是が非でも狙う3連勝
パ・リーグ2位の
西武は9月4日から、今季の天王山とも言える首位・ソフトバンクとの敵地3連戦を迎える。ゲーム差は残り21試合で5。優勝マジック18を点灯させ、3連敗さえ避ければいい王者に対し、西武は是が非でも3連勝を狙いたい。この福岡決戦の結果が、今季のパ・リーグの行方を大きく左右することになる。
4日の初戦で先陣を切る
高橋光成は、決戦を前に言葉に力を込めた。
「まだ優勝が狙える位置にいますし、ホークスとも5試合残っている。全部勝てば、本当に分からなくなる」
敵地での5戦全勝を念頭に置き、勝負の9月を見据えている。その右腕を援護する打線にも、負けられない理由がある。8月30日の
楽天戦(ベルーナ)で引退試合を迎えた
栗山巧。その現役最終戦では自己最多となる10号ソロを放ち、8回二死の最後の打席を演出したのが、6年目の
長谷川信哉だった。
チームがシーズン最大のヤマ場を迎えるなか、24歳の外野手もまた、初めて経験する首位争いの真っただ中にいる。
「(直接対決が)残り5つあるんで、マックスで5ゲーム縮められる。そこはもう本当に全員が集中して、ゲーム差を縮められたらと思います。支配下になってから5年目ですけど、首位争いはまだ経験したことがないので、今こうやって戦えていることに関しては、すごく喜びというか、嬉しさがあります」
言葉の端々から伝わるのは、重圧よりも、この舞台に立てることへの高揚感だった。
骨折した腕で放った本塁打

2006年8月1日のロッテ戦、有鈎骨を骨折した腕で本塁打を放った栗山[左]
今季は7月初めに有鈎骨を骨折し、二軍でのリハビリを余儀なくされた。その時期、長谷川が耳を傾けたのが、先日25年の現役生活に幕を下ろしたレジェンド・栗山の言葉だった。
栗山もまた、プロ5年目のシーズンに有鈎骨骨折を経験している。2006年8月1日のロッテ戦(千葉マリン)。9回一死満塁の打席で空振りした際に右手有鈎骨を骨折した。しかし、痛みに耐えながら左手1本でバットを振り、相手守護神・
小林雅英から自身初となる満塁本塁打を放った。
「自分がやった後には、その思い出話的な感じで話を聞きました。栗山さんの場合は、すでに折れていて、それが分かっている中で、左手1本で打ったと言っていました」
同じ故障を経験したレジェンドから聞いた体験談。それは単なるリハビリや打撃技術の話ではなかった。長谷川が栗山から受け継ぎたいと感じているのは、その根底にあるものだ。
「もちろん、その準備っていうところはみんな言うと思うんですけど、それ以外を言うならば、戦う姿勢ということを僕は言いたい。メンタルで最初から相手を上回るという『心の持ち方』の問題。そういったところを僕も受け継いでいきたいと思います」
栗山から学んだ「心の持ち方」
25年間をライオンズに捧げた栗山が、長谷川ら後輩たちに残したものは、準備や日々の取り組みだけではない。どんな相手にも、どんな状況にも屈せず、常に相手を上回ろうとする強い意志。その「戦う姿勢」こそが、「ミスター・ライオンズ」と呼ばれた男の核だった。
そして今、その背中を追ってきた長谷川にとって、今回のソフトバンク3連戦は、まさに大一番となる。首位との直接対決は、まだ5試合残されている。すべてを勝てば、5ゲーム差をひっくり返す可能性も見えてくる。もちろん、簡単な道のりではない。それでも長谷川は、初めて味わう首位争いの緊張感を楽しみながら、栗山から学んだ「心の持ち方」を胸に福岡へ乗り込む。栗山から受け継いだ戦う姿勢を、今度は自分たちの世代がグラウンドで示す番だ。
逆転優勝への望みをつなぐため、絶対に落とせない福岡での3連戦。初戦のマウンドには高橋光成が立つ。そして、その背後には、「ミスター・ライオンズ」から受け継いだ戦う魂を胸に、初めての首位争いへ挑む長谷川ら若獅子たちがいる。
文=伊藤順一 写真=BBM