自己最多12勝目をマーク

体調不良明けだったが9月29日のオリックス戦で好投した平良
西武は9月29日のオリックス戦(ベルーナ)に2対1で逆転勝ち。パ・リーグ2位確定マジックを1とし、残り2試合でCSファーストステージの本拠地開催権獲得に王手をかけた。
その立役者となったのが、この日の先発・
平良海馬だった。NPB感染症特例からの復帰登板となった平良は、7回95球を投げて4安打1失点。自己最多となる12勝目(5敗)を挙げ、チームの勝利に貢献した。さらに4回を投げ終えた時点で規定投球回に到達。防御率1.36でパ・リーグ最優秀防御率のタイトルも手中に収めた。今季から先発に再転向した右腕にとって、先発として初めて手にするタイトルとなる。
打線では
長谷川信哉が1点を追う2回、左中間へ12号2ランを放って逆転。育成出身選手としては
甲斐拓也、
松原聖弥に並ぶシーズン最多本塁打記録となる一発で、平良を援護した。
復帰戦を白星で飾った平良は「久々でしたし、何としても勝ちたかった。7回を投げ切ることができてよかったと思います。(この勝利は)大きいですし、チームが勝ったので本当にうれしい」と振り返った。防御率トップについては「規定投球回を投げられたので、先発としてイニングはしっかり投げられたのかなと思います。2位で、ここで試合ができるように、しっかりと準備していきたいと思います」と語った。
今永昇太のスタイルに類似
チームにとって大きな1勝となった一方で、今季の平良にとっても大きな節目となった。今オフのポスティング移籍が注目される平良の登板日には、今季も多くのMLBスカウトがネット裏から熱視線を送っていた。12月1日に失効するMLB労使協定の行方は不透明だが、戦力補強の最前線に立つスカウトたちにとって、やるべき仕事は変わらない。今オフの移籍市場が無事に開き、そこに平良がエントリーされれば、複数球団による争奪戦は必至と見られている。
MLB関係者の一人は「昨年までは彼をエリートクラスのクローザーとして見ていた。スターターに再転向してどうなるかと思っていたが、ストレートの平均球速も前回(2023〜24年)よりもアップしている。加えてスプリット、スライダー、カットボールなど多彩な変化球の精度も上がっている」と背番号61を高く評価している。
その上で、多くのスカウトが平良の「フラット軌道」と、打者がタイミングを合わせづらい「スライドステップ」に注目している。メジャーでは、多くの投手が高いリリースポイントから捕手が構えるベース板へ投げ下ろす軌道がスタンダードとなっている。フライボール革命以降、バレルゾーンを意識してアッパースイングをする打者が増えたことも、その背景にある。
それに対して、身長173センチの平良は体勢を沈み込ませ、低いリリースポイントからストレートを高めの空振りゾーンへ投げ込む。打者から見れば、低い軌道から高めへ浮き上がってくるように感じられる独特の球筋だ。MLB関係者は「低いリリースポイントから高めの空振りゾーンにライズしてくるようなストレートを投げ込む彼のスタイルは、カブスの
今永昇太の投球スタイルと類似している。今のメジャーで主流となっているスイング軌道では接点が作りづらいのではないか。その上で、低めに落ちる多彩な変化球を組み合わせることで、高低で勝負ができる」と分析する。
すべての投球でスライドステップ
さらに、もう一つの特徴として挙げるのがスライドステップだ。
「すべての投球をスライドステップ(クイックスロー)で投げてくるスタイルはユニーク。打者はタイミングを合わせづらいだろうし、ピッチクロックにもそのままのスタイルで対応できる」
平良は今季、先発として自身の投球スタイルを確立した。球速を落とすことなく長いイニングを投げ、多彩な変化球を操る。さらに、メジャーの打者が慣れているものとは異なる低いリリースポイントと独特の投球テンポも持ち合わせる。12勝、防御率1.36という数字だけでは見えてこない「独自性」こそが、MLBスカウトが平良に注目する理由の一つなのかもしれない。
西武にとっては、まず残り2試合で2位を確定させ、CSファーストステージを本拠地ベルーナで迎えることが目標になる。そして、その先には短期決戦が待っている。先発転向1年目で最優秀防御率を確実にした平良が、今度はポストシーズンでどんな投球を見せるのか。その先にある今オフのMLB移籍の行方とともに、最後まで注目を集めることになりそうだ。
文=伊藤順一 写真=矢野寿明