異次元のスピードと判断力

2点を追う慶大は5回表に追いつくと、二死二塁から丸田の右二塁打で逆転した[写真=矢野寿明]
開幕試合の「入り」は難しい。春の覇者・慶大は東大1回戦(9月12日)で4回を終えて0対2と劣勢だった。東大の左腕・松本慎之介(3年・国学院久我山高)に無安打に封じられていた。
慶大は5回表に反撃を開始。長打4本を集中して、逆転に成功した。二死二塁から決勝の右二塁打を放ったのは九番・中堅の丸田湊斗(3年・慶應義塾高)である。慶大は6、7回にも追加点を奪い、6対2で先勝した。
丸田は2023年夏の甲子園で、107年ぶり2度目の全国制覇を遂げた慶應義塾高の不動の一番・中堅だった。仙台育英高との決勝で放った決勝史上初の先頭打者本塁打は、今も記憶に新しい。慶大では1年春から出場機会に恵まれるも、レギュラー奪取は3年春。中堅の定位置を獲得し、初めて規定打席にも到達し、5季ぶり41度目のリーグ優勝に貢献した。打率.245は目立った数字ではないが、9四死球を選び、幾度も好走塁でゲームの流れを変えてきた。50メートル走5秒9。異次元のスピードは群を抜いており、なおかつ判断力に長けている。
「常に次の塁を狙う意識でいます。プラスアルファで警戒してくれれば、こちらとしてはありがたい。バッテリーに重圧をかけることで、打者にアシストできればいいと思っています」
1年生・小宅が鮮烈デビュー

慶大は1年生・小宅が神宮デビュー。8回から2イニングを打者6人、パーフェクトに封じ、試合を締めている[写真=矢野寿明]
この日の開幕戦はチームとして、大きな収穫があった。1年生右腕・
小宅雅己(慶應義塾高)が神宮デビュー。8回から三番手で救援すると、打者6人を完全に封じた(4奪三振)。慶大・堀井哲也監督は「落ち着いている。一つひとつのボールの質も良い。制球力、心の管理、いろいろなことがコントロールできる。すごいピッチャーだと思います」と舌を巻いた。
小宅は2023年夏の甲子園で、2年生エースとして頂点へ導いた。単位不足で2年時に留年し、この4月に慶大入学。公式戦登板は24年夏、神奈川大会5回戦(対桐蔭学園高)以来だった。昨年1年間は、高校、大学の施設で自主練習を重ねてきた。1年間のブランクを感じさせない投球に、中堅手・丸田は目を丸くした。
「ついに、世間にバレるときがきたか、と(苦笑)。レベルが違います。皆さん、小宅のすごさは知っているとは思いますが、よりパワーアップして戻ってきました。球速が上がり、ボールにもキレがある。チーム内で計測している(トラッキングの)数値が優れていますが、何よりも驚きは、捕手が構えたコースにボールが決まる。外野手としては、一歩目が動きやすいんです。3年前の甲子園以来、久々にこの感覚が、よみがえってきました」
真価が問われる秋

慶大は東大1回戦で先勝。左から主将・今津、左腕エース・渡辺、四番・中塚、丸田、小宅[写真=矢野寿明]
丸田は今春は一番だったが、東大1回戦は九番に入った。「やるべきことは変わらない。打順は気になりません」。レギュラー2シーズン目、丸田にとっても真価が問われる秋である。
「1個上の代への思い入れが強いんです。4年生とは、密に接してきましたので。この秋で先輩方は引退します。この代で、日本一を取りたい。良い形で4年生を送り出したいです」
背番号8を着ける3年生・丸田が、攻守でチームを活気づけていく。
取材・文=岡本朋祐