昨オフ、トレードで阪神へ

首位を走る阪神をあらゆる面から支えている伏見
首位の阪神がリーグ連覇に向け、正念場を迎えている。9月12日の
巨人戦(東京ドーム)で0対1と敗れて4連敗。猛追する2位の巨人が0.5ゲーム差に迫ってきた。
流れが巨人に傾いている中で、レギュラーシーズンの最終盤は経験豊かなベテランの存在がカギになる。この苦境を脱して再び上昇気流に乗り、逃げ切れるか。36歳と野手最年長の
伏見寅威に掛かる期待は大きい。
昨オフに
日本ハムから
島本浩也との交換トレードで移籍した時は大きな話題になった。北海道出身で地元球団の日本ハムにFA移籍した経緯があったが、「選手にとってトレードはすごくポジティブなものです。自分らしく明るく、元気にプレーしたいと思っている」、「関西は第二の故郷という言葉が当てはまるかもしれない。なにか引き寄せられている」と新たな挑戦を前向きに語っていた。
実際に移籍1年目とは思えないほどチームになじんでいる。今季は43試合出場で打率.209、0本塁打、12打点。この数字だけでは伏見の重要性を認識できない。得点圏打率.375とはねあがり、勝負強い打撃が光る。そして、巧みな配球術で投手の良さを引き出すのが真骨頂だ。今季13勝3敗、防御率1.94と大ブレークした
高橋遥人とバッテリーを組む機会が多く、覚醒を手助けしている。
2度目のFA権獲得
9月9日には、海外FA権の取得条件を満たした。
オリックスでリーグ連覇を飾った2022年オフに国内FA権を行使して日本ハムに移籍したが、今オフに2度目のFA権を行使した場合は複数球団による争奪戦は必至だろう。
常時出場とはいかずとも、捕手としての能力が非常に高い。オリックス時代から
山崎福也(現日本ハム)、
宮城大弥など左腕のリードに定評があり、日本ハム移籍後はエースの
伊藤大海に絶大な信頼を置かれ、
達孝太の一本立ちをサポートした。1人の正捕手を据えるのではなく、複数の捕手を使い分ける起用法が現代野球の主流になっている中で、推定年俸1億円で人的補償が必要ないCランクとみられる伏見は市場価値が高い。セパの両リーグで実力を発揮していることも、大きなプラスアルファだ。
第一線で長年プレーした秘訣
現役時代にFA権を2度行使した捕手で浮かぶのが、
相川亮二(現
DeNA監督)だ。横浜(現DeNA)で正捕手に定着し、
ヤクルト、巨人とFA移籍して23年間プレーした。日の丸を背負って国際大会の経験も豊富で、04年のアテネ五輪で銅メダルを獲得。WBCに2度出場し、第1回大会の優勝メンバーになっている。第一線で長年プレーした秘訣について、週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っていた。
「自己分析力ですかね。ほかの選手と比較してどうだとか、自分の立場とかを常に理解できていました。その分析能力は今でも自信を持っているもので、現役中は一軍に行くために、一軍で試合に出るために、などと分析し、それをうまく利用して成長できたことが、23年間の現役生活につながったのだと思います」
立ちはだかる大きな壁も、良きお手本になった。横浜の正捕手を長年務め、
中日で黄金時代の中心選手となり、NPB史上最多の通算3021試合出場した
谷繁元信だ。
「最終的に超えることができなかった大きな存在ですが、近くでプレーを見ることができ、ものすごくよく接してもいただきました。一軍で一緒にやれたのは谷繁さんが中日に移籍する02年までの3シーズンでしたが、その動きをずっと観察していました。リード面、技術を吸収させていただき、自分のキャッチャーとしてのスキルが上がったのは、間違いなく谷繁さんのおかげです。谷繁さんがいなければ、その後の僕はなかったかもしれません」
伏見もオリックス時代に
若月健矢と切磋琢磨し、日本ハムでは
田宮裕涼と違う色を出して投手陣を引っ張った。そして、阪神移籍後は
坂本誠志郎、
梅野隆太郎とともにチームを支えている。捕手はチームを勝利に導くことで、評価されるポジションだ。シーズンは残り19試合。白星を積み重ねるために全力を尽くす。
写真=BBM