恵まれた環境で鍛錬

帝京大・橘高は今春に初めて規定打席に到達した遅咲きである[写真=BBM]
9月26日
日体大9-2帝京大(日体大1勝)
首都大学秋季リーグ戦・第4週1日目。開幕4連敗と苦しんでいる帝京大。今季の初勝利を目指した日体大1回戦も厳しい展開となったが、リードを許すなか追撃のタイムリーを放ったのが橘高純平(4年・履正社高)だ。
橘高は履正社高出身。進路については「関西の大学からはいくつか声を掛けていただいたのですが、関東の大学でやってみたかったんです。でも、なかなか進学先が決まらなかった時に、帝京大の唐澤良一監督が学校まで来てくださって、それがきっかけで入部させていただくことになりました」と振り返る。
帝京大入学以降は、練習に明け暮れた。
「自分はセンスがないので練習をするしかなかったんです。そして、履正社高の頃は通いだったので他校にくらべたら練習量が少なかったと思うのですが、帝京大は環境が素晴らしくて、すごいウエイトルームに加えて、グラウンドにも寮にも室内練習場がありましたし、食事も手厚かったです」
1年時にはリーグ戦デビューを果たし、3年春は規定打席に届かなかったものの打率3割以上の打率をマーク。それでも不動の先発とはいかなかった。
「良い選手がどんどん入ってきたので、このままでは試合に出ることができないと感じていました」
橘高が試合に出場するために選んだ方法は、とにかく練習をすることだった。
「今日はバッティングをする日と決めたら、ずっとバットを振っていました。そして、日々、コンディションが変わるなかで一球一球すべての球を良い打球で打ち返すことを心掛けています。調子が落ちた時に、いかに打つのかが大事だと考えているので、そうやってミスショットが少なくなるように意識しています」
191センチ98キロの立派な体格だが「自分はホームランを狙うとバッティングが崩れてしまうので、どんな時もセンター前ヒットを狙っています。長打は最近、増えてきてはいるのですが、たまたま右中間や左中間に飛んだ時だけです」とアベレージヒッターを目指している。モチベーションになっているのは家族への思いだ。
「両親に大学に入れてもらっているので、試合に出るしかないと思っています」
唐澤監督も「橘高は努力のかたまり。練習への取り組みが素晴らしい」と話しており、下級生の手本になる存在だと認めている。
努力を重ね、今春は初めて規定打席に到達。武蔵大のアンダースロー・
川口翔大朗(4年・上尾高)のスローカーブを捉え、リーグ初本塁打も放った。
「奇跡みたいなものでたまたまなんです。ただ、1本は打って、ホームランボールを家族に渡すのが夢だったので、本当に良かった。そのボールは球場まで来られないので配信でいつも試合を観てくれているおばあちゃんに渡しました」
今季は代打からスタートしたが、前週の東海大2回戦で初先発すると、3安打を放った。
「試合前は良い打球が打てたところで練習をやめて、良いイメージのままゲームへ臨むようにしています」
起爆剤としての役割
この日の日体大1回戦も六番・指名打者で先発出場。5点を追う7回裏に一死二塁の場面で打席に入ると「前の打席はチャンスで打てなかったので、もう打つしかないと思っていました」とドラフト候補の左腕・西平晴人(4年・近大付高)の148キロの真っすぐを捉え、右中間へ適時二塁打を放った。
「出身は奈良県なんですが、実は両親が試合を観に来てくれていたので、目の前で一本打ててよかったです」
試合は日体大の小上防登生(1年・東海大菅生高)と川口龍吾(3年・健大高崎高)に3ランを浴び、2対9で初戦を落とした。4年生・橘高は「チームの雰囲気は悪くないのですが、結果が出ないと悪いところに目がいってしまって自分たちから悪いモードになっていってしまう。何かのきっかけで流れが一つ変われば、チームも勢いづくと思います。自分のバッティングがそのきっかけの一つになれればいいのですが、やるべきことをやって勝利につなげていきたいです」と、今後の活躍を誓った。
卒業後は社会人の強豪クラブチームで野球を続けることが決まっている。
「野球でお金を稼いで、両親に恩返しをすることが目標でした。クラブチームなので、野球でお金を稼いでいると言えるのかは分からないのですが、野球で就職先は決めることができたので良かったです」
これからもバットで感謝の気持ちを伝えていく。
取材・文=大平明