打って、走って、守って

勝負強い打撃、堅実な守備、走塁でチームに欠かせない存在となった松本
阪神が9月26日の
DeNA戦(横浜)で8対3と快勝し、優勝へのマジックナンバーを1つ減らして4に。2位の
巨人は残り5試合で2.5ゲーム差と逆転優勝が厳しい状況になったが、可能性がある限りあきらめるわけにはいかない。その中で、攻守の要として期待される選手が移籍1年目の
松本剛だ。
巨人にFA移籍してきた選手は数多くいるが、本来の力を発揮できなかったケースが珍しくない。松本剛にも移籍当初は活躍に懐疑的な見方があった。
日本ハム時代の2022年に打率.347で首位打者に輝いたがその後は成績が下降線となり、昨年は66試合出場で打率.188、0本塁打、7打点。外野陣は
万波中正、
水谷瞬、
五十幡亮汰、内外野を守る
野村佑希の台頭で存在感が薄くなっていた。
昨オフに国内FA権を行使し、復活を目指して巨人に移籍。3月は打率.250、4月は打率.212、5月は打率.258と打撃の状態が上がらずスタメンから外れることもあったが、交流戦で2位の打率.365と快音を響かせて上昇気流に乗る。6月は打率.356で、その後も勝負強い打撃が目立つ。126試合出場で打率.281、3本塁打、25打点で、得点圏打率.333をマーク。打つだけのプレースタイルではない。左翼、中堅を中心に外野の守備で再
三好守を見せ、リーグ4位タイの16盗塁。打って、走って、守って。チームに不可欠な存在となっている。
少年時代は巨人の大ファン
埼玉県川口市で生まれ育った少年時代は巨人の大ファンで、球界を代表する強打者として活躍していた
松井秀喜に憧れていた。
「多いときは年間20試合以上、東京ドームに足を運んで応援していました。学校にもジャイアンツのTシャツを着て、帽子をかぶって登校していた。ジャイアンツに入れるなんて夢にも思っていなかった」
巨人のユニフォームに袖を通すことに特別な思いを持っている。6月2日の
オリックス戦(東京ドーム)で、5回一死二塁で左中間に適時二塁打を放ち、初めて東京ドームのお立ち台に上がると、「ここに早く立ちたいと思っていた。東京ドームのヒーローっていいなと純粋に思った」と目を輝かせた。
対応能力の高さでも貢献
チーム事情に応じてさまざまな起用法に対応できる対応能力の高さも光る。復調した交流戦以降は今季ブレークした大卒2年目の
浦田俊輔と一、二番コンビで打線を引っ張っていたが、夏場に入ってから長打が増え始めると、
橋上秀樹監督代行は「松本選手の得点圏打率が高いのをどこかで生かしたいと思っていた。チャンスが六番に回ってくることが多いので、松本選手を六番で使いたい」とポイントゲッターの打順据えることが増えた。
「何番でも前後のつながりを意識して、『今日は六番だ』というよりも、『前後は誰かな』とかをイメージして打席に立っているので。打順どうこうより、つながりを意識していけたら」と特別な意識がないことを明かしていたが、首脳陣の期待にきっちり応えている。
「六番・左翼」で先発した8月22日の
広島戦(東京ドーム)では、4回二死一塁で左翼席へ先制の3号2ラン。この一打が決勝打となり、先発して好投していた
代木大和にプロ初勝利をプレゼントした。試合の主役になったが、「勇人(
坂本勇人)さんが粘って塁に出てくれたので、つなぐ意識の中で最高の結果になった」と、自身の打席の前に10球粘った末に四球で出塁した先輩に感謝の思いを口にした。
FA移籍1年目で合格点をつけられる働きを見せているが、チームを優勝に導けなければ喜びが半減してしまう。「僕も小さいころから熱烈なジャイアンツファンでしたし、ジャイアンツに入りたいという夢を持っていました。この年齢でその夢をかなえることができて、最近は成績を残せていないですけど、もう一花も二花も咲かせたいと思っていますし、ジャイアンツの一員として認めてもらえるように、日本一のためのピースになれるように、全力で戦っていきたいと思います」と週刊ベースボールのインタビューで語っていた。
レギュラーシーズン終了後もCSと戦いは続く。フォア・ザ・チームの精神を貫き、最後まで走り抜ける。
写真=BBM