確実性が上がった打撃

8月は月間10本塁打をマーク。強打を発揮している山口
一過性の勢いでない。驚異的なペースで本塁打を量産しているスラッガーが、
ロッテの
山口航輝だ。
8月26日の
ソフトバンク戦(ZOZOマリン)で自身初のサヨナラ弾を放つと、4試合連続アーチで27本塁打に。28日の26号で
初芝清氏が千葉に本拠地を移転後に持っていた球団日本人最多記録を塗り替えるなど、8月は月間10本塁打を記録した。
今季は開幕一軍入りを果たしたが、スタメン出場は2試合のみで代打で結果を残せず、4月19日にファーム降格となった。5月12日に一軍昇格すると、翌13日の
日本ハム戦(ZOZOマリン)で今季初アーチ。ここから目を見張る活躍を続ける。コンスタントにアーチを量産し、86試合出場で自己最多を塗り替える27本塁打をマーク。
長打力だけでなく、確実性が格段に上がったことに大きな成長が見られる。変化球を空振り、ファールするケースが減り、きっちり捉えてヒットゾーンに飛ばすため打率.286と好不調の波が少ない。このまま試合に出続ければ、シーズン終盤で規定打席に到達できる計算になる。
以前から大きかった期待
和製大砲としての期待は以前から大きかった。高卒4年目の2022年に102試合出場で打率.237、16本塁打、57打点をマーク。だが、その後は確実性が課題で定位置をつかめなかった。昨年は8月に4試合連続アーチを放ったが、シーズントータルでは35試合出場で打率.255、7本塁打、24打点と不完全燃焼だった。26歳となり期待の若手という時期は過ぎている。昨年は大卒1年目の
西川史礁が外野の定位置をつかんで新人王を受賞。同期入団の
藤原恭大も初の規定打席に到達してリードオフマンとして活躍した。
今年から就任した
サブロー監督は「とにかく『結果を出した選手を使う』。ベテランだから優先的に使うということはありません。逆に、若手だから使うということもありません。そこは関係なく、そのときに一番いい選手から使う。シンプルですけど、選手同士の競争に勝った選手が開幕スタメンに立てばいいと思っています」と週刊ベースボールのインタビューで語っていた。外野陣は藤原、西川が定位置争いで一歩リードしている中、山口は持ち味の強打で定位置奪取を目指す正念場のシーズンだった。
逆転で本塁打王も狙う
明桜高では投打の二刀流でプロを目指したが、決して順風満帆ではなかった。高2の夏の秋田大会決勝で右肩を脱臼して甲子園では登板なしに終わり、秋はケガの影響でベンチ外に。3年夏の県大会はエースの
吉田輝星(現
オリックス)擁する金足農に決勝戦で0対2と敗れた。金足農は甲子園で熱戦を繰り広げて準優勝を飾り、「金農旋風」が社会現象に。山口は当時を振り返っている。
「あの経験が大きいんです。野球ができる喜びを本当に感じましたし、2年秋もキャプテンを務めながらベンチ外。野球を始めてからベンチから外れるのは初めてでした。それで、試合に出られない人の気持ちも分かったんです。だから、どんな状況でも悔いの残らないように、楽しくやらないといけないな、と」
「吉田(輝星)ですよね。アイツに対しては、ずっと意識し続けると思います。いつになってもライバル心が消えることはない。高校3年の県決勝(対金足農高)もアイツを打てずに負けた。だから、どんなピッチャーのときよりも力が入る。プロでは、やり返したい。アイツにだけは負けられないんです」
同世代に負けたくない気持ちは誰よりも強い。チームメートの藤原、
太田椋(オリックス)、
野村佑希、
万波中正(ともに日本ハム)と同じパリーグで対戦する選手たちが主力になり、発奮材料になっていた。目指す選手の理想像で明かしていた選手が
鈴木誠也(カブス)。「率も残せるし、長打もある。あのような選手になっていきたいです」。
広島時代に6年連続「打率3割、20本塁打」をクリアして2度の首位打者を獲得。カブスでもメジャーを代表する強打者として活躍している。
山口もリーグ3位の27本塁打と覚醒の時を迎えているが、目指すのは本塁打王だ。ソフトバンクの
栗原陵矢は34本塁打で7本差があるが、8月のように爆発すれば逆転のチャンスはある。打率3割の可能性もまだまだある。残り26試合。輝きを放ったまま、最後まで突っ走る。
写真=BBM