投げる打つ「魔法の言葉」

ベーマガスタジアムで「親子で体験! WCBFわくわく野球教室」が開催。最後には集合写真を撮影した[写真=BBM]
「親子で体験! WCBFわくわく野球教室」が9月5日、ベーマガスタジアム(新潟県南魚沼市)で行われた。「正しい野球の普及・発展」と「世界の子どもたちの友情と親善の輪を広げる」を目的として活動する世界少年野球推進財団(
王貞治理事長)が主催。1990年にロサンゼルスで第1回世界少年野球大会が開催されて以来、毎年夏、世界各地から子どもたちが参加し、野球を通じての国際交流事業を展開し、今夏は千葉県成田市で第32回大会が行われた(第33回大会は南魚沼市で開催)。
同財団では世界少年野球大会のほかにも、全国各地で野球の振興・普及を目的とした野球教室を開催。今回は同財団・
中畑清評議員と読売
巨人軍・ジャイアンツアカデミーが講師で、初日の5日は午前の部、午後の部でそれぞれ35組の親子が参加した。開会式では「よろしくお願いします!」と大きなあいさつをし、準備体操からメニューがスタートした。
投げる! 捕る! 打つ! 走る!
この4つの基本動作を、遊び感覚で覚える。ジャイアンツアカデミーには「魔法の言葉」がある。投げることに関しては「
トントンくるっ」という掛け声で投げる「くるっとスロー」。両手を広げ、テークバックから投球まで一連の動作を分かりやすく説明した。打撃は「合わせて、引いて、くるっ」と、ミートポイントを確認し、構えから、素直にバット(もしくはラケット)を出すリズム。講師陣は抜群の指導力で子どもたちのやる気を引き出し、保護者も一緒になって取り組む。親子で一緒に成功体験を生むことで、達成感を得ていた。
親子が好きになってもらう

世界少年野球推進財団・中畑評議員は子どもたちに熱血指導を展開していた[写真=BBM]
最後は試合形式で「投げる! 捕る! 打つ! 走る!」を実践。子どもたちが得点を競う中で、打席から一塁、二塁、三塁、本塁と駆け抜ける楽しさを味わった。中畑評議員も自ら打席に立って快打を見せ「絶好調」をアピール。ジャイアンツアカデミー6年目の黒澤和氏は駒沢女子高では女子硬式野球部でプレー、駒沢女子短大では幼稚園教諭、保育士資格を取得した。子どもたちを楽しませることに長けており、見ている側も思わず元気が出てしまう。野球を取り組む上での「入り口」であるアカデミーコーチとして、飛び切りの明るさは最大の武器となっている。
「初めて野球やる子に、野球を好きになってもらいたいなというのが一番の目的でやらせていただいています。今回の趣旨として、親子で触れるというのは、一緒に好きになってもらったほうが余計に興味を持っていただけると思うので、少しでも好きになってもらえるような声かけ、盛り上げていくことを心掛けていました。アカデミーでは幼稚園の頃から見ている子どもたちを、この5年で小学生まで見させてもらっているので、成長している姿が見られるのが、私にとってこの仕事の最大のやりがいだと思っています。1プレーでも試合でキャッチできた時にはすごくうれしくて、もうダッシュしてハイタッチして『ナイスキャッチ!』と心の底から褒めてしまうぐらい、自分のことのようにうれしいです。今はサッカーが人気になっているので、野球人口増加、一番は子どもたちに野球を好きになってもらうことが喜びなので、底辺拡大へ微力ながら野球界の普及・振興に尽力していきたいと思っています」
かつての指揮官に恩返し

ジャイアンツアカデミー・井納は投げることの基本を指導した[写真=BBM]
野球教室の最後は、ジャイアンツアカデミーの講師であるNPB通算51勝の
井納翔一氏(
DeNA-巨人)が投球のデモンストレーションを披露し、会場を盛り上げていた。
井納氏は2年目の14年から2年間、中畑評議員が監督として指揮したDeNAでプレーしている。この日は、かつての指揮官に対して「恩返しの場」となった。ジャイアンツアカデミーとして子どもたちを指導して4年目。温厚な人柄そのまま、すっかり板についている。
「選手時代はご迷惑ばかりをかけた選手の一人かなと思っていますけど、選手が終わってからも元気というか、僕がしっかりとやっている姿を見せられればいいなと思っていました。中畑さんが密かに喜んでもらえていればいいかなと思っています」
野球を通じて親子の絆を

ジャイアンツアカデミー・黒澤氏は幼稚園教諭、保育士資格を武器に子どもたちのやる気を引き出していた[写真=BBM]
閉会式で中畑評議員が参加者に対して呼びかけた。
「小学校低学年、未就学児を対象とし、親子も一緒に参加する野球教室はあまり例がなく、有意義な時間だったと思います。ジャイアンツアカデミーの講師陣の指導も的確で、明るく元気良く、イキイキと高いレベルで野球を理解してもらえたと思います。今日の野球教室をきっかけに、野球というスポーツを媒介にして、家庭でも親子で共通の話題を展開してほしいです。野球を通じてキャッチボール(会話)をしていただき、絆を深めてほしいと思います。スポーツは活気、元気を生み出すもの。野球にはルールがあり、人としての礼節をはじめ、挨拶の大切さを学ぶことができます」
参加した保護者の鈴木稜太さんは「さらに、野球に興味を抱く機会をいただき、ありがたかったです。親も楽しむことができました」と感想を語った。今年から野球を始めた小学校2年の璃乃さんは「打つことが、楽しかった」と笑顔を見せれば、来年から野球を始めるという幼稚園年長の央暉さんは「全部、楽しかった。早く帰って練習したい」と意欲的だった。最後は講師、参加者全員で「ありがとうございました!」。礼にはじまり、礼に終わった。「親子で体験! WCBFわくわく野球教室」は、野球普及に確かな足跡を残したのである。
取材・文=岡本朋祐