同じ夜、もう一つの「確定」

チームを4年ぶりのCS進出に導いた西口監督
西武は9月17日の
日本ハム戦(エスコンF)に2対4で敗れながら、
ロッテの敗戦によってクライマックスシリーズ(CS)進出が確定。2022年以来となるAクラス入りを決めた。3年連続Bクラス(5、6、5位)に沈んでいたチームが、再び上位争いの舞台に戻ってきた。
同じ夜、もう一つの「確定」があった。
京セラドームでは
ソフトバンクが
オリックスを7対1で下し、3年連続24度目のパ・リーグ優勝を決めた。西武が4年ぶりのCS進出を決めた日に、ソフトバンクは3年連続のリーグ制覇。今季の両チームの現在地を、象徴的に示す一日となった。
西武にとって、3年連続Bクラスからの再建は始まったばかりだ。エースだった
今井達也がメジャーへ移籍し、開幕前から戦力面の不安を抱えていた。それでも
西口文也監督の下でチームを立て直し、交流戦では球団初の優勝。一時は首位に立ち、シーズン終盤まで優勝争いに絡んだ。
長谷川信哉、
滝澤夏央ら若手も台頭し、チームの形は確実に変わり始めている。
その成果の一つが、4年ぶりのCS進出だ。3年連続Bクラスに沈んでいたチームが、再び上位争いに加わった意味は大きい。

9月17日に3年連続リーグ優勝を決めたソフトバンク
一方で、リーグ優勝を争うには、まだ越えなければならない壁がある。その差を浮き彫りにしたのが、9月4日から福岡で行われた3連戦だった。逆転優勝への望みをつなぎたかった西武にとって、5ゲーム差で迎えた敵地での3連戦は今季最大の勝負どころだった。求められたのは3連勝。しかし結果は1勝2敗。初戦、2戦目と連敗し、3連敗こそ免れたものの、この大一番で力の差を見せつけられ、ホークスの優勝は事実上決まった。
この3連戦を振り返った2年目・
渡部聖弥は、ソフトバンクについて「打つべきところで打ってくるし、投手陣も安定してムダがない。チーム的な強さを感じました」と力の差を認めた。一方、自軍については「詰めがちょっと甘いのかなと。長いシーズンには波がありますけど、悪いときに最低限のことができるかできないかが、本当のチーム力だと感じさせられた」と話している。
「詰めの甘さ」とは、単に一つのプレーや試合の問題ではない。苦しい場面で流れを止める力、競った試合を勝ち切る力、ミスを最小限に抑える力。そうした細部の積み重ねが、長いシーズンでは勝敗を分ける。
相手に流れを渡さない戦い
9月18日時点で、西武は73勝56敗4分けの2位。84勝45敗3分けで優勝を決めたソフトバンクにはCSでのハンデが「2」となる、11ゲーム差をつけられている。直接対決は西武の11勝12敗だが、交流戦後は3勝9敗。シーズンが深まるほど、チーム力を上げてくるホークスとの差は明白だ。
ソフトバンクは今季も、打つべき場面で得点し、投手陣が崩れず、相手に流れを渡さない戦いを続けた。対して西武は、再建の成果を示しながらも、まだ発展途上にある。若手の成長やチームの立て直しは進んだが、シーズンを通して戦力を維持し、苦しい時期を乗り切る力には、まだ伸びしろが残る。
だからこそ、CS進出はゴールではない。
CSでは、上位チームとの真剣勝負を通じて、今季見えた課題を成長につなげる必要がある。四球や守備のミスを減らし、接戦を勝ち切る形をつくること。若手の成長を一時的な勢いで終わらせず、年間を通して得点力を維持すること。先発の安定感と救援陣の層を厚くし、故障者が出ても戦力を落とさないこと。王者との差を埋めるには、こうした課題に一つずつ向き合わなければならない。
4年ぶりのCS進出は、西武の再建が前進していることを示している。一方で、同じ日にソフトバンクが3連覇を決めたことで、その先にある目標も明確になった。西武が再びAクラスに戻るところまでは来た。次に目指すのは、2019年以来となるリーグ制覇。そして、その先にある2008年以来の日本シリーズ制覇だ。
CSに出るチームになることが再建ではない。常にリーグ優勝を争い、パ・リーグの頂点を再びつかめるチームへと成長すること。そこへ向かう最初の試練が、またここから始まる。
文=伊藤順一 写真=BBM