あらゆる場面でマウンドへ

移籍2年目の今季もリリーフで奮闘している田中瑛
2位・
巨人は9月15日の
DeNA戦(横浜)で2対13と大敗を喫し、同一カード3連敗。シーズン終盤に大きな痛手だが、首位・
阪神も今季ワーストの7連敗を喫したため、0.5ゲーム差で追いかける状況が変わっていない。総力戦で勝利を目指す中、キーマンの一人が
田中瑛斗だ。
心身ともに疲労がピークに来ていることは間違いないが、マウンド上で気迫を前面に出して抑え続ける。9月5日の
広島戦(マツダ広島)で同点の9回に登板すると、最速151キロの
シュートを軸に1回無失点。キャリアハイを更新する37ホールドを記録した。14日のDeNA戦(横浜)では、同点の8回に登板して一死一、二塁のピンチを背負ったが、
蝦名達夫を二直、
牧秀悟を152キロのキロシュートで空振り三振に仕留めて雄叫びを上げた。
今季57試合登板で3勝3敗2セーブ38ホールド、防御率1.63。登板数、ホールド数はいずれもリーグトップの数字だ。昨年に最優秀中継ぎのタイトルを獲得した同学年の
大勢が右肘の張りで7月上旬から戦線離脱している中、あらゆる場面でマウンドに立ち続けている。
気持ちを整える難しさ
救援は先発と違ってどの場面で投げるか予測が立ちにくい。試合展開が目まぐるしく変化するため、ブルペンで何度も肩を作るケースがある。戦闘モードに入っても、登板機会が巡ってこなかったことがある。気持ちを整える難しさについて、週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っている。
「勝手に気持ちは入りますね。去年はマウンドへ上がるときに、気持ちが逆に高ぶり過ぎることが多かったので、なるべく自分を落ち着かせようとしていました。それが今年になって、去年の落ち着かせようという感覚が残り過ぎているのか、気持ちがハイになれないと自分の中で感じているので、気持ちのコントロールの難しさを感じています」
「自分で場面を判断して、自分の感覚で盛り上がったり、盛り上がらなかったりするんですよ。自分と戦っている部分でもありますし、自分に満足していないというのはそういうところにもあります。継続してずっと同じ気持ちで、何年もやっている選手のすごさというのを感じていますね」
後半戦もフル回転
24年オフに現役ドラフトで
日本ハムから移籍し、野球人生が変わった。多彩な変化球を投げていたが、
阿部慎之助前監督の助言で投球の軸にシュートを据えたことで右打者から面白いように内野ゴロを打ち取っていった。62試合登板で1勝3敗37ホールドポイント、防御率2.13と自己最高の成績をマーク。相手球団のマークが厳しくなった今年は、スイーパーに磨きをかけることで投球の幅が広がっている。開幕から23試合連続無失点を記録し、監督推薦で自身初の球宴に初出場。ファンを喜ばせるために、「全球予告シュート」を宣言した。
「東京ドームでの1戦目で、帽子のつばの裏に書いた『シュートいきます』を
レイエス(日本ハム)に見せました。振り向いたら大型ビジョンに顔を抜かれていたので、チャンスだと思って文字を見せたら盛り上がってもらえました。最初は手でバッターに合図するつもりだったんですけど、それだけでは伝わらないなと思って書くことにしたんですけど、字が下手なので、巨人の裏方さんに書いていただきました。でも対戦した3人のうち2人はレイエス、
ネビン(
西武)の外国人だったので、書いた意味なかった(笑)」
夢の舞台を楽しみ、後半戦もフル回転している。伝家の宝刀のシュートがフォーカスされるが、一番の武器は負けん気の強さだ。7月10日のDeNA戦(横浜)で1点リードの6回に登板して一死も取れず4安打5失点で救援失敗したが、翌11日の同戦に志願登板。
橋上秀樹監督代行は「今日、球場に来て、田中投手と顔を合わせたら、すぐに『どんな状況でも行かせてください!』と僕にいきなり言ってきた。あいさつもろくにせずに(笑)」と振り返っている。1点リードの8回に登板して1回無失点ときっちり抑え、指揮官は「ああいうところで投げる投手であれば、必ず強い精神力、反骨心は必要」と強心臓を称えていた。
レギュラーシーズンは残り12試合。今後も勝負を左右する重要な局面で登板が続くことが予想される。右腕を振り続けて逆転でリーグ優勝を飾った時、MVPの有力候補であることは間違いないだろう。
写真=BBM