初のファーム落ちから復調

今年も先発としてチームの勝利のために腕を振っている森下
広島の
森下暢仁が9月14日、国内FA権を取得した。メジャー挑戦の思いを抱いていることから今オフにポスティングシステムを含めた去就が注目される。
能力の高さを考えると、期待値が高くなる。今季は21試合登板で6勝11敗、防御率3.55。1月にマツダスタジアムの室内で自主トレを公開した際に、「今年は本当に結果にこだわる。結果がすべての世界。結果が出なかったら終わっていくと思う」と危機感を口にしていた。だが、春先から安定した投球が持続できない。7月10日の
中日戦(バンテリン)に登板して5回6安打6失点で6敗目を喫すると、
新井貴浩監督がファームで再調整を決断した。故障以外のファーム降格はプロ7年目で初だった。
責任感の強い右腕は投球の修正点をチェックし、8月7日に一軍昇格すると安定した投球を続けている。打線の援護に恵まれず白星は伸びていないが、一軍再昇格後は7試合登板で防御率2.02。直球がキレを取り戻したことでカットボール、チェンジアップ、カーブを有効に使えている。
新人時代から高評価
ドラフト1位で入団し、7年の月日が経とうとしている。新人の2020年に10勝3敗、防御率1.91で新人王を受賞。当時野球評論家だった新井監督は週刊ベースボールのコラムで絶賛していた。
「初めて実際に投げている姿を見たのは、キャンプのときです。すぐに石原(
石原慶幸、当時広島捕手)に『このピッチャー、打線の援護があれば1年目から2ケタ(勝利)行くかもよ』と言ったのを覚えています。フタを開けて見れば、2ケタはもちろん、防御率も1点台で新人王に。もう『失礼しました!』『おみそれしました!』って感じです」
「特にシーズン最終盤、10月以降がすごかった。1年目で開幕から一軍でプレーしている選手の場合、多くは夏場あたりから疲れが出てきて、息切れしてしまいます。しかし、森下君は夏場以降、シーズンが佳境を迎えるにつれて目を見張る成績を残しました。10・11月は5試合に登板して4勝0敗、防御率0.24で、月間MVPも獲得。シーズン通じて投げる体力、馬力があるということを証明しました。大地(
大瀬良大地)やKJ(
クリス・ジョンソン)、祐輔(
野村祐輔)といった主力投手が軒並みケガや不調と厳しい状況の中で、しっかりとチームを支える姿は頼もしかったです。1年目で右も左も分からず、開幕から全力でいっていたと思います。にもかかわらず、息切れすることなく、あの数字ですから。並のピッチャーじゃないですね」
「球界を代表する投手に」
翌21年の東京五輪で侍ジャパンの金メダル獲得に貢献。22年はリーグ最多の178回2/3を投げて自身2度目の2ケタ勝利をマークしている。昨年は自身初の開幕投手を務め、22試合に先発してクオリティースタート(先発投手が6回以上投げて自責点3以内)を19度達成。シーズン最終盤に右肩の張りで離脱したが152回1/3を投げて、6勝14敗、リーグ7位の防御率2.48だった。
投球内容を見ると改善点が浮き彫りになる。相手エースと投げ合う機会が多い中で22試合中14度も先制を許し、6月から8月にかけて8戦8敗を喫した。好投しても打線の援護に恵まれない登板が目立ったが、「自分がゼロで抑えていれば勝ち星は増える。それができている投手が勝って、タイトル争いをしている」と責任を背負い込んだ。
森下は理想の投手について、「球界を代表できるような選手というふうには、ずっと思っています。そういう投手は、常に投げ続けていることが大事だと思いますし、影響力がある人だと思います。ずっとローテーションを守って投げて、勝つということ。そういう強い姿を見せ続けることだと思います。いい投球をして、次のピッチャーにつなげる気持ちでやっています」と週刊ベースボールのインタビューで語っていた。
大きく負け越して、チームも借金20で5位に低迷した現状に満足できない。巻き返しを誓った今季も借金20で最下位に低迷しているが、好投を続けることが来季以降につながる。
広島は森下、
床田寛樹、
坂倉将吾と3人の主力選手が国内FA権を取得した。チーム再建に不可欠な存在だけに球団サイドは慰留に全力を注ぐが、森下は野球人生の分岐点でどのような決断を下すか。
写真=BBM