間でファーム降格。8月13日に再び昇格すると、大仕事を果たした。「八番・捕手」でスタメン出場した8月26日のヤクルト戦(神宮)。同点で迎えた9回に打席が回ってくると、四番手のナッシュ・ウォルターズに2球で追い込まれたが、粘った末の6球目のカットボールをすくい上げた打球は左翼席へ。14打席目で初めて放った安打が値千金の決勝アーチとなった。守備でも5投手の継投策を好リードで勝利に導いた。

「守りだけなら歴代屈指」


 正捕手の座は一つしかない。今季9試合出場にとどまっている甲斐が存在価値を証明するためには、チームを勝たせることに尽きる。ソフトバンク時代はゴールデン・グラブ賞を7度、ベストナインを3度受賞し、4年連続日本一に導いている。

 現役時代に通算3085安打をマークした野球評論家の張本勲氏は、甲斐の捕手としての能力を高く評価していた。4年前の22年に週刊ベースボールのコラムで以下のように語っていた。

「私はバットで成績を残してきた選手だが、もし監督を務めるなら打撃力よりも投手力を重視した守りのチームをつくるだろう。こう言うと誰もが驚くのだが、チームが勝つ可能性を考えたら分かることだ。強いチームというのは1点を奪うこと以上に、1点を守ること、与えないことに長けている。そこで今回はグラブ特集でもあり、私が選ぶ守りのチームを考えてみたい。守備のベストナインと考えてもらってもいい。あくまで私の意見ということで、ご理解いただきたい」

「捕手は私が現役のころはノムさん(野村克也、南海ほか)に森さん(森祇晶、巨人)が名捕手と言われ、少し前になると古田(古田敦也、ヤクルト)、谷繁(谷繁元信、横浜ほか)がそうなのだろうが、私は現役の甲斐(甲斐拓也、ソフトバンク)を推したい。数年前に生で見た日本シリーズでの衝撃がまだ残っている部分が大きいのだが、肩の強さ、スローイングの速さ、送球の正確性とすべてが完璧だった。こんな捕手がいるのかと心底驚いたものだ。育成出身というのが信じられなかった。まだ29歳の現役選手で打撃に課題があるようだが、守りだけなら歴代屈指の捕手だと考える」

 33歳となったが、まだまだ老け込む年ではない。今季は残り24試合。逆転優勝に向けて厳しくなったが、下を向いている時間はない。チームを勝たせることに全神経を注ぐ。

写真=BBM
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